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2025年7月1日

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生活衛生業の事業承継で浮かぶ課題、後継者不在の企業が20.4%に上る現状

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生活衛生関係営業の事業承継に関するアンケート調査結果(日本公庫)

2025年6月、日本政策金融公庫が発表した特別調査によると、経営者の年齢が60歳以上の生活衛生関係の企業において、事業承継に対する意識や実態が浮き彫りになった。この調査は全国1,785の企業を対象に実施されたもので、飲食業や理美容業、クリーニング業など、地域社会の暮らしに密接に関わる業種が中心となっている。事業承継の意向があると回答した企業は全体の47.3%に達しており、これはおよそ半数がすでに事業の引き継ぎを具体的に考えていることを意味している。

さらに注目すべきは、この「意向あり」と答えた企業のうち、実際に後継者が決まっている企業が58.7%と過半数を超えている点である。加えて、「候補はいる」との回答も20.9%に及び、全体の8割近くの企業がなんらかの後継体制を見据えていることが明らかとなった。一方で、後継者や候補が「いない」と答えた企業も20.4%存在し、事業の継続に課題を抱えるケースも依然として少なくないことが分かる。

特に後継者が「決まっている」と答えた企業に対し、誰がその後継者であるかを尋ねたところ、78.6%が「子ども」であると答えており、家族経営による事業継続が依然として主流であることがうかがえる。これに続き、「親族」が7.9%、「役員・従業員」が9.1%、「第三者」が4.5%となっている。なかでも理容業では93.6%が子どもを後継者としており、家族内承継の比率が極めて高い業種であることが際立った。

また、事業承継の意向に関しては、企業の規模によって大きな違いが見られた。従業員が11人以上の企業では約73.0%が「意向あり」と回答したのに対し、2人以下の小規模事業者ではその割合が27.9%にとどまっている。規模の大きい企業ほど事業の継続を重視し、承継への準備が進んでいる傾向がうかがえる。採算状況別で見ても、黒字企業の65.7%が承継を希望しているのに対し、赤字企業では38.8%にとどまっており、財務状況が承継意識に大きく影響を与えている。

一方、事業承継に「意向なし」と答えた企業にその理由を聞いたところ、「後継者(候補)がいない」が58.9%と最も多く、次いで「自分の代でやめようと考えていた」が55.5%、「業績が悪い」が26.6%という結果になった。この背景には、高齢化の進行や地域経済の縮小といった構造的な問題もあると考えられる。また、「事業への思い入れが強く他人に任せたくない」「借入金が多い」「後継候補者の能力に不安がある」などの理由も挙げられ、経営者個人の事情が複雑に絡み合っていることが分かる。

特に注目すべきは、現時点で事業承継の意向がない、または考えていない企業のうち、第三者から「事業を引き継ぎたい」と打診された場合に「検討する」と回答した企業が24.3%も存在する点である。この結果は、後継者問題を抱える企業が、必ずしも完全に廃業を決めているわけではなく、外部からのアプローチ次第で事業の継続に前向きな姿勢を見せる可能性があることを示している。

こうした中、日本政策金融公庫が行っている「事業承継マッチング支援」も注目されている。この支援では、後継者のいない小規模事業者と創業希望者をつなぐサービスを提供しており、令和元年度から6年度までの累計では17,465件の登録があり、そのうち成約件数は331件にのぼっている。地域に根差した事業を継続する仕組みとして、事業承継の新たな選択肢を提供している。

今後の企業経営において、事業承継は避けて通れない課題である。特に高齢の経営者を多く抱える業界においては、採用戦略とも密接に関係してくるテーマであり、後継者の確保は企業の持続可能性に直結する。従業員の安定した雇用を守るためにも、企業として早期に承継計画を策定し、必要に応じて外部の支援を活用することが求められる。企業の未来をつなぐ一手として、今まさに、事業承継に関する意識の改革が問われていると言えるだろう。

⇒ 詳しくは日本政策金融公庫のWEBサイトへ

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