2025年7月16日
労務・人事ニュース
2029年に月収75万円まで対応へ、厚生年金の標準報酬月額上限が3年で10万円引き上げ
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介護職員/久大本線/筑後吉井駅/朝倉市/福岡県
最終更新: 2025年7月16日 06:34
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介護職員/福岡市城南区福岡市営地下鉄七隈線/茶山駅からバス:天神方面より12番乗車「田島」より徒歩約15分/福岡県
最終更新: 2025年7月16日 06:35
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「夜勤なし」/准看護師・正看護師/デイサービス/訪問看護/オンコールなし
最終更新: 2025年7月15日 23:04
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精神科訪問看護の正看護師/未経験OK/車通勤可/即日勤務可
最終更新: 2025年7月16日 09:34
厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて(厚労省)
令和7年6月13日、年金制度の安定性と公平性を高めるために国民年金法などの一部を改正する法律が成立し、その中で特に注目されるのが、厚生年金などにおける標準報酬月額の上限を段階的に引き上げる措置です。この変更は、企業で働く人々の報酬構造の実態や賃金の上昇傾向を踏まえ、より実情に即した年金制度の構築を目指すものです。現在の上限は65万円とされており、この水準を超える賃金を受け取る高所得者層にとっては、現状の制度では収入に見合った保険料を納める仕組みになっていません。結果として、将来的に受け取る年金額も、実際の収入に対しては十分に反映されていないという構造的な課題がありました。
そもそも標準報酬月額とは、厚生年金の保険料を計算する際に基準となる月額報酬を指します。実際の賃金を直接使うのではなく、報酬額を32の等級に区分し、それに基づいて保険料が算出されます。これは事務手続きの簡素化を図るとともに、全国一律の制度運営を可能とするための工夫です。通常は4月から6月にかけての3か月間の報酬の平均を基に算出され、年に一度見直される仕組みとなっています。
現行制度では、標準報酬月額の上限が65万円に設定されていますが、この金額は全被保険者の平均月額の約2倍にあたり、賃金格差の拡大を抑えるとともに、事業主が負担する保険料の上昇を抑制する役割も担っていました。しかし、近年の経済状況を見てみると、高所得者層の増加や報酬水準の上昇により、この上限では実情に対応しきれなくなってきており、制度全体の公平性や信頼性を維持する上でも見直しが求められていました。
今回の法改正では、標準報酬月額の上限を段階的に引き上げることが決まりました。具体的には、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、そして2029年9月には最終的に75万円にまで引き上げられる予定です。これにより、月収が75万円を超える人も、その実収入に応じた保険料を納めることとなり、その結果として将来的に受け取る年金額もより実態に即したものになります。
制度の試算によると、月収が75万円を超える方の場合、本人負担分の保険料は月額で9,100円増加しますが、社会保険料控除を適用すれば実質的な負担増は月約6,100円に抑えられます。これが10年間続いた場合、将来的に月額で約5,100円(課税後ベースで約4,300円)の年金が一生涯にわたって増額されることになります。このように見れば、保険料の増加は決して一方的な負担ではなく、将来への投資とも言える内容です。
また、この改正は高所得者だけでなく、制度全体の健全性にも貢献することになります。上限が引き上げられることで、これまで制度外にあった高額報酬部分に対しても保険料が納められるようになり、その分年金財政が強化されます。これにより、65万円以下の収入の方にとっても、制度全体の持続性が高まり、間接的に恩恵を受けることになるのです。さらに、企業にとっても、賃金水準に応じた年金制度を整備することで、従業員の将来設計を支援し、優秀な人材の確保にもつながるといった側面があります。
なお、保険料率そのものは現行の18.3%で据え置かれるため、制度改正に伴って一律の負担増が生じるわけではなく、実際の報酬に応じて段階的な変化となる点も配慮されています。このように、段階的な上限引き上げは急激な制度変更による混乱を避けつつ、着実に年金制度の現代化を図るための現実的な対応策となっています。
結果として、厚生年金における標準報酬月額の上限引き上げは、今後の日本の年金制度の安定性を支える重要な一歩となります。収入の高い人に対しても適正な保険料負担を求めることで、世代間の公平性を担保し、年金制度全体の信頼性を高めていく方向性が明確になったと言えるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ