2025年7月8日
労務・人事ニュース
労災損失日数が43.5日に増加、全産業平均の最新データで企業リスクを可視化
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介護職員/介護福祉士/グループホーム/日勤・夜勤両方
最終更新: 2025年7月8日 03:01
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介護職員/介護福祉士/有料老人ホーム/デイサービス/日勤のみ
最終更新: 2025年7月8日 03:01
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看護師/福岡県/他/朝倉郡筑前町/山隈駅
最終更新: 2025年7月8日 07:36
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看護師/福岡県/通谷駅/中間市
最終更新: 2025年7月8日 07:36
令和6年労働災害動向調査(事業所調査(事業所規模100人以上)及び総合工事業調査)の概況(厚労省)
令和6年に実施された事業所規模100人以上を対象とした労働災害に関する統計調査において、日本の労働環境における安全性の現状と課題が明らかになりました。この調査は、産業全体および総合工事業に関する労災発生率、強度率、死傷者1人あたりの平均労働損失日数など、多角的な視点から労働災害の実態を把握することを目的としています。企業にとっては、採用活動や人材確保の観点だけでなく、安全衛生体制の見直しにもつながる重要な資料となります。
全産業を通じた労働災害の度数率は2.10で、前年の2.14と比較するとわずかに改善が見られましたが、強度率は前年と同様の0.09にとどまっており、依然として深刻な事故も発生している現実が浮き彫りになっています。さらに注目すべきは、死傷者1人あたりの平均労働損失日数が43.5日に上昇しており、前年の40.0日から3.5日増加したことです。これにより、1件あたりの災害が企業活動に与える影響がより長期化していることが示唆されます。
一方で、無災害事業所の割合は53.1%に達し、前年の52.4%よりも微増となりました。これは事業所の半数以上が年間を通じて労災を発生させていないという前向きな指標ではありますが、裏を返せば約半数の事業所で何らかの災害が発生していることを意味しており、引き続き安全管理の強化が求められます。
産業別に見ると、製造業の度数率は1.30と前年からやや上昇し、強度率は0.06と改善が見られましたが、死傷者1人あたりの損失日数は47.4日と依然として高い水準にあります。運輸業および郵便業では度数率が3.55と依然として高く、死傷者あたりの労働損失日数は65.9日と前年から大きく増加しており、業務の性質上リスクが高いことがうかがえます。卸売業・小売業においては度数率2.60、損失日数21.1日と、比較的短期間の休業で済んでいる傾向がありますが、件数自体は少なくありません。医療・福祉分野においても度数率2.18と高く、24.2日の損失日数が報告されており、ヒューマンエラーや身体的負荷の大きい環境が背景にあると見られます。
さらに、事業所規模による比較では、規模が小さいほど労災発生率が高い傾向が明確に見られました。従業員100~299人の事業所では度数率が2.89、強度率が0.13と、1,000人以上の事業所の度数率0.59、強度率0.03と比較しても大幅に高い数値です。これは、小規模事業所においては安全管理体制の整備が不十分である可能性や、人的資源に限界があることが影響していると考えられます。
総合工事業におけるデータでは、度数率が1.91、強度率が0.57、そして死傷者1人あたりの労働損失日数が296.6日という衝撃的な数値が記録されました。これは前年と比べて損失日数が122.4日も増加しており、事故の重大性が増していることを如実に物語っています。特に土木工事業では、度数率2.02、強度率1.19、損失日数590.3日と、他業種を圧倒する高水準となっており、事故発生の頻度と重篤度の両面で課題が山積している状況です。建築事業でも度数率1.88、強度率0.39、損失日数207.0日と、依然として深刻な状況が続いています。
さらに、請負金額別の分類では、10億円以上の大型工事では損失日数が454.3日に上り、重大災害のリスクが高いことが確認されました。中小規模工事であっても、500万円未満の案件において平均労働損失日数が60.1日となっており、金額の多寡にかかわらず、現場での安全配慮が不可欠であることが明らかです。
これらの結果は、企業にとって単に事故のリスクを示す指標にとどまらず、採用活動にも影響を及ぼします。特に若年層や保護者の間では、就職先の安全性や職場環境が選択の重要な要素とされており、安全対策が不十分な企業は人材確保の面で不利になりかねません。したがって、採用担当者にとっては、自社の労働災害発生率や事故防止への取り組み状況を客観的に把握し、それを積極的に発信する姿勢が求められます。
また、安全衛生管理の改善は、企業の経営にとっても直接的な影響を持ちます。事故が発生すれば、人的損失に加え、代替人員の確保や生産ラインの停止、労災保険料率の上昇など、コスト面でも多大な影響を及ぼします。特に損失日数の増加は、労働力の確保に苦慮する現代の労働市場においては深刻な経営課題といえます。
今回の統計調査は、過去の推移も含めて長期的な視点から分析されており、安全管理体制が徐々に進化してきた一方で、業種や事業規模、地域による偏りが依然として存在している現状が浮き彫りとなりました。これを機に、企業は業界団体や行政と連携しながら、職場全体の安全文化の醸成に取り組んでいく必要があります。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ