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2025年8月4日

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宿泊税で年間3.9億円の新財源確保へ、函館市が観光と人材市場を同時に活性化

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北海道函館市「宿泊税」の新設(総務省)

北海道函館市は、観光振興と地域経済の持続的成長を見据えた政策として、令和8年4月1日から宿泊税の導入を予定しています。この宿泊税は、法定外目的税として新たに制定されたものであり、令和7年3月14日に函館市議会で条例案が可決され、同年3月24日に総務大臣との協議を経て、7月22日付で正式に同意が得られたことから、制度の実施が確定的となりました。この取り組みは、単に税収を得ることが目的ではなく、地域の観光資源を最大限に活かし、観光産業の質の向上と持続可能な発展を図るための重要な施策と位置付けられています。

函館市内で宿泊税の課税対象となるのは、旅館業法に基づいて許可を受けた旅館やホテル、簡易宿所、また住宅宿泊事業法に基づく届出を行った住宅など、あらゆる形態の宿泊施設が含まれます。これにより、多様化する宿泊ニーズに対応しながらも、均一な税制度のもとで公平に税が課されることとなります。宿泊者が納税義務者となり、宿泊料金に応じて宿泊施設側が特別徴収方式で税を徴収するため、実際の運用面では施設側の協力体制が鍵を握ります。

宿泊税の課税率は宿泊料金に応じて4段階に分けられており、2万円未満の宿泊には1人1泊あたり100円、2万円以上5万円未満は200円、5万円以上10万円未満は500円、10万円以上の宿泊には2000円が課される仕組みです。このような多段階制を採用することで、高価格帯の宿泊施設利用者からはより多くの税収を得られ、価格に見合ったサービスやインフラの充実に活用できる構造となっています。

函館市では、この宿泊税によって年間約3.9億円の税収を見込んでおり、徴税コストは約4,250万円と算出されています。この税収は、観光資源の魅力向上や情報発信、旅行者の受け入れ環境整備など、観光振興に関するさまざまな施策のために充てられる予定です。観光案内施設の充実やバリアフリー対応、地域イベントの開催、交通インフラの整備、また地域の観光人材の育成といった分野において、具体的な施策が展開されることが期待されています。

また、教育的配慮として修学旅行の参加者や、認定こども園や保育所等の行事参加者および引率者については課税対象外とされており、公共性の高い活動に対する免除規定も明確に設けられています。これにより、教育・保育現場への負担を軽減し、地域住民や教育関係者の理解も得やすい制度設計がなされています。

今回の宿泊税導入は、観光都市として名高い函館市にとって、非常に重要な転機といえます。これまでも多くの観光客を引きつけてきた函館の魅力を、さらに国内外に向けて発信し、体験価値を高めていくためには、単なる観光資源の消費にとどまらない「持続可能な観光モデル」の構築が必要です。宿泊税という安定した財源が確保されることにより、民間企業や地域団体との連携を強化し、地域全体が一体となった観光施策が進展することが見込まれます。

企業の採用担当者にとって特筆すべきは、この新制度が地域の雇用や人材市場に与える具体的な影響です。観光産業が成長を続ければ、宿泊業や飲食業にとどまらず、通訳・案内業務、ITシステム管理、企画広報、人材育成といった分野にも新たな需要が発生します。特に高価格帯の宿泊者をターゲットとする施設では、サービス品質の維持向上のために高度なスキルを持つ人材が求められるようになることから、採用活動にも質の転換が迫られる場面が増えると考えられます。

また、観光を軸にした地域ブランディングの強化が進めば、地域外からの人材流入、いわゆるIターンやUターンを促進するきっかけにもなり得ます。観光産業の安定と発展により、「函館で働きたい」と考える人々が増えれば、地元企業の採用力も強化されるでしょう。観光と雇用をつなぐ視点から見ても、今回の宿泊税の導入は単なる制度改正以上のインパクトを持っているといえます。

制度導入にあたっては、現場でのオペレーションや説明責任も問われることになります。宿泊施設のフロントや予約システムにおける対応、また免除対象の確認作業、税の使途に関する宿泊者からの質問など、事業者側の負担が一定程度発生することも避けられません。そのため函館市としては、制度導入までの間に事業者向けのガイドラインの整備、説明会の開催、業務支援ツールの提供など、きめ細かなサポートが求められます。

さらに、制度を持続的に運用するためには、地域住民の理解と納得を得ることも極めて重要です。観光客への課税という形ではありますが、その収益が市民全体の生活環境の向上や地域活性化につながるという実感がなければ、制度の信頼性は損なわれてしまいます。実際に得られた税収の使途を透明性を持って公表し、具体的にどのような地域課題の解決に貢献したのかを分かりやすく示すことが、今後の制度運用の成否を大きく左右します。

施行から5年を目途に見直しが行われることがすでに明記されている点も、制度の柔軟性を担保するものとして評価されます。観光需要の変化、インバウンドの動向、経済情勢などを踏まえたうえで、課税対象や税率、使途などを時宜に応じて調整できる体制が整っていることは、事業者や市民にとっても安心材料となるでしょう。

観光は地域の魅力を伝える最前線であり、その価値を最大限に高めるためには、財政的な裏付けとともに、地域が一丸となった運営体制が必要です。函館市が今回打ち出した宿泊税の導入は、その意味でも観光を核とした地域づくりにおけるひとつのモデルケースとなる可能性を秘めています。観光と雇用、地域経済の好循環を実現するための第一歩として、今後の展開が全国的にも注目されることでしょう。

⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ

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