労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • 関税引き上げで34.9%の中小企業がマイナス影響、輸出比率25%超では59.6%が直撃

2025年8月10日

労務・人事ニュース

関税引き上げで34.9%の中小企業がマイナス影響、輸出比率25%超では59.6%が直撃

Sponsored by 求人ボックス

米国の関税引き上げによる中小企業への影響に関する調査結果(日本公庫)

2025年7月25日に日本政策金融公庫が発表した「全国中小企業動向調査・中小企業編(2025年4-6月期特別調査)」では、米国による関税引き上げが日本の中小企業に与えている影響について、具体的な数値とともにその実態が明らかにされた。今回の調査は、同公庫と取引のある13,936社の中から有効回答のあった4,846社を対象として実施されており、その結果は多くの事業者にとって示唆に富むものとなっている。

まず注目すべきは、米国の関税措置が中小企業にどのような影響を及ぼしているかという点である。調査によると、「マイナスの影響があった」と回答した企業は全体の34.9%にのぼり、「プラスの影響があった」と答えた企業はわずか0.6%にとどまっている。さらに、従業員数が多い企業ほどマイナスの影響を受ける傾向が顕著に見られ、100人以上の企業では38.7%がマイナスの影響を実感していたのに対し、従業員数49人以下の小規模企業では33.2%にとどまっている。

具体的な悪影響として最も多く挙げられたのは「仕入価格の上昇」で、全体の46.7%がこの問題を指摘している。これに続いて、「取引先の輸出量の減少」が41.8%、「サプライチェーンの混乱による調達難」が13.8%と続いており、価格上昇と物流の両面から影響が出ていることがわかる。業種別にみると、製造業では「取引先の輸出量の減少」が最も多く、59.7%がこの点を問題視している。一方で、非製造業では「仕入価格の上昇」が61.6%と最も多く、業態によって影響の出方が異なることも示された。

また、輸出比率による違いも明確に表れている。輸出比率が25%を超える企業では59.6%がマイナスの影響を受けており、輸出比率が25%以下の企業では48.1%、輸出を行っていない企業でも31.8%が影響を受けているという。特に輸出比率25%超の企業では、「取引先の輸出量の減少」と「自社の輸出量の減少」がともに51.0%と非常に高く、海外取引が主軸となっている企業ほどダイレクトな打撃を受けていることが分かる。

こうしたマイナスの影響に対して、企業がどのような対策を講じているのかについても調査が行われている。実施済みの対策としては、「経費(原材料・部品等を除く)の削減」が23.9%で最も多く、次いで「仕入れ価格上昇分の販売価格への転嫁」が21.1%、「国内での販売強化」が13.1%と続く。ただし、「特に対策を行っていない」と答えた企業も45.8%に達しており、影響を受けているにもかかわらず具体的な対応策を講じていない事業者が半数近く存在していることも浮き彫りになっている。

さらに今後の対応方針として、企業が予定している対策を尋ねた結果、「仕入れ価格上昇分の販売価格への転嫁」が28.25%と最も多く、「経費削減」が28.18%とほぼ同等の割合で続いた。続いて「国内での販売強化」(15.6%)、「調達品目の見直し」(14.8%)、「新事業・新分野への進出」(14.6%)と続いており、今後の事業運営に向けて多様な対策を模索している様子がうかがえる。

なお、対策を「予定していない」とする企業も33.5%存在しており、現状を注視する姿勢の事業者も少なくない。この結果は、経営資源に制限のある中小企業にとって、状況の変化に即応した対策の実施が難しい現実を反映しているとも言えるだろう。

地域別の状況をみると、特に東海地方では「マイナスの影響」が43.5%と全国平均を大きく上回っている。製造業が集積するこの地域では、特に自動車や機械関連の部品製造業者が多く、米国市場との取引が活発なことから、関税引き上げの影響を受けやすい構造となっている。一方、北海道や九州などでは相対的に「どちらともいえない」という回答が多く、地域によって関税の影響の受け方に濃淡があることも確認できる。

特に注目すべき点は、対策として「米国以外の海外での販売強化」(4.9%)や「生産拠点の見直し」(1.3%)といったグローバルな再編を意識した回答も一定数存在していることである。グローバルサプライチェーンの再構築を迫られる中で、一部の企業は市場や生産体制の見直しに乗り出している。とはいえ、それらの割合はまだ小さく、多くの企業は国内での工夫や耐性強化によって現状を乗り越えようとしている状況にある。

今回の調査結果は、日本の中小企業が外部環境の変化に直面した際の実情を示すものであり、今後の政策形成や支援策の設計においても重要な指標となる。特に関税という政治的要因が直接的な経済影響を与える中で、民間企業の柔軟性や適応力が今後ますます問われてくるだろう。輸出比率の高い企業がとりわけ深刻な影響を受けていることを踏まえると、今後は貿易の多角化やリスク分散の戦略的な検討が急務といえる。

政府や金融機関には、こうした企業の実情を踏まえたきめ細やかな支援体制の構築が求められると同時に、企業側も新たな市場開拓や業態転換といった中長期的な視野での経営戦略の再構築が必要である。2025年のこの局面においては、単なる経費削減や価格転嫁といった短期的な対応にとどまらず、構造的な強化を目指す取り組みが、企業の持続的成長を左右する鍵となるだろう。

⇒ 詳しくは日本政策金融公庫のWEBサイトへ

パコラ通販ライフ
それ以外はこちら