2025年8月14日
労務・人事ニュース
2024年の日本の再輸出品比率は8.3%に上昇、企業の国際取引構造に変化
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最終更新: 2025年10月11日 10:06
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令和7年度経済財政白書 第3章 変化するグローバル経済と我が国企業部門の課題 第1節 我が国のグローバル経済との関わりにおける変化と課題(内閣府)
この記事の概要
令和7年度の年次経済財政報告では、日本経済が直面するグローバル経済の変化と企業部門の課題について詳しく分析されています。特に、貿易収支の赤字傾向やサービス収支の慢性的な赤字、第一次所得収支が経常収支の黒字を支える構造への変化が取り上げられ、今後の日本企業の競争力強化に向けた視座が示されています。
経済のグローバル化は長い歴史を持ち、19世紀の輸送技術の進展とともに本格化しました。自由貿易を基盤とする国際協調の仕組みは、第二次世界大戦後の反省を受けてGATT体制として整備され、その後WTOへと発展しました。しかし近年では、国家主義や保護主義の動きが再燃し、国際協調の形骸化が懸念されています。特に米国で2025年に発足した第二次トランプ政権による広範な関税措置が、日本経済にとっても深刻な影響を及ぼす可能性が指摘されています。
本報告書では、まず日本の経常収支の構造的変化が詳細に論じられています。1996年以降の統計に基づくと、日本の経常収支は長年にわたり黒字を維持しているものの、その構成は大きく変化しました。かつては輸出超過による貿易収支の黒字が経常収支を牽引していましたが、企業の海外移転が進んだことにより、貿易収支は均衡状態へと移行しました。一方で、海外への直接投資による配当収益などが増加し、第一次所得収支の黒字が拡大しています。現在の日本の経常収支の黒字は、こうした投資収益に大きく依存しています。
また、サービス収支は長期的に赤字基調で推移しており、特にデジタル関連サービスの輸入が赤字の主因となっています。通信・コンピュータ・情報サービス、著作権使用料、クラウドサービス利用料などがその代表です。2024年には、これらのデジタル関連サービスがサービス輸入の約3割を占めており、構造的な支払超過が続いています。インバウンドの回復などにより旅行収支が黒字化したとはいえ、全体としてサービス収支の改善には至っていません。
さらに貿易収支の観点では、輸送機械や一般機械分野においては日本はなお競争力を維持している一方で、電気機器分野では国際競争力を喪失しつつあることが指摘されています。1980年代には世界の財輸出に占める日本のシェアは約10%に達していましたが、現在では3%台にまで低下しており、韓国とほぼ同水準です。これは中国や韓国など新興国の競争力向上とともに、日本企業の比較優位が相対的に失われた結果といえます。
また、RSCA指数(顕示対称比較優位)を用いた分析では、日本は輸送用機器や一般機械の分野で依然として高い競争力を持つ一方、家電や情報通信機器、医薬品などの最終製品では比較劣位にあることが示されています。特に電気機械の最終財については、比較優位の指標であるRSCA指数がゼロ近傍となっており、これは競争力の喪失を如実に表しています。
エネルギー分野でも課題が山積しています。2023年時点で日本のエネルギー自給率はわずか15.3%であり、輸入に大きく依存する体制となっています。資源価格の変動は日本の貿易収支を大きく左右し、特に鉱物性燃料の価格が高騰する局面では赤字が拡大する傾向が続いています。再生可能エネルギーや原子力の活用により、エネルギー自給率を高めていく必要性が強く認識されています。
地域別にみると、対中国貿易では電気機器分野を中心に赤字が拡大し、対中東では資源輸入による赤字が続いています。欧州やASEAN諸国との取引においても、かつての黒字構造から赤字へと転化しています。特に欧州については、医薬品や食料品などの輸入超過が顕著で、貿易収支は2010年代以降赤字に転じました。
このような構造的変化を踏まえ、日本企業は従来の輸出依存型モデルから脱却し、国内での生産基盤の強化や、付加価値の高い分野への集中が求められています。特に半導体など、経済安全保障上重要な分野については、国内生産を強化し、輸入依存を減らす体制づくりが急務です。現時点では、自動車や関連部品、半導体製造装置などで比較優位を保っているものの、これを維持するには不断の技術革新と人的投資が不可欠です。
さらに、再輸出品の増加も重要なポイントです。2024年には、再輸出品が日本の全輸出額の8.3%を占めるまでに増加しており、これは単なる返戻貨物ではなく、国際的な物流や情報ハブとしての日本の機能が高まっていることを示しています。しかし一方で、再輸出は国内の付加価値を高めるものではないため、これを持続的な成長の源泉とすることは困難です。
今後の経済政策においては、グローバルバリューチェーンの変化や国際的な関税制度の動向を踏まえ、日本企業の競争力を多面的に支援する戦略が求められます。その一環として、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の積極的な締結・活用が重要です。特に中小企業にとっては、海外市場へのアクセス拡大が成長の鍵を握っており、こうした制度面での支援が不可欠です。
持続可能な経済成長を実現するためには、単に外需に依存するのではなく、内需の拡大と両輪で経済を支える必要があります。そのためには、企業による人材投資やイノベーション、環境分野への取り組みを強化し、競争力を根本から底上げしていくことが重要です。
この記事の要点
- 経常収支の黒字は第一次所得収支によって支えられている
- 貿易収支は均衡傾向にあり、電気機器分野の競争力低下が影響
- サービス収支は慢性的赤字、特にデジタル関連の輸入が多い
- エネルギー自給率は15.3%と低く、輸入依存の構造が続いている
- 輸送用機器と一般機械分野では比較優位を維持
- 半導体や医薬品などの分野では比較劣位が目立つ
- 再輸出品の割合が増加し、日本の貿易統計構造に影響
- 自由貿易協定や経済連携協定の活用が今後の鍵
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