2025年8月14日
労務・人事ニュース
33年ぶりの名目賃金上昇率3.0%を記録、中小企業にも広がる賃上げの波
-
医療機関での治験コーディネーターのお仕事/看護師/車通勤可/駅近/即日勤務可
最終更新: 2025年8月14日 09:34
-
注目の訪問看護業務大手法人の求人/車通勤可/即日勤務可
最終更新: 2025年8月14日 07:02
-
アイリスト/香春口三萩野駅/社員募集/8月14日更新
最終更新: 2025年8月14日 01:35
-
訪問看護業務/即日勤務可/シフト
最終更新: 2025年8月14日 09:34
令和7年度経済財政白書 第2章 賃金上昇の持続性と個人消費の回復に向けて 第2節 持続的な賃金上昇の実現に向けて(内閣府)
この記事の概要
2024年度、日本の賃金水準は33年ぶりの大幅上昇を記録しました。フルタイム・パートタイムを問わず、労働者の名目賃金は上昇し、特に賃金水準の低い層での伸びが顕著です。中小企業においても賃金の底上げが進む一方で、企業規模や産業、年齢によって賃上げのばらつきが見られます。市場メカニズムでは対応しきれない領域に対しては政策的な支援の必要性も浮き彫りになっています。
2024年度の日本経済において、賃金の上昇は過去30年間で最も力強い動きを見せました。特に名目賃金は前年比3.0%の上昇となり、1991年度以来の高水準となりました。この動きは、労使双方の賃上げに対する意識の高まりと、企業における人手不足の深刻化、さらには物価上昇への対応といった複数の要因が複合的に影響しています。パートタイム労働者の時給は4%以上の伸びを示しており、これも過去30年で最も高い水準です。
一方で、実質賃金の伸びは依然として抑制的であり、2024年度は前年比横ばいにとどまりました。これは物価上昇、特に食料品価格の高騰が継続しているためです。実質的な購買力の回復には、安定した2%の物価上昇を前提に、それを上回る名目賃金の持続的上昇が求められています。
賃金上昇の分布に目を向けると、下位層での伸びが際立っています。たとえば、フルタイム労働者の所定内給与では、2009年から2024年にかけて、下位10%の層で21%の増加がありました。これに対し、上位10%の層ではわずか8.1%の上昇にとどまっています。中央値でも約12%の上昇が確認されており、低賃金層ほど賃金が大きく伸びる傾向が続いています。結果として、賃金格差が徐々に縮小しているという構図が浮かび上がっています。
企業規模による違いも注目すべき点です。中小企業においても賃上げの動きは強まっており、従業員10~99人規模の企業では、2022年から2024年にかけて約7%の賃金上昇が見られました。とはいえ、2024年単年で見ると、大企業の方が中小企業を上回る賃金上昇率を記録しており、全体的な流れの中にあっても一部で二極化が進んでいる可能性があります。さらに、初任給においても格差が拡大しています。大学卒業者の新卒初任給に関しては、上位10%と下位10%の比率が2009年の1.29倍から2024年には1.41倍へと拡大し、その多くが2019年以降に生じています。
産業別に見ると、宿泊・飲食サービス業や医療・福祉分野では、依然として賃金水準が低く、しかも賃上げのスピードも緩やかです。こうした業種は人手不足が深刻にもかかわらず、賃金水準の上昇が追いついていないため、市場メカニズムだけでは対応しきれない現実が明らかになっています。建設業や情報通信業でも同様に、求人倍率は高い一方で、賃金の伸びは限定的です。
職種別に見ると、保安職業や建設・採掘業従事者において、求人倍率は非常に高い(6倍以上)にもかかわらず、賃金上昇率は全体平均を下回る状況です。このような現象は、労働市場における需給バランスが賃金に反映されにくい構造的な制約が存在していることを示唆しています。特に公共性の高い職種では、制度的な制限や契約構造の問題から、賃金上昇が抑制されやすくなっています。
2025年度に向けた見通しでは、賃上げを実施する企業の割合がさらに増加しており、日本商工会議所の調査によれば、5%以上の賃上げを行った企業は2024年度の24.7%から、2025年度には30.3%に増加しています。しかし、賃上げを行わない、もしくは賃下げを実施した企業も一定数存在し、その割合はわずかに増加しています。特に小規模企業ではその傾向が顕著で、付加価値の低さや価格転嫁の難しさ、生産性向上の遅れが影響しています。
このような背景を踏まえると、今後の持続的な賃金上昇には、価格転嫁の推進や省力化投資の促進、生産性の向上といった企業努力に加え、政策的な支援が不可欠です。例えば、医療・福祉分野では診療報酬や介護報酬の見直しが、建設業界では下請け構造の是正と価格転嫁の実効性確保が求められます。これにより、賃金と物価の好循環を社会全体に広げていくことが可能となります。
全体として、2024年度は日本経済における賃金構造の転換点とも言える年となりました。歴史的な賃上げ局面の中で、格差縮小の兆しが見え始めた一方、企業間や産業間でのばらつきが課題として残ります。今後は、こうしたばらつきを克服し、全体として持続的かつ包摂的な成長を実現するための政策と企業の連携が求められます。
この記事の要点
- 2024年度は名目賃金が前年比3.0%上昇し、33年ぶりの高水準となった
- 実質賃金は前年比横ばいで、物価上昇を上回る安定的な賃上げには至っていない
- 低賃金層ほど賃金上昇率が高く、格差縮小の傾向が見られる
- 中小企業でも賃上げが進む一方で、賃上げに二極化の兆しが出ている
- 産業や職種によっては人手不足でも賃金上昇が抑制されるケースがある
- 政策による賃上げ支援が重要であり、価格転嫁や生産性向上の取り組みが必要
- 初任給の格差も拡大傾向にあり、若年層の待遇格差が問題となっている
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ