2025年9月2日
労務・人事ニュース
令和7年2月 東京都は416,979円で全国比+28.8%、残業13.2時間(事業所規模30人以上 調査産業計)
- 訪問看護業務および付帯する業務/車通勤可/即日勤務可/土日祝休み
最終更新: 2025年9月2日 07:04
- 訪問看護師/即日勤務可
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- 正看護師/企業・学校・保育園/非常勤・夜勤あり/残業少なめ
最終更新: 2025年9月2日 03:18
- 訪問看護ステーションでの訪問看護師業務/即日勤務可/シフト
最終更新: 2025年9月2日 07:04
毎月勤労統計調査地方調査 令和7年2月分結果概要 事業所規模30人以上 調査産業計(厚労省)
この記事の概要
令和7年2月時点の「事業所規模30人以上・調査産業計」都道府県データを基に、常用労働者数、労働時間、給与水準を実務視点で精査した。全国の現金給与総額は323,728円、総実労働時間は135.6時間。都道府県間で給与は最大176,636円、残業時間は5.4時間の差が生じ、採用戦略に影響する実態が明らかになった。
令和7年2月の最新集計では、事業所規模30人以上の調査産業計における常用労働者数が3,102.36万人、総実労働時間が135.6時間、所定内労働時間が124.2時間、所定外労働時間が11.4時間、出勤日数が17.1日となった。現金給与総額は323,728円、うち毎月の基礎となる「きまって支給する給与」は313,462円、所定内給与は289,013円、特別給与は10,266円である。本稿はこの数値を全国の基準として、各都道府県の差異を丁寧に読み解き、企業の採用と人事施策に直結する示唆を整理する。
まず給与水準から見ると、東京都の現金給与総額は416,979円で全国値を93,251円上回り、比率で28.8%高い。続く神奈川県は326,536円、愛知県は326,791円で、首都圏・中京圏が高位に並ぶ。一方、沖縄県は240,343円、鳥取県は252,684円、奈良県は256,392円と低位に位置づけられる。都道府県間のレンジは最大で176,636円に達し、同一職種でも勤務地により給与期待値が大きく変わり得る現実を示す。都道府県平均の現金給与は286,034円、中央値は280,770円、標準偏差は27,458円で、分布としては東京の突出と地方の裾の広さが同居している。
労働時間の構成に目を移すと、総実労働時間は島根県が146.2時間で最長、山形県144.8時間、栃木県143.9時間が続く。最短は奈良県で128.0時間、兵庫県128.8時間、沖縄県129.1時間で、最長と最短の差は18.2時間に及ぶ。所定外労働、いわゆる残業時間でみると、愛知県が13.4時間で最多、東京都と岐阜県が13.2時間、岡山県が13.0時間、和歌山県が12.9時間と続く。最少は奈良県が8.0時間、宮崎県が8.5時間、沖縄県と高知県が8.7時間で、残業の都道府県差は5.4時間に収まる。出勤日数は島根県が18.6日で最多、青森県18.3日、新潟県18.2日が続き、最少は神奈川県の16.3日、兵庫県と東京都が16.7日で差は2.3日にとどまる。
特別給与、すなわち季節賞与や一時金にあたる項目は月次の中では比率が低いが、2月でも地域差が表れる。東京都は28,078円、千葉県は21,345円、三重県は13,157円、香川県は11,870円、京都府は8,921円。特別給与の総額に占める比率でみると千葉県が7.03%、東京都が6.73%と頭ひとつ抜け、冬季賞与の残余や一時金の運用が示唆される。一方、鳥取県は247円、佐賀県546円、秋田県691円とごく小さい値にとどまる。
採用市場に直結する観点として、母集団の大きさは看過できない。常用労働者数は東京都が6,212.0千人と圧倒的で、大阪府2,464.3千人、愛知県2,088.2千人、神奈川県1,909.6千人、埼玉県1,299.9千人が続く。小規模側では鳥取県104.6千人、高知県115.0千人、徳島県136.7千人、島根県137.2千人、山梨県159.2千人となっており、同一の採用難易度でも母集団規模の差は採用期間や媒体選定に影響する。
働き方の効率性という視点で注目すべきは、短時間かつ高賃金の地域群である。神奈川県は総実労働時間130.0時間と全国の135.6時間を5.6時間下回りながら、現金給与は326,536円で都道府県平均を上回る。所定内労働時間は118.1時間で全国124.2時間より6.1時間短く、出勤日数も16.3日と最少である。東京都も総実労働時間は137.2時間で全国並みだが、所定外労働が13.2時間と多い一方で現金給与は416,979円と突出する。大阪府は現金給与322,038円、愛知県は326,791円でいずれも高位水準にあるが、愛知県は残業が13.4時間と最多の部類に位置づけられる。これらは、高度な職種構成や産業集積に伴う報酬の厚さと、残業運用の違いが併存していることを示す。
逆に、長時間労働にもかかわらず賃金が都道府県平均を下回る地域は、採用ブランド上の工夫が必要になる。島根県は総実労働時間146.2時間で最長でありながら現金給与が269,986円、青森県は142.8時間で259,323円、岐阜県は143.6時間で280,770円、鹿児島県は142.3時間で278,310円、新潟県は141.6時間で277,639円と、いずれも平均の286,034円を下回る。こうした地域では、賃金以外の訴求、例えば教育投資、成長機会、柔軟な勤務設計、住宅・通勤支援、転居支援など非金銭的価値を明確に提示することが人材確保の鍵になる。
統計的な関係を確認すると、都道府県横断でみた残業時間と現金給与の相関係数は0.63と中程度の正の相関がある。残業が多い地域ほど月例の総額が高くなる傾向は確かだが、総実労働時間と現金給与の相関は0.01とほぼゼロで、単純に長く働けば給与が高まるとはいえない。出勤日数と現金給与は−0.43の負の相関で、日数が少ない地域に高給与が観測されるが、これは産業構成と職種ミックス、所定内の生産性差、そして特別給与の寄与など複合要因の反映と考えるのが妥当である。所定内労働時間と総実労働時間の相関は0.96、出勤日数との相関は0.92と極めて高く、就業設計の違いがそのまま月間労働時間に現れる構図が見て取れる。
採用戦略への含意として、まず賃金テーブルの地域差設定は避けられない。全国基準の323,728円を起点に、東京採用では+9万円台、神奈川・愛知・大阪では+3万円前後の許容幅を前提に提示レンジを設計すると、提示後の歩留まり向上が見込める。逆に、沖縄・鳥取・奈良など低位の地域で全国水準を提示する場合は、相対的に魅力が高まりスカウト反応率の改善が期待できる。次に、残業時間が多い地域での募集は、みなし残業の内包や時間外手当の透明化を求人票に明記することで不安を解消し、応募離脱を抑制できる。愛知や東京、岐阜、岡山といった残業が多いエリアでは、この情報の開示度合いが候補者の信頼感に直結する。
短時間・高給与の神奈川、短時間で高い特別給与比率の千葉などでは、ワークライフバランスと処遇の両立を前面に出すと訴求力が高い。東京での高給与募集は、所定外13.2時間という実態をふまえ、裁量労働やフレックス、在宅頻度などの運用とセットで語ると納得感が増す。母集団が小さい地域では、地場媒体の活用とリファラル比率の最大化が有効で、採用プロセスのスピードも優位性となる。鳥取、高知、徳島、島根、山梨といった小規模県では、選考リードタイムの短縮や一次面接の即日化、交通費支給など、候補者体験の最適化が成果に直結する。
本データを扱う上で重要な注意点として、全国値は各都道府県の単純平均や合計ではない。全国の数値は全国調査の結果であり、都道府県別の地方調査結果の平均や合計ではないことが本文で明示されている。地方調査は各都道府県が集計し公表したものであり、厚生労働当局が取りまとめて掲載している。したがって、東京の突出が全国平均を押し上げるといった単純な帰結ではなく、調査設計の違いを理解した上での読み取りが求められる。採用計画に反映する際は、ここで示したレンジと相関を基礎に、各社の職種構成・等級制度・残業運用・賞与方針を重ね合わせ、職種別・勤務地別の提示レンジと採用KPI(応募単価、面接化率、内定承諾率)の再設計を行うのが実務的だ。
最後に、定量の「差」を単なる地域格差として捉えるのではなく、ポジティブな採用ストーリーに転換することが肝要だ。残業が少ない奈良や沖縄では「短時間で成果を出す仕事設計」を、平均を上回る給与の東京・神奈川・愛知・大阪では「高度スキルに見合う評価と成長機会」を、特別給与比率の高い千葉や東京では「賞与評価の透明性」を、それぞれ前面に掲げる。数字に裏打ちされた納得感ある求人は、候補者の信頼を獲得し、採用の質とスピードの両立に寄与する。
この記事の要点
- 全国の現金給与総額は323,728円、総実労働時間は135.6時間、出勤日数は17.1日
- 東京都の現金給与は416,979円で全国比+93,251円、+28.8%
- 愛知の所定外労働は13.4時間で最多、奈良は8.0時間で最少
- 総実労働時間は島根146.2時間が最長、奈良128.0時間が最短で差は18.2時間
- 出勤日数は島根18.6日が最多、神奈川16.3日が最少で差は2.3日
- 特別給与比率は千葉7.03%、東京6.73%が高め
- 全国値は地方調査の平均や合計ではなく全国調査の結果である点に留意
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ