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2025年8月18日

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令和7年11月から埼玉県の最低賃金が1,141円に引き上げ、63円増

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埼玉県最低賃金の改正を答申~時間額を63円引上げ、1,141円に~(埼玉労働局)


この記事の概要

埼玉県では、令和7年11月1日から最低賃金が1時間あたり1,141円に引き上げられる予定です。これは現行の1,078円から63円の増額となり、過去5年間で最大の引き上げ幅です。


埼玉県における最低賃金の改正が、令和7年11月1日をもって実施される見通しとなりました。この改正により、最低賃金は現行の1,078円から1,141円へと63円引き上げられ、引き上げ率は5.84%に達します。今回の改正は、労働者の生活基盤をより安定させることを目的としており、特に物価高や社会的な経済状況の変化を背景とした見直しとなっています。

埼玉県の最低賃金改正は、埼玉地方最低賃金審議会が中心となって審議されました。この審議会は、埼玉県立大学名誉教授である福田素生氏が会長を務めており、労働局長からの諮問に基づき、専門部会を設けて議論が行われました。諮問は令和7年7月14日に行われ、その後、約1か月にわたって調査と審議を重ねた結果、8月8日に最終的な答申が取りまとめられました。答申は福田会長から埼玉労働局長である片淵仁文氏へ正式に提出され、その内容が公表されました。

答申では、引き上げ後の最低賃金額が1,141円とされており、これは令和3年度から続く毎年の引き上げの中でも特に大きな増額幅となっています。具体的には、令和3年度は28円、令和4年度は31円、令和5年度は41円、令和6年度は50円の引き上げが行われてきましたが、今回の63円という引き上げは、これまでの流れと比較しても顕著な水準であり、賃金水準の底上げを強く意識したものといえます。

最低賃金の改定にあたっては、地域の経済状況や物価動向、さらには生活保護水準との整合性が重視されます。実際に、令和5年度の埼玉県最低賃金である1,028円についても、生活保護基準額である112,485円(月額)と比較して、可処分所得の計算を通じて144,184円と試算され、生活保護を下回っていないとの判断が示されています。このように、最低賃金が社会保障とのバランスを取りながら設定されている点は、政策の信頼性を高める要素となっています。

また、最低賃金の適用対象は、埼玉県内のすべての事業場で使用される労働者であり、その使用者にも適用されます。ただし、最低賃金の中には精勤手当、通勤手当、家族手当などの特定の手当は含まれないことが明示されています。これは、実際に労働者が手にする基本的な賃金水準を明確にするためであり、労働条件の均衡を保つ上でも重要な要素です。

今回の改正に至るプロセスでは、公益委員、使用者委員、労働者委員からなる審議会が議決を行い、多数決により結論が導き出されました。公益委員と使用者委員が賛成し、労働者委員は反対するという構図でしたが、最終的には賛成多数による答申となりました。このように、多様な立場の関係者が関わる審議体制により、最低賃金の改正が公正かつ透明に進められていることがわかります。

答申の発表後は、異議申し出の受付期間を経て、正式な決定と官報による公示が行われます。公示日から30日を経過した日、または指定された日から新しい最低賃金が効力を持つこととなります。つまり、労働者や事業者にとっては、公示後の1か月間が準備期間となり、その間に賃金体制の見直しや契約条件の調整を行う必要があります。発効日である令和7年11月1日までには、すべての事業者が新しい賃金水準に対応する必要があるため、労務管理の見直しが急務となります。

埼玉県では、このような最低賃金の改定を通じて、地域経済の健全な発展と労働環境の向上を図ることを目的としています。賃金の引き上げは、労働者の生活の安定を支えるとともに、消費の拡大や地域内経済の活性化にも寄与する要素として期待されています。特に中小企業や個人事業主にとっては、賃金改定が経営に与える影響も大きいため、十分な準備と情報収集が求められます。

最低賃金制度は、労働者の基本的な生活水準を守るための重要な社会制度であり、労働市場における不当な低賃金の抑止力としての役割も担っています。今回のような引き上げは、単に数値の調整にとどまらず、労働政策全体の方向性を示すものでもあります。そのため、事業者にとっては単なるコスト増と捉えるのではなく、働きやすい職場づくりや従業員満足度の向上といった観点からも前向きに対応していくことが求められます。

労働行政や労働団体と連携し、正確な情報に基づいた対応を進めることは、経営の安定と持続的な成長のために不可欠です。特に、パートタイマーやアルバイトなどの非正規労働者を多く雇用している業種においては、最低賃金の改定が直ちにコスト構造に影響を与えるため、早期の体制整備が鍵を握ります。

最後に、埼玉県における今回の最低賃金改定は、地域社会の持続的な発展を支える政策の一環として、高く評価されています。労働者が安心して働ける環境を整備することで、企業と地域がともに成長する好循環の実現が期待されます。事業者にとっては、その一歩として今回の改正内容を正しく理解し、着実な対応を進めていくことが求められています。

この記事の要点

  • 令和7年11月1日から埼玉県の最低賃金が1,141円に改定される
  • 改定額は過去5年間で最大の63円、引き上げ率は5.84%
  • 生活保護水準と比較しても下回っていない水準
  • 改定は公益・使用者委員が賛成多数で決定された
  • 適用対象は県内すべての労働者と使用者
  • 特定の手当は最低賃金に含まれないことが明示
  • 企業には早期の労務体制の見直しが求められる

⇒ 詳しくは埼玉労働局のWEBサイトへ

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