2025年9月11日
労務・人事ニュース
宿泊業・飲食サービス業の入職率33.3%、離職率29.9%に見る令和6年の人材流動の実態
- 「残業ゼロ」/正看護師/整形外科/リハビリテーション科/内科/病院
最終更新: 2025年9月10日 23:04
- 「夜勤なし」/正看護師/有料老人ホーム/介護施設/オンコールなし
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- 「夜勤なし」/准看護師・正看護師/リハビリテーション科/内科/消化器内科/クリニック
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- 「駅チカ」/正看護師/整形外科/外科/クリニック/夜勤なし
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令和6年 雇用動向調査結果の概要 産業別の入職と離職(厚労省)
この記事の概要
令和6年の産業別にみる労働移動の状況では、「卸売業・小売業」や「宿泊業・飲食サービス業」、「医療・福祉」分野で入職・離職ともに特に多く、業界ごとに異なる動向が見られました。就業形態別の入職・離職率にも大きな差があり、特にパートタイム労働者の流動性が高い結果が明らかになっています。
令和6年における産業別の労働移動の状況を詳しく見ると、全体として労働者の出入りが活発な年であったことが明確に読み取れます。入職者数の総数は7473.7千人、離職者数は7195.3千人で、全体としては入職が離職を278.4千人上回る入職超過の年となりましたが、その内訳を産業別に分析することで、より詳細な動向が浮かび上がってきます。
最も多くの人が新たに働き始めたのは「卸売業・小売業」で、その入職者数は1383.6千人に達しました。この分野は消費者との接点が多く、常に人材の確保が求められる業界であることがうかがえます。しかし一方で、この業種の離職者数も1427.0千人と、他のどの産業よりも高く、採用と離職が非常に激しく入れ替わる、いわゆる「高回転型」の雇用状況であることが明らかになっています。
次いで入職者が多かったのは「宿泊業・飲食サービス業」で1211.0千人、離職者は1070.8千人とやや下回っており、入職超過の状態にあります。特にこの分野ではパートタイム労働者の入職率が非常に高く、33.3%にのぼるという数値が示されています。離職率も29.9%と高水準であるため、労働力の出入りが非常に激しい業界であるといえるでしょう。このことから、短期間での人材確保や入替えを前提とした柔軟な雇用管理が求められることになります。
「医療・福祉」の分野では、入職者数が1158.6千人、離職者数が1135.4千人と、両者の差はわずかですが、労働力の確保がほぼ横ばいである一方で、業界としての人材の安定化が進みつつある傾向が見られます。一般労働者の入職率は9.1%、離職率は8.8%と、他産業に比べて安定性が見られ、パートタイムでも26.1%の入職率に対して22.2%の離職率と、一定の雇用維持が行われている様子がうかがえます。高齢化社会において今後も需要が拡大するこの業界では、引き続き人材の確保と定着が重要な課題とされています。
業界別に入職率と離職率を詳しく比較すると、特に「宿泊業・飲食サービス業」での一般労働者の入職率は21.2%、離職率は18.1%と非常に高い水準にあります。同様に「サービス業(他に分類されないもの)」でも、一般労働者の入職率が19.4%、離職率が19.0%と高く、パートタイム労働者に至っては、入職率が27.6%、離職率が23.8%という結果が出ています。これらの業種に共通しているのは、業務の属人的な負担が大きく、時間や環境の制約が厳しいことに加え、報酬面での魅力が相対的に低いことが要因と考えられます。結果として、短期的な労働力として人材が出入りする構造が定着していると言えます。
一方で、比較的労働移動が少ない業界としては、「電気・ガス・熱供給・水道業」が挙げられ、入職率は8.8%、離職率も8.8%と完全に均衡しています。これはインフラ系の職種に共通する特徴であり、雇用の安定性が高く、従業員の定着率も良好であると推察されます。同様に「金融業・保険業」では入職率が12.5%、離職率が13.5%であり、やや離職が上回るものの、全体としては一定の安定性を維持している分野といえるでしょう。
また、業種によっては入職率と離職率の差がマイナスとなっている、すなわち離職超過が起きている業界も存在します。「鉱業、採石業、砂利採取業」では入職率6.9%、離職率9.1%と2.2ポイントの離職超過であり、パートタイム労働者に限ると入職率2.2%、離職率7.3%とさらに顕著です。このような業種では人材確保が難しく、業界全体としての持続性に課題があることが推察されます。「製造業」や「建設業」など、かつて日本経済を支えてきた基幹産業においても、入職率が離職率を下回る傾向が見られており、労働人口の減少や若年層の就職先としての人気低下などが影響していると考えられます。
こうした産業別のデータからは、採用において業種ごとの特性を深く理解し、適切な人材確保と維持管理の戦略を持つ必要があることが見えてきます。とりわけパートタイム労働者の流動性が高い業種では、定着率を高めるための施策、例えば労働条件の見直しや職場環境の改善、教育訓練の機会提供がより重要です。また、離職率が入職率を上回る業種では、離職理由の把握と早期対応が企業経営の成否を分けるポイントとなります。
全体を通して見ると、パートタイム労働者の流動性が極めて高く、特に「宿泊業・飲食サービス業」や「サービス業(他に分類されないもの)」においては、年間を通じて約3人に1人が新規に働き始め、同じく約3割が退職しているという実態が浮かび上がっています。企業の採用担当者にとっては、このような現場の実情を理解し、短期戦略だけでなく中長期的な人材育成やキャリア設計を見据えた雇用政策が重要になってきます。
この記事の要点
- 卸売業・小売業は入職者数1383.6千人、離職者数1427.0千人で高い人材流動を示す
- 宿泊業・飲食サービス業ではパート入職率33.3%、離職率29.9%と極めて高い流動性
- 医療・福祉分野は入職者数1158.6千人、離職者数1135.4千人で安定した雇用傾向
- 鉱業、製造業、建設業などでは離職率が入職率を上回り人材確保に課題がある
- サービス業(他に分類されないもの)はパートで入職率27.6%、離職率23.8%
- 全体の入職率は14.8%、離職率は14.2%で278.4千人の入職超過
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ