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2025年9月24日

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取り組み実施企業の39.8%がキャッシュレス導入、利便性向上がカギ

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中小企業の経営にインバウンドが与える影響に関する調査結果(日本公庫)


この記事の概要

日本政策金融公庫が2025年9月2日に公表した全国中小企業動向調査によると、インバウンド需要の回復が一部の中小企業にとって業況の改善要因となっていることが明らかになりました。特に、宿泊業や飲食業など観光関連の非製造業においてその影響が顕著であり、売り上げへの貢献や新たな取り組みの推進が進められています。


2025年6月に実施された日本政策金融公庫の特別調査によって、インバウンド需要の回復が中小企業にどのような影響を与えているのかが具体的な数値とともに示されました。調査は、全国の中小企業や小規模事業者を対象に行われ、回答率は小企業で57.6%、中小企業で37.3%と、十分な統計的信頼性を持つ結果といえます。

まず、小規模企業におけるインバウンドの影響について注目すべき点は、「プラスの影響が大きい」と回答した企業が全体の6.1%にとどまったことです。一方で「マイナスの影響が大きい」は1.9%、「プラスとマイナスの影響が同程度」が5.5%で、実に86.5%の企業が「影響はない」と回答しています。業種別に見ると、非製造業、特に飲食店・宿泊業で13.1%、運輸業で7.9%、小売業で6.5%と高く、観光と密接に関係する業態で影響が大きく出ていることがわかります。

地域別の傾向も興味深く、北海道では10.4%、東京・南関東では7.4%、近畿では7.3%が「プラスの影響が大きい」としています。こうした地域は訪日外国人観光客の主要な訪問先であり、インバウンド需要が企業の業績に直結しやすい環境であるといえるでしょう。

売り上げに占めるインバウンドの割合についての回答では、「0%」とした企業が79.0%で多数を占めましたが、「0%超5%未満」が16.4%、「5%以上25%未満」が3.7%、「25%以上」が0.9%と、約2割の企業が何らかの形でインバウンドによる売り上げを得ていることが分かります。飲食店・宿泊業では実に48.7%がインバウンドからの売り上げがあると回答しており、明確にその恩恵を受けている業種であることが数値から読み取れます。

中小企業(従業員20人以上)に目を向けると、より顕著な傾向が見られます。「プラスの影響が大きい」と回答した割合は12.8%に上り、小企業よりも倍以上の水準です。特に100人以上の企業においては20.2%がプラスの影響を認識しており、企業規模が大きいほどその恩恵を受けやすい構造があると見られます。これは販売チャネルの多様性や多言語対応など、受け入れ体制が整っている企業ほどインバウンド需要を効果的に取り込めることを示唆しています。

取り組みの状況については、小企業では「インバウンド需要獲得のために取り組んでいる」との回答は5.4%にとどまり、「今後実施予定がある」が5.8%、合わせて11.2%の企業が何らかの動きを見せていることが分かります。他方、「実施しておらず、予定もない」という企業が88.8%に上り、大多数が消極的な姿勢を保っています。

中小企業でも同様に「実施している」が8.0%、「今後実施予定」が6.1%、合わせて14.1%に留まっており、依然として8割以上の企業が取り組みに踏み切れていない状況です。これには資金や人材の不足、ノウハウの欠如といった理由が背景にあります。調査では「知識・ノウハウが不足している」が15.2%、「人材が不足している」が13.0%、「資金が不足している」が8.8%と続き、企業が抱える現実的な制約が明らかになりました。

実際の取り組み内容としては、「キャッシュレス決済の導入」が39.8%、「外国語のパンフレットやメニュー、施設案内の整備」が35.7%、「SNSやその他メディアを活用したプロモーション」が30.1%と、比較的低コストで即効性のある施策が多く実施されています。製造業ではSNSを活用した取り組みが中心となり、非製造業ではキャッシュレスや多言語対応の施策が多く採用されています。これは業種によってアプローチの違いが生じていることを表しており、観光客との接点の持ち方が異なる点に起因しています。

加えて、インバウンド向けの売り上げを伸ばしている企業の中には、地域の特性や外国人観光客のニーズを正確に把握し、それに合わせた商品開発やサービス提供を行っている事例も多く見られました。例えば、外国語対応のメニューを導入した飲食店や、抹茶を使った新メニューを開発した業者、SNSを通じて集客を図った宝飾品販売業者など、柔軟な対応が功を奏している様子がうかがえます。

しかしながら、すべての企業がこうした取り組みに踏み切れるわけではありません。調査では「そもそも取り組む必要性がない」と回答した企業が71.7%に達しており、事業内容や立地条件からインバウンド需要が見込めないという判断も少なくありません。また、実施を希望しても、外国人スタッフの雇用に関する手続きの難しさや、カード決済に伴う手数料負担、文化の違いによるクレーム対応など、実務面での課題も浮き彫りとなっています。

これらの調査結果を通じて明らかになるのは、インバウンド需要が業況を好転させる重要なファクターである一方で、それを活かしきるためには企業側の体制整備と外部支援の両方が不可欠であるという点です。特に、訪日外国人観光客が増加傾向にある今、観光地周辺だけでなく地方部の中小企業にとっても、新たな収益機会としてのインバウンド戦略が求められています。

行政や金融機関、観光関連団体が連携し、情報提供や補助金支援、人材育成といった包括的なサポートを行うことで、より多くの企業がインバウンド需要を取り込むことが可能になるでしょう。今後の地域経済活性化の鍵を握るのは、まさにこのインバウンド対応力にかかっているといっても過言ではありません。

この記事の要点

  • インバウンドの影響を実感する中小企業は12.8%、小企業では6.1%
  • 観光関連業種において影響が大きく、飲食・宿泊業で特に顕著
  • 売り上げに占めるインバウンド比率が高い企業は全体の2割程度
  • 取り組みを実施している企業は1割程度にとどまる
  • キャッシュレス導入や多言語対応が主要な施策
  • 対応を妨げる要因としてノウハウや人材、資金の不足が目立つ
  • 取り組みが困難な企業に対しては行政の支援が不可欠

⇒ 詳しくは日本政策金融公庫のWEBサイトへ

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