2025年9月22日
労務・人事ニュース
公的年金シミュレーター、2022年公開以来600万回以上の利用実績
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最終更新: 2025年9月21日 22:37
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令和7年版厚生労働白書 第2部 第4章 若者も高齢者も安心できる年金制度の確立(厚労省)
この記事の概要
本記事では、日本の公的年金制度の現状と将来展望、財政検証の結果、最近の制度改正や運用状況、さらには日本年金機構の業務運営や広報活動について詳しく解説します。特に令和6(2024)年の財政検証を踏まえた持続可能性の確保や被用者保険の適用拡大、年金積立金の運用実績など、最新のデータと政策動向を丁寧に説明し、企業の採用担当者が理解すべきポイントをわかりやすくまとめています。
日本の公的年金制度は、社会全体で将来のリスクに備えるための賦課方式を基本としており、現役世代の保険料負担によって高齢世代への給付を支えています。2023年度末時点で、第2号被保険者等(主にサラリーマンや公務員)が約4,672万人と全体の約69%を占めており、自営業者や学生などの第1号被保険者は1,387万人、第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者)は686万人となっています。近年、第2号被保険者数は54万人増加傾向にある一方、第1号及び第3号被保険者はそれぞれ18万人、36万人減少しており、これは被用者保険の適用拡大や加入促進策、高齢者の就労促進が影響しています。
公的年金の受給権者は約3,978万人であり、高齢者世帯の収入の約6割を年金が占めるなど、老後生活の基盤として重要な役割を果たしています。2004年の年金制度改革以降、基礎年金国庫負担割合の引上げや積立金活用により保険料の段階的引上げ幅を抑制しつつ、マクロ経済スライドという仕組みで給付水準を賃金・物価上昇の範囲内で自動調整することで、中長期的な持続可能性を図っています。2017年には国民年金と厚生年金の保険料率引上げが完了し、消費税率引上げ分も含めて財政フレームが完成しました。ただし、マクロ経済スライドの未調整分を翌年度以降に繰り越す見直しも行われています。
令和6(2024)年の財政検証では、複数の経済前提ケースを設定し、将来の所得代替率(現役世代の平均手取り収入に対する年金額の比率)の見通しを示しました。女性や高齢者の労働参加の進展、積立金の好調な運用により、2019年の検証時より給付水準が上昇し、ほとんどのケースで所得代替率50%の給付水準が維持可能と確認されました。若年世代ほど厚生年金の被保険者期間が延び、年金額の増加に寄与していることも明らかになりました。オプション試算では、被用者保険の更なる適用拡大やマクロ経済スライドの早期終了、標準報酬月額の上限見直しなどが給付水準確保に有効であることが示されています。
社会保障審議会年金部会では、令和2年年金改正法に基づく検討課題や令和6年財政検証の結果を踏まえ、女性や高齢者の就業拡大、最低賃金の上昇など社会経済の変化に対応した年金制度の機能強化を議論し、令和7年年金改正法案を提出しました。この改正案には、短時間労働者の被用者保険適用拡大に伴う企業規模要件撤廃、在職老齢年金の支給停止基準額引上げ、遺族年金の見直し、標準報酬月額の上限引上げなどが盛り込まれています。これにより、働き方や雇い方に中立的で公平な制度構築を目指しています。
2025年度の年金額改定は、前年の名目手取り賃金変動率2.3%を基に行われ、マクロ経済スライド調整▲0.4%を差し引いた結果、1.9%のプラス改定となりました。年金生活者支援給付金は低所得の高齢者や障害者を対象に月額5,450円(2025年度基準)を支給し、消費税率10%引上げの財源で賄われています。
年金積立金の管理・運用は、被保険者の利益を最優先に長期的視点で安全かつ効率的に行われています。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、長期的な実質運用利回り1.9%を目標に多様な資産へ分散投資を実施し、2023年度の収益率は+22.67%、運用資産額は約246兆円に達しました。自主運用開始以来の累積収益率は年率4.36%で、目標を上回る成果を挙げています。2024年度第3四半期までの速報値でも収益率+4.26%、資産額約259兆円と順調です。
企業年金・個人年金制度は、公的年金に上乗せして老後の所得確保を支援するもので、多様化するニーズに応じて確定拠出年金(DC)や確定給付企業年金(DB)の整備が進められています。令和3年度の税制改正により、DB加入者の企業型DC拠出限度額が月額5.5万円からDB掛金相当額控除後の額に見直され、2024年12月から施行されました。さらに令和7年度の税制改正大綱では、企業型DCやiDeCoの拠出限度額引上げ、iDeCo加入可能年齢の70歳未満への引上げなどが決定され、同年の年金改正法案に反映されています。
海外在留邦人の二重保険料負担防止のため、日本は23か国と社会保障協定を締結済みであり、他にも署名済みや交渉中の国があります。今後も経済界の要望や二国間関係を考慮しながら協定締結を推進していきます。
日本年金機構は厚生労働大臣の監督下で公的年金事業を運営し、2024年度から第4期中期目標に基づいて計画的に業務を遂行しています。国民年金や厚生年金の加入・徴収、給付、記録管理、相談業務を正確かつ確実に行い、サービス品質の向上に努めています。2023年度の国民年金納付率は改善傾向にあり、滞納者には強制徴収委任制度も活用しています。厚生年金の適用促進では、法人情報や雇用保険情報を活用し、効率的な加入指導や事業所調査を実施しています。
年金給付業務では、申請漏れ防止のため受給開始年齢直前に請求書を送付し、66歳から74歳の未請求者には毎年年金見込額のお知らせを発送しています。年金相談は予約制を導入し、待ち時間短縮や夜間・土曜開所など利用者の利便性向上に取り組んでいます。電子申請も推進され、2024年6月からは一定条件を満たす方の老齢年金請求書のマイナポータル申請が可能となり、2025年1月からは受給者の各種手続きの電子申請対象が拡大しています。スマホ決済アプリによる国民年金保険料納付も導入され、利便性が向上しています。
「ねんきんネット」は24時間いつでも自身の年金記録を確認できるオンラインサービスで、2025年3月末現在で約1,356万人が利用しています。2024年にはスマホ専用画面を新設し、持ち主不明記録検索機能の利用促進を図っています。また、「ねんきん定期便」は毎年誕生月に送付され、年金加入期間や見込額、納付状況などをわかりやすく通知し、本人による記録確認を促しています。
年金記録問題への対応としては、未統合記録の解明が進み、2025年3月時点で約3,419万件の記録が解明されました。訂正請求手続きも継続しており、2024年12月末までに約5万1千件の請求が受け付けられ、そのうち約4万件の記録が訂正されています。これにより年金記録の正確性向上に努めています。
年金広報活動では、小学生向けの年金教育漫画や若年層向けの動画制作、人気YouTuberとのコラボレーションによるクイズ動画など、多様な媒体を活用して若年層の関心を喚起しています。これらの取組みは国際的にも評価され、ISSAアジア・太平洋特別優秀賞を受賞しました。さらに、学生との対話集会を開催し、意見を行政に反映させる努力も続けています。公的年金シミュレーターは2022年公開以来600万回以上利用され、2024年には機能拡充とともにISSAのGood Practice Award Asia and the Pacific 2024特別優秀賞を受賞しました。社会保険適用拡大に関する広報も充実させ、専門家派遣や説明会を通じて中小企業の対応支援を行っています。
このように、日本の年金制度は持続可能性の確保と給付水準の維持を両立させるため、制度改革や運用改善、広報活動を総合的に推進しています。企業の採用担当者にとっては、被用者保険の適用拡大や年金制度の変化が従業員の福利厚生や労務管理に直接影響するため、最新の動向を把握し適切に対応することが重要です。
この記事の要点
- 令和6年財政検証で所得代替率50%の給付水準がほぼ維持可能と確認された
- 第2号被保険者は2023年度末で約4,672万人、増加傾向にある
- 令和7年年金改正法案で被用者保険の適用拡大や在職老齢年金の見直しが盛り込まれた
- 2025年度の年金額改定率は名目賃金変動率2.3%からマクロ経済スライド▲0.4%を差し引き1.9%増
- GPIFの2023年度運用収益率は+22.67%、運用資産額は約246兆円に達している
- 企業型DCやiDeCoの拠出限度額引上げなど私的年金制度の整備が進む
- 日本年金機構は電子申請やオンラインサービスの拡充で利便性向上に努めている
- 年金記録問題の解明が進み、2025年3月時点で約3,419万件の未統合記録が解明された
- 若年層向けの年金教育や広報活動が国際的に高く評価されている
- 社会保険適用拡大に関する広報や専門家支援で中小企業の対応を支援している
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ