2025年10月24日
労務・人事ニュース
令和7年8月佐賀県の有効求人倍率1.23倍、新規求人12.5%減少で採用戦略に影響
一般職業紹介状況 <令和7年8月分>(佐賀労働局)
この記事の概要
令和7年8月の佐賀県の有効求人倍率は1.23倍となり、前月比で0.04ポイント低下しました。新規求人倍率は1.72倍と大幅に下がり、新規求人数は前年同月比で12.5%減少しました。建設業や製造業、宿泊業では求人が増えたものの、卸売・小売業や医療・福祉分野では大幅な減少が見られました。地域差も顕著で、今後の採用活動には戦略的な対応が求められています。
佐賀労働局が令和7年10月3日に公表した8月分の一般職業紹介状況によれば、佐賀県の労働市場は全体としてやや落ち着きを見せつつも、業種や地域によって明暗が分かれる状況となっています。有効求人倍率(受理地別、季節調整値)は1.23倍で、前月から0.04ポイント低下しました。これは全国平均の1.20倍よりやや高い水準ですが、九州・沖縄全体の1.12倍を上回る結果となりました。一方で、新規求人倍率は1.72倍と前月比で0.25ポイントも下がり、全国平均の2.15倍を大きく下回っています。
求人と求職の動きをみると、有効求人数は17,576人で前年同月比3.4%減少しました。新規求人数は5,297人と前年同月比12.5%減少し、特に医療・福祉分野で19.9%減、卸売業・小売業で18.2%減、運輸業・郵便業では27.4%減と厳しい状況が続いています。これに対して、建設業は0.8%増、製造業は4.7%増、宿泊業・飲食サービス業は12.2%増と一部の産業で求人が伸びており、特に観光やサービス需要の回復が影響を与えているとみられます。
一方で、有効求職者数は14,801人で前年同月比2.6%増、新規求職者数も2,911人で前年同月比9.5%増加しました。これは労働市場において求職者が増えていることを意味し、採用担当者にとっては候補者の母集団が広がっている状況といえます。求職者が増加している背景には、非正規から正規雇用を希望する動きや、雇用環境の変化による転職ニーズの高まりが考えられます。
正社員有効求人倍率は1.12倍で、前年同月比で0.02ポイント低下しました。依然として正社員を希望する人材が多い中で、求人はやや減少しており、採用におけるミスマッチが懸念されます。企業が安定的に人材を確保するためには、単に求人を出すだけでなく、待遇改善や柔軟な働き方の導入、キャリア形成支援など、応募者にとって魅力的な条件を提示する必要があります。
地域別の動向を見ても差が大きく表れています。例えば唐津では新規求職者が前年同月比13.6%減少した一方で、鳥栖や鹿島では10%以上の増加が見られました。有効求人倍率も地域により差があり、伊万里では1.29倍から1.45倍へ上昇した一方、唐津では0.05ポイント低下するなど、採用環境は一様ではありません。企業にとっては、自社が位置する地域の雇用動向を的確に把握し、柔軟な採用戦略を展開することが欠かせません。
採用担当者の視点から考えると、今回の結果は複数の示唆を与えています。まず、有効求人倍率が全体として低下傾向にあることは、人材の獲得がやや容易になっていることを意味しますが、同時に新規求人が大幅に減少していることから、競合他社も採用活動を絞っていると考えられます。したがって、採用のチャンスを活かすためには、求人票の改善や企業の魅力発信を強化し、求職者に選ばれる工夫が必要です。また、業種ごとの求人動向を把握することで、自社の強みをどう打ち出すかが明確になります。医療・福祉分野のように求人が減っている業種では、求職者にとって働きやすい環境を整えることが不可欠ですし、宿泊業や飲食サービス業のように求人が増えている分野では人材獲得競争が激化するため、スピード感のある採用活動が重要となります。
さらに、求職者数の増加は採用活動における好機ともいえます。特に正社員希望者が多い状況を考えれば、企業にとっては中長期的に安定して働く人材を確保できるチャンスです。しかし一方で、待遇や労働条件が他社より見劣りすれば優秀な人材は流れてしまうため、競合との差別化が不可欠です。採用担当者は有効求人倍率という数字を単なる指標として見るのではなく、その背後にある労働市場の変化や求職者の動機を読み解く力が求められています。
今回の統計からは、佐賀県の労働市場が全国や九州・沖縄と比較しても独自の動きを示していることが浮かび上がりました。採用担当者はこの情報を活用し、業界動向と地域特性を組み合わせた戦略的な採用活動を進めることで、変化の激しい人材市場に対応していくことができるでしょう。
この記事の要点
- 令和7年8月の佐賀県有効求人倍率は1.23倍で前月比0.04ポイント低下
- 新規求人倍率は1.72倍で新規求人数は前年同月比12.5%減少
- 建設業や製造業、宿泊業では求人増加、卸売・小売業や医療・福祉は大幅減少
- 有効求職者数は14,801人で前年同月比2.6%増、新規求職者数も9.5%増加
- 正社員有効求人倍率は1.12倍で依然として正規雇用希望が強い状況
- 地域ごとに求人動向に差があり、採用活動には地域特性を踏まえた工夫が必要
⇒ 詳しくは佐賀労働局のWEBサイトへ


