2025年11月26日
労務・人事ニュース
令和7年9月 栃木県の有効求人倍率1.15倍 前月と同水準で推移
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「労働市場のようす(令和7年9月の求人・求職の取扱状況)」を発表します。(栃木労働局)
この記事の概要
令和7年9月、栃木労働局が発表した県内の雇用情勢によると、有効求人倍率(季節調整値)は1.15倍で、前月と同水準だった。全国平均の1.20倍を下回るものの、求人が求職を上回る状況が続いている。新規求人倍率は1.99倍で前月より0.07ポイント低下し、求人数の減少傾向が見られた。建設業や製造業で求人が減少した一方、運輸業や医療・福祉業では増加がみられた。この記事では、栃木県の雇用統計をもとに、中小企業の採用担当者が今後の採用戦略をどのように立てるべきかを、専門的かつわかりやすく解説する。
令和7年9月の栃木県の有効求人倍率(季節調整値)は1.15倍となり、前月から横ばいとなった。この水準は、求職者1人に対して1件以上の求人があることを示しており、依然として「売り手市場」が続いている。全国平均の1.20倍をわずかに下回るものの、全国順位は29位と中位を維持しており、県内雇用は全体として安定した推移を見せている。しかし栃木労働局は、「雇用情勢は持ち直しの動きに足踏みがみられる」としており、企業の採用意欲にやや慎重さが見られる現状が浮かび上がった。
有効求人数(原数値)は36,518人で前年同月より3.1%減少し、27か月連続の対前年マイナスとなった。一方、有効求職者数は31,911人で前年同月比2.0%減少している。有効求人数と有効求職者数の両方が減少していることから、求人市場が縮小傾向にあることがうかがえる。新規求人倍率(季節調整値)は1.99倍と前月より0.07ポイント下がり、新規求人数(原数値)は13,066人で前年同月比1.6%減と5か月連続の減少となった。
産業別の新規求人動向を見ると、建設業は前年同月比12.1%減で3か月連続の減少、製造業は13.2%減で2か月ぶりのマイナスとなった。物価高や資材価格の上昇、人件費負担の増加などが採用抑制の一因と考えられる。一方で、運輸業・郵便業は前年同月比21.4%増と大幅に増加し、物流需要の高まりが反映された形となった。卸売・小売業も前年同月比3.1%増で2か月連続の増加を記録し、消費活動の持ち直しが雇用を支えている。
宿泊業・飲食サービス業は前年同月比7.0%減で4か月連続の減少となり、観光需要の反動減や人手確保の難しさが影響している。生活関連サービス業・娯楽業は18.6%減と大幅な減少が続いており、娯楽施設や理美容サービス業などでは採用が鈍化している。これに対し、医療・福祉分野は前年同月比2.5%増と堅調に推移し、介護・看護職を中心に求人需要が続いている。サービス業(他に分類されないもの)も9.1%増で、再び増加傾向に転じた。
正社員有効求人倍率(季節調整値)は1.01倍と前月より0.01ポイント上昇した。正社員求人は着実に増加しており、県内企業が安定的な雇用を確保しようとする姿勢が見える。これは、非正規人材の流動化が進むなかで、定着率向上を目的とした正社員化の動きが強まっていることを示している。中小企業にとっては、人材確保が難しい環境の中で「職場定着率を高める採用戦略」が今後の重要な課題となる。
雇用保険受給資格決定件数は1,700件で前年同月より12.2%増加、受給者実人員も9.7%増の7,630人となった。これらの数値は、離職者の増加傾向を示しており、企業の経営環境がやや不安定化している可能性を示唆している。特に物価高とエネルギーコスト上昇による企業収益の圧迫が、人件費の抑制や雇用調整に影響を与えていると考えられる。
産業構造の変化も注目すべき要素である。製造業は減少傾向にあるが、業種によって明暗が分かれている。電子部品・デバイス製造業は前年同月比375%増、電気機械器具製造業は52.4%増、情報通信機械器具製造業は42.1%増と、先端技術関連分野での雇用が急増している。これに対して、食料品製造業や木材製造業など地域型産業では2〜3割の減少となり、従来型産業での人材確保が一層厳しくなっている。
中小企業の採用担当者にとって、このような有効求人倍率の変化は単なる統計データではなく、「人材確保競争の指標」としての意味を持つ。倍率が1倍を超えるということは、求職者1人に対して複数の企業が競合していることを意味する。つまり、企業は「選ばれる努力」をしなければ採用が成立しない時代に入っているということである。給与水準や福利厚生の改善はもちろん重要だが、それ以上に自社の価値や働く意義をどれだけ伝えられるかが採用成功の鍵になる。
例えば、栃木県内では宇都宮市や小山市を中心に製造業や物流関連の求人が集中しているが、地方部では依然として人材不足が深刻である。この地域格差を踏まえ、中小企業は勤務地や勤務時間の柔軟性を高めることで、採用対象を広げる工夫が求められる。近年では「地域限定正社員」や「週4日勤務制」など、多様な働き方を提示する企業が増えており、これらの工夫が応募増加に直結している事例も多い。
さらに、有効求人倍率1.15倍という数字は「採用市場が冷え込んでいない」ことも意味する。求人需要が依然として高い中で採用が難航する背景には、求職者の志向の変化がある。求職者は給与だけでなく、職場環境・成長機会・地域貢献などの非金銭的価値を重視する傾向を強めており、採用担当者はこうした心理的側面を踏まえた求人設計が必要だ。
栃木県では医療・福祉業や物流分野の求人が堅調であるため、これらの業界では積極的な採用広報が有効である。特に介護や医療の現場では、職場の安心感やチームワークを可視化することで応募意欲を高めることができる。また、製造業では技能継承を目的とした若年層の採用が急務であり、研修制度や資格取得支援などを打ち出すことで長期的な採用力を高めることができる。
中小企業の採用担当者は、有効求人倍率の動向を定期的に把握しながら、自社の採用活動が市場のどの位置にあるのかを分析することが重要である。求人倍率が横ばいでも、業種ごと・地域ごとに実態は異なるため、具体的なデータをもとにした「採用の地図づくり」が今後の成功の鍵を握る。
この記事の要点
- 令和7年9月の栃木県有効求人倍率は1.15倍 前月と同水準
- 正社員有効求人倍率は1.01倍でやや上昇
- 有効求人数は36,518人で前年同月比3.1%減少
- 新規求人倍率は1.99倍で前月より0.07ポイント低下
- 建設業・製造業は減少 運輸業・福祉業は増加
- 雇用保険受給者は前年より9.7%増加
- 中小企業は採用競争下で「選ばれる企業」への変革が求められる
⇒ 詳しくは栃木労働局のWEBサイトへ


