2025年11月25日
労務・人事ニュース
令和7年9月北海道の有効求人倍率0.92倍、採用市場の実態を読み解く
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道内の雇用失業情勢《概要版》(令和7年9月)(北海道労働局)
この記事の概要
令和7年9月、北海道労働局が発表した最新の雇用統計によると、道内の有効求人倍率(季節調整値)は0.92倍となり、前年同月から0.05ポイント低下した。2か月連続で前年を下回り、求人数の減少と求職者数の増加が同時に進んでいる。正社員の有効求人倍率は0.82倍で前年と同水準にとどまっており、求人市場の回復が一服していることが分かる。この記事では、北海道の最新データをもとに、中小企業が今後どのような採用戦略を取るべきかを、労働経済の専門的視点から詳しく分析する。
令和7年9月、厚生労働省北海道労働局が発表した雇用情勢によると、道内の有効求人倍率は0.92倍で前年同月比0.05ポイント低下した。求職者1人に対して求人が1件に満たない状態であり、全国平均の1.20倍を大きく下回る結果となった。北海道では長期的に1倍を下回る水準が続いており、全国の中でも求職者が多く、企業側が比較的採用しやすい「買い手市場」の傾向が続いている。しかし一方で、求める人材のスキルや働き方の多様化により、実際には採用の難しさを感じている中小企業も少なくない。
月間有効求人数は77,208人で、前年同月比3.3%減少し、3か月連続のマイナスとなった。新規求人数も26,618人で0.5%減と、こちらも3か月連続の減少である。対照的に、月間有効求職者数は83,993人で前年同月比1.6%増、新規求職申込件数は14,290件で4.1%増となり、求職者の動きが活発化していることが分かる。つまり、求人が減る中で仕事を探す人が増えているため、数字上は企業側が有利な環境にあるように見えるが、実際には職種や条件のミスマッチが拡大している状況だ。
新規求人数を産業別にみると、建設業、サービス業など4業種で増加した一方、製造業、運輸業、卸売業・小売業、宿泊・飲食サービス業など4業種で減少した。特に宿泊・飲食業では観光需要が回復しつつあるにもかかわらず、人件費の高騰やシフト調整の難しさから求人を控える企業が多い。また、製造業でも全国的な原材料高や為替変動の影響を受け、雇用の拡大には慎重な姿勢が見られる。
正社員の有効求人倍率は0.82倍で、前年と同水準だった。これは、正社員を希望する求職者が多い一方で、企業側が非正規や短時間雇用を中心に採用している傾向を反映している。特に中小企業では、正社員としての雇用を増やしたくても人件費負担が重く、採用を抑制しているケースもある。結果として、正社員希望者が就職に苦労する一方で、企業は非正規採用で慢性的な人材入れ替えに悩むという構造が続いている。
北海道の雇用環境には地域的な特徴もある。道央・札幌圏では求人倍率が比較的高く、0.97倍前後と全国平均に近いが、道東や道北では0.8倍を下回る地域も多い。こうした地域格差は、産業構造の違いによるものが大きい。札幌を中心とした都市部では、サービス業や情報通信業など多様な職種が集まる一方、地方部では農林水産業や建設業に依存しており、季節変動の影響を受けやすい。
また、ハローワークインターネットサービスの機能拡充により、来所せずオンライン上で求職登録や応募を行う人が増えている。特に若年層では、ハローワークよりもウェブ求人やSNSを通じた就職活動が主流になりつつあり、企業がこれに対応できているかどうかが採用成果を大きく左右する。北海道労働局によれば、令和3年以降、オンライン応募を通じた就職件数も増加傾向にあるという。つまり、企業の「デジタル採用力」が問われる時代に突入している。
雇用情勢の基調判断としては、「持ち直しの動きに弱さが見られる」とされている。背景には、物価上昇による企業経営への影響、エネルギーコストの増加、景気回復の足踏みなどが挙げられる。中小企業では採用活動そのものを抑制するケースもあり、一時的に求人を減らす動きが続いている。しかし、これは「雇用環境の悪化」ではなく、「採用の質を見直す時期」と捉えるべきだ。
採用担当者にとって、有効求人倍率0.92倍という数字は一見すると有利に思えるかもしれない。求職者が多い分だけ応募が集まりやすいと考える企業もあるだろう。しかし、注意すべきは「応募数」と「採用成功率」は必ずしも一致しないという点だ。特に、北海道では労働人口の高齢化が進み、55歳以上の求職者の割合が全国平均よりも高い。そのため、企業は年齢層に応じた働き方の多様化を進める必要がある。
中小企業が採用を成功させるためには、まず「求職者の目線」に立つことが求められる。たとえば、求人票の中で仕事内容が曖昧だったり、勤務条件が一般的すぎると、応募者はすぐに他社へ流れてしまう。最近の求職者は「働きやすさ」や「安定感」を重視する傾向が強く、給与だけでなく、職場の雰囲気、柔軟な働き方、スキルアップ支援など、非金銭的な要素を重視している。
また、北海道の広大な地理的特性を考えると、「通勤距離」や「勤務地の柔軟性」も重要なポイントになる。特に地方部では、通勤に時間がかかることが就業意欲の低下につながっている。企業側は在宅勤務やハイブリッド勤務を導入するなど、柔軟な労働環境を整えることが競争力につながる。
さらに、今後の採用戦略では「地域に根ざした雇用」の視点が不可欠だ。北海道はUターン・Iターン希望者が多く、特に30代〜40代の世代で地方移住のニーズが高まっている。こうした層に向けて「地域密着型企業としての魅力」を発信することが、安定した採用活動につながる。
結論として、有効求人倍率の低下は必ずしも悲観的な材料ではない。むしろ、採用市場が過熱期を抜け、企業が本当に必要な人材をじっくり選ぶ時期に入ったとも言える。中小企業にとっては、自社の強みを再確認し、求人情報を磨き上げる好機だ。特に、採用のスピードと柔軟性を高めることが、今後の採用成果を左右する。
この記事の要点
- 令和7年9月の北海道有効求人倍率は0.92倍で前年同月より0.05ポイント低下
- 3か月連続で求人数減少、新規求人数は26,618人で0.5%減
- 正社員有効求人倍率は0.82倍で前年と同水準
- 製造業・宿泊業・卸売業で求人減少、建設・サービス業で増加
- 求職者数は83,993人で1.6%増、求職活動が活発化
- 企業は求人内容の具体化とオンライン採用力の強化が必要
- 地域特性を踏まえた柔軟な働き方が採用成功の鍵
⇒ 詳しくは北海道労働局のWEBサイトへ


