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2025年12月3日

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下請法が「取適法」に名称変更、2026年1月施行で取引ルールを全面強化

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(令和7年11月7日)取適(トリテキ)法特設サイトを公開しました(公取委)

この記事の概要

公正取引委員会は、2025年11月7日に「取引適正化法(取適法)」に関する特設サイトを公開した。令和8年1月1日から施行される改正により、現行の「下請法」は「取適法」へと名称変更され、取引の透明性と中小事業者保護を強化する制度へと刷新される。価格交渉の公平性確保や支払条件の改善など、取引構造の適正化を図る改正内容がまとめられている。


公正取引委員会は、令和8年1月1日施行の法改正に先立ち、「取引適正化法(取適法)」に関する特設サイトを開設した。これにより、従来の「下請法」は新たな枠組みのもとで運用されることとなり、事業者間取引の透明性と公正性を一層高めることが目的とされている。今回の改正では、取引上の力関係を利用した不当な取引慣行を是正し、中小企業や受託事業者が正当な対価を得られる仕組みを確立することが主眼とされている。

改正の大きな柱は、価格交渉の適正化である。これまでの法制度では、買いたたき行為が禁止されていたものの、実際には価格協議が行われずに価格が据え置かれたり、説明が十分に行われないまま一方的に価格が決められるケースが多発していた。改正後は、中小受託事業者が価格協議を求めたにもかかわらず、委託事業者が協議に応じなかったり、必要な説明を怠ることを「一方的な価格決定」として明確に禁止する。これにより、形式的な交渉ではなく、実質的な価格対話が行われる取引環境を整えることを狙っている。

支払方法の見直しも重要な改正点である。これまで60日を超える手形払いを禁止していたが、改正後は手形払い自体を全面的に禁止した。さらに、電子記録債権やファクタリングなどの支払い手段においても、支払期日前に手数料を差し引かれて実質的に満額を受け取れない場合は禁止される。また、振込手数料を下請側に負担させることも新たに禁止され、資金繰りの悪化を防ぐ措置が講じられている。

適用基準の見直しも行われた。従来は資本金の大小によって対象を判断していたが、資本金を操作して適用を逃れる事例が問題視されていた。これを受けて、新たに「従業員数」を基準に追加し、製造委託の場合は300人、役務提供の場合は100人を基準とした。これにより、実際の事業規模を反映したより公平な法適用が可能となり、形式的な資本操作による抜け道を塞ぐことができるようになった。

さらに、取引対象の範囲も拡大された。物流業界では、発荷主から元請運送事業者への委託取引が法の適用外となっていたが、今回の改正で新たに対象取引に追加された。これにより、荷待ちや荷役作業の無償提供など、立場の弱い物流事業者が不当な扱いを受ける構造的な問題にも対応できるようになった。

執行体制についても強化が図られた。従来は、所管省庁に調査権限しか与えられていなかったが、改正後は指導や助言の権限が新たに付与される。また、「報復措置の禁止」に関する申告先として、公正取引委員会や中小企業庁長官に加え、事業を所管する省庁の主務大臣も明記され、事業者が安心して相談できる体制が整えられた。

一方、価格転嫁や取引振興を支援するための枠組みも整備された。多段階にわたる取引構造を持つサプライチェーンにおいては、複数の取引段階をまたいだ振興計画を支援対象とし、直接の取引先を超えた価格転嫁の推進や効率化の取組が可能となる。自動車部品の改良や生産時間の短縮など、連携によって業界全体の競争力を高める事例が支援の対象となる見込みである。

また、地方自治体にも新たな役割が求められる。改正法では、地方公共団体が中小事業者の取引振興に努めることを明記し、国との連携強化が義務づけられた。これにより、各地域に設置されている相談窓口を通じて事業者の声を吸い上げ、現場に即した支援策を展開することが期待されている。

さらに、主務大臣の権限も拡大された。価格転嫁が進まない事業者に対しては、従来の指導や助言に加え、より具体的な措置を促す「勧奨」が可能となる。これにより、改善が見られない事業者に対して、より実効的な対応を取ることができるようになる。

今回の法改正は、中小企業が正当な取引環境の中で事業を継続できるよう、法的・行政的な支援を包括的に整備したものと言える。AIの進展やサプライチェーンの多層化が進む中で、取引の適正化を徹底することは、公正な競争と持続可能な産業発展に欠かせない基盤となる。

この記事の要点

  • 2025年11月7日、取適法特設サイトを公開
  • 2026年1月1日に施行され、下請法が取適法に名称変更
  • 一方的な価格決定や協議拒否を明確に禁止
  • 手形払いを全面的に禁止し、振込手数料の転嫁も禁止
  • 資本金に加え従業員数を適用基準に追加
  • 物流委託取引を新たに適用対象に追加
  • 所管省庁に指導・助言権限を付与し、報復防止体制を強化

⇒ 詳しくは公正取引委員会のWEBサイトへ

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