2025年11月29日
労務・人事ニュース
令和7年9月 沖縄県の有効求人倍率1.11倍 求職者減少と求人意欲のせめぎ合い
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最終更新: 2025年11月28日 05:36
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「労働市場の動き」令和7(2025)年9月(沖縄労働局)
この記事の概要
令和7年9月に沖縄労働局が発表した雇用情勢によると、沖縄県の有効求人倍率(季節調整値)は1.11倍となり、前月から0.02ポイント上昇した。新規求人倍率も1.97倍で0.09ポイント上昇し、求人意欲の堅調さが見られる一方で、新規求人数自体はわずかに減少しており、企業側の採用姿勢に慎重さも見える。正社員有効求人倍率(原数値)は0.77倍で、前年同月比0.01ポイント上昇。全体として沖縄県の雇用情勢は緩やかに回復しているものの、物価上昇や人件費負担の影響により、業種間の温度差が大きくなっている。
令和7年9月、沖縄県の有効求人倍率(季節調整値)は1.11倍となり、前月より0.02ポイント上昇した。これは、求人の動きがやや持ち直しつつあることを示しており、全国平均(1.20倍)に比べると依然として低い水準ではあるものの、雇用環境に安定感が戻りつつある。月間有効求人数(季節調整値)は30,434人で前月比1.4%増、月間有効求職者数は27,311人で前月比0.6%減となった。求職者数が減少し、求人が増加していることから、求職者にとっては依然として売り手市場の傾向が続いている。
新規求人倍率(季節調整値)は1.97倍で、前月比0.09ポイント上昇。求人倍率としては高い水準を維持しており、求人に対して求職者が少ない状態が続く。新規求人数(季節調整値)は10,780人で、前月比0.3%減。新規求職申込件数は5,463件で前月比4.8%減となっており、求職者の動きがやや鈍化していることがわかる。正社員有効求人倍率(原数値)は0.77倍で、前年同月より0.01ポイント上昇した。前年からの変化は小さいものの、正社員求人の割合が全体の42.4%と前年より3.7ポイント上昇しており、安定した雇用を求める動きが強まっていることがうかがえる。
一方で、有効求人数(原数値)は29,561人で前年同月比5.4%減、23か月連続の減少となった。新規求人数(原数値)も10,157人で前年同月比1.3%減と5か月連続の減少である。このように、求人数の減少が続いている背景には、物価上昇やエネルギーコストの上昇により企業の採用コストが増大していることがある。特に中小企業では人件費上昇を吸収しにくく、採用活動を抑制する傾向が強まっている。
産業別にみると、生活関連サービス・娯楽業が前年同月比93.7%増と大きく伸びている一方で、情報通信業が23.1%減、医療・福祉が8.0%減となった。観光需要の回復やレジャー関連の動きが活発化する中で、ホテル・リゾート・娯楽施設などが積極的に求人を出していることが要因だ。これに対して、情報通信分野では人材の流動が全国的に激しく、沖縄県内での採用活動が難航していることが反映されている。医療・福祉分野の求人減少は慢性的な人手不足に加え、現場の過重負担や賃金水準への不安が求職者の動向に影響を与えていると考えられる。
正社員有効求人数は12,598人で前年同月比0.8%減、2か月連続の減少となったが、正社員新規求人数は4,306人で前年同月比7.9%増、2か月ぶりの増加となった。この動きは、非正規中心の雇用から安定雇用への転換が進んでいる兆しとも言える。実際、ハローワーク那覇を中心に、企業説明会や「正社員就職スタートアップセミナー」などの取り組みが強化されており、雇用の質を高める動きが県内全域で広がっている。
また、パートタイム求人は前年同月比10.5%減、新規パート求人も11.2%減と大幅に減少した。これは、観光関連の短期雇用が一巡したことや、生活コストの上昇によりパート勤務からフルタイム勤務を希望する層が増えていることも一因とみられる。
月間有効求職者数(原数値)は27,038人で前年同月比4.8%減と12か月連続で減少した。求職者の減少は、県内の労働人口減少と移住人口の伸び悩みが影響している。一方、新規求職申込件数は4,987件で前年同月比8.8%増、2か月ぶりの増加となっており、転職希望者が再び増えている傾向がみられる。特に若年層を中心に「より良い条件で働きたい」「スキルを活かしたい」といった前向きな転職が増えており、企業にとっては採用のチャンスでもある。
雇用保険受給資格決定件数は1,414件で前年同月比11.3%増。これは、短期雇用契約の終了などによる離職が一定数発生していることを示すが、常用雇用(雇用期間4か月以上)は7,356人で前年同月比13.6%増と増加しており、雇用の安定化も進んでいる。
地域別の有効求人倍率を見ると、那覇1.09倍、沖縄0.91倍、名護1.56倍、宮古1.86倍、八重山1.78倍で、地域差が大きい。特に離島地域の宮古・八重山では1.8倍前後と高水準を維持しており、観光関連業種を中心に人手不足が顕著だ。これに対して都市部の那覇や中部地域では、オフィスワークや専門職の求人が多く、求人倍率は落ち着いている。
このような環境の中で、中小企業の採用担当者が注視すべきは、「採用スピード」「雇用の魅力づくり」「人材定着」の3点である。まず採用スピードについては、求職者が複数の企業に同時に応募する傾向が強くなっているため、面接から内定までの流れを迅速化する必要がある。特にオンライン面接の導入やスケジュール調整の柔軟化など、応募者の負担を減らす工夫が求められる。
次に、雇用の魅力づくりである。沖縄県では生活コストが上昇傾向にある一方、賃金水準が全国平均を下回る傾向が続いている。給与以外の魅力として「働きやすさ」「キャリア形成」「地域とのつながり」を明確に打ち出すことが重要だ。沖縄労働局が展開する「人材開発促進キャンペーン」でも、リスキリング支援やジョブ・カードを活用したキャリア形成支援が推奨されており、企業が従業員の成長を支える仕組みを整えることが競争力につながる。
そして最後に、人材定着である。求人倍率が高止まりしている今、採用した人材を定着させることが企業成長の鍵となる。離職の主な要因は待遇よりも「人間関係」や「職場環境」にあるとされるため、コミュニケーションやチーム文化の醸成が欠かせない。沖縄労働局では、介護職や保育士など人手不足業種を対象に合同説明会や施設見学会を実施しており、現場の理解を深める取り組みが進んでいる。中小企業も同様に、求職者に仕事のリアルを伝え、共感を得る採用活動を意識すべきだ。
沖縄県の雇用市場は依然として「求人優位」の状態を維持しているが、人口構造や経済環境の変化により、これからは“数”より“質”を問われる時代に入る。中小企業にとっては、短期的な採用ではなく、地域に根ざした持続的な雇用の仕組みづくりが求められる。今後は、地元人材の育成、移住者の受け入れ、オンライン活用によるリモート人材の採用など、柔軟で多様なアプローチが成功の鍵を握るだろう。
この記事の要点
- 令和7年9月の沖縄県有効求人倍率は1.11倍で前月比0.02ポイント上昇
- 新規求人倍率は1.97倍と高水準を維持、求人意欲は堅調
- 有効求人数は29,561人で前年同月比5.4%減、23か月連続の減少
- 正社員有効求人倍率は0.77倍で前年同月比0.01ポイント上昇
- 生活関連サービス業が大幅増、情報通信・医療福祉分野は減少
- 求職者減少が続く中、採用スピードと雇用魅力の向上が鍵
⇒ 詳しくは沖縄労働局のWEBサイトへ


