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2025年11月28日

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令和7年9月 鹿児島県の有効求人倍率1.05倍 2か月ぶりの減少で採用市場に変化

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令和7年9月の雇用失業情勢について(鹿児島労働局)

この記事の概要

令和7年9月の鹿児島労働局発表によると、鹿児島県の有効求人倍率(季節調整値)は1.05倍となり、前月より0.02ポイント低下した。2か月ぶりの減少であり、求人が求職を上回ってはいるものの、雇用の勢いにやや陰りが見られる結果となった。新規求人数は11,489人で前年同月比6.0%減、11か月連続の減少となっており、企業の採用意欲に慎重さが広がっている。一方、有効求職者数は34,117人で0.1%増加しており、求職活動は一定の活発さを維持している。この記事では、鹿児島県の雇用情勢の変化を詳しく分析し、中小企業が今後どのような採用戦略を取るべきかを考察する。


令和7年9月の鹿児島県の有効求人倍率は1.05倍で、前月を0.02ポイント下回った。これは、求人が求職を上回る「売り手市場」である状況が続きながらも、求人側の減少によりやや調整が入った形となっている。全国平均は1.20倍であり、鹿児島県は全国で39番目、九州7県の中では7番目という順位である。九州内では、福岡・熊本・宮崎・長崎などが県内より高い水準を維持しており、鹿児島はやや落ち着いた雇用環境となっている。

有効求人数(季節調整値)は35,802人で、前月比2.1%減の2か月ぶりの減少となった。一方、有効求職者数(同)は34,117人で、前月比0.1%増加しており、求職者の動きはやや活発化している。就業地別の有効求人倍率は1.12倍で、前月より0.05ポイントの低下。受理地別よりも高い水準を維持していることから、求人の多くが鹿児島市などの都市部に集中していることがわかる。

新規求人倍率(季節調整値)は1.80倍で、前月から0.24ポイント低下し、2か月ぶりの減少となった。新規求人数(原数値)は11,489人で前年同月比6.0%減、11か月連続で前年同月を下回っている。産業別にみると、運輸業・郵便業が12.3%増、医療・福祉が0.1%増とわずかに増加した一方で、建設業が7.2%減、製造業が7.8%減、卸売業・小売業が15.9%減、宿泊業・飲食サービス業が33.2%減、サービス業(他に分類されないもの)が12.6%減と、幅広い業種で求人が減少した。

特に宿泊業・飲食業の求人減は顕著であり、33.2%の減少という数字は、観光需要の変動や人件費高騰、燃料・食材コストの上昇などが中小事業者の採用意欲に大きな影響を与えていることを示している。観光県である鹿児島にとって、この分野の採用動向は地域経済と直結するため、厳しい状況が続くことが懸念される。一方で、運輸業や郵便業など物流系の業種では、人材需要が根強く、コロナ禍以降の宅配需要の増加や電子商取引の拡大が背景にあると考えられる。

また、医療・福祉分野では微増ながらプラスに転じており、慢性的な人手不足に対して雇用を維持・拡大しようとする動きがみられる。鹿児島県では高齢化率が全国的にも高く、介護や医療現場の人材確保が地域課題となっている。そのため、医療・福祉業界では安定的な求人が続いているものの、求職者の希望条件とのミスマッチが生じており、採用の難しさは依然として残っている。

一方、新規求職申込件数は6,508件で前年同月比0.7%減。2か月ぶりに減少した。離職を経て再就職を希望する求職者は減少傾向にあり、在職しながら転職を模索する層が増えていることがうかがえる。実際、鹿児島県のハローワークデータによると、在職求職者は2か月連続で前年同月を上回った一方、離職求職者と無業求職者は減少している。これは労働市場の安定化を示す反面、人材の流動性が高まっていることも意味しており、企業側には早期の採用判断と柔軟な雇用条件の提示が求められる。

正社員有効求人倍率(原数値)は0.99倍で前年同月比0.02ポイント低下した。全国平均は1.02倍であり、鹿児島県はそれをやや下回る水準である。正社員有効求人数は19,361人で前月比4.2%減、有効求職者数は19,055人で2.4%減となっている。正社員求人が減少している要因としては、物価上昇に伴う企業の人件費負担の増加が挙げられる。特に中小企業では、採用後の賃金支払いに対するリスクを考慮し、正社員よりも契約社員やパートタイムなど柔軟な雇用形態を選択するケースが増えている。

地域別では、鹿児島市が1.09倍、指宿1.01倍、国分1.02倍、川内0.85倍、出水1.16倍、加世田1.26倍、大口0.85倍などとなっており、都市部と郊外の間で求人倍率に差が見られる。特に離島や南薩地域では求人が多くても応募が少ないという傾向があり、地域間格差が課題となっている。

このような状況を踏まえ、中小企業の採用担当者は、「採用戦略の転換」と「人材育成の強化」を意識すべき時期に来ている。有効求人倍率が下がっているとはいえ、依然として求職者より求人が多い状況に変わりはなく、採用難は続く。これまでのように単に求人を出すだけでは人材を確保することが難しく、求職者に「選ばれる企業」へと転換する努力が必要である。

まず重要なのは、採用活動のスピードである。求人倍率が高い状況では、求職者が複数の企業を同時に比較・応募することが一般的となっている。そのため、応募から内定までのプロセスをできるだけ短縮し、迅速に対応することが採用成功の鍵となる。面接の日程調整や結果通知をスムーズに行うだけでも、求職者からの印象は大きく変わる。

次に、待遇面以外の「働きやすさ」への訴求が求められる。鹿児島県のような地方では、生活コストが比較的低い反面、転職や移住を伴う求職者にとって職場環境や地域との関わり方が大きな判断材料となる。例えば、在宅勤務や時短勤務など柔軟な働き方を導入したり、地域社会とのつながりを重視した企業文化を発信したりすることで、求職者の共感を得やすくなる。

さらに、中小企業が取り組むべきは、若年層へのアプローチ強化である。鹿児島労働局の調査によると、令和8年3月に卒業予定の県内高校生の求人倍率は1.99倍で、前年同月より0.05ポイント低下したが、依然として高水準を維持している。就職内定率は58.5%と前年同月より6.1ポイント上昇しており、高卒人材の採用競争が激しさを増していることが分かる。地元企業にとっては、早期接触とインターンシップなどの実践的な採用活動が不可欠であり、学校やハローワークと連携した取り組みが成果を左右する。

採用担当者にとって、求人倍率の変動は単なる数値ではなく、市場の「人材流通の温度」を測る指標である。鹿児島県のように1倍前後で推移している地域では、今後、少子高齢化が進む中で求職者の絶対数が減少し、採用難が慢性化することが予想される。そのため、企業は一時的な採用活動ではなく、中長期的な人材戦略の構築に注力する必要がある。リスキリング(学び直し)や社内キャリア開発の仕組みを整備し、採用から定着までを一体化させることが、地方中小企業における持続的成長の鍵となる。

この記事の要点

  • 令和7年9月の鹿児島県の有効求人倍率は1.05倍で前月より0.02ポイント減少
  • 新規求人数は11,489人で前年同月比6.0%減、11か月連続減少
  • 宿泊業・飲食業、製造業、卸売・小売業など幅広い業種で求人減少
  • 運輸業・郵便業と医療・福祉分野では求人が増加
  • 正社員有効求人倍率は0.99倍で全国平均を下回る
  • 中小企業は採用スピードと柔軟な働き方の提示が鍵
  • 高校新卒求人倍率は1.99倍で若年層採用競争が続く

⇒ 詳しくは鹿児島労働局のWEBサイトへ

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