2025年11月28日
労務・人事ニュース
令和7年9月 宮崎県の有効求人倍率1.21倍 地方雇用の安定と課題を読む
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令和7年9月分 一般職業紹介状況(宮崎労働局)
この記事の概要
令和7年9月、宮崎労働局が発表した雇用情勢によると、宮崎県の有効求人倍率(季節調整値)は1.21倍となり、前月より0.01ポイント上昇した。これで123か月連続して1倍台を維持しており、求人が求職を上回る状況が続いている。一方、正社員有効求人倍率(原数値)は1.06倍と前年同月より0.06ポイント低下し、やや減速の兆しが見られる。この記事では、宮崎県の労働市場の実態をもとに、中小企業の採用担当者が現状をどう読み取り、採用戦略をどう展開すべきかを考察する。
令和7年9月の宮崎県の有効求人倍率(季節調整値)は1.21倍と、前月よりわずかに上昇した。この上昇幅は0.01ポイントにとどまるが、求人が求職を上回る状態が続いており、県内の雇用市場は引き続き堅調に推移していることが分かる。全国平均の有効求人倍率は1.20倍であり、宮崎県は全国水準とほぼ同等の数値を維持している。地域的に見ても、九州の中では福岡や鹿児島と並んで比較的高い水準にある。これにより、宮崎県は地方圏の中でも労働需要が安定している地域といえる。
有効求人数(季節調整値)は前月比0.9%増、有効求職者数は前月比0.1%増と、いずれも微増ではあるが、求職者よりも求人の伸びが上回ったことで倍率の上昇につながった。原数値で見ると、有効求人数は前年同月比6.2%減の26,295人となり、26か月連続の減少となった。長期的には求人そのものの減少が続いていることから、企業の採用活動がやや慎重になっている様子もうかがえる。一方、有効求職者数(原数値)は20,299人で前年同月比1.4%増。2か月連続で増加しており、求職者の動きがやや活発化している。
正社員有効求人倍率(原数値)は1.06倍で、前年同月より0.06ポイント低下した。正社員有効求人数は12,595人、常用フルタイム有効求職者数は11,923人で、前年同月に比べて求人が減少している。これは全国的に見られる傾向でもあり、物価上昇や人件費負担の増加が企業の採用余力に影響していると考えられる。正社員志向の求職者が増える一方、企業側が非正規雇用を活用してコストを抑えようとする動きも続いており、労使双方の思惑のずれが見られる状況だ。
新規求人数(原数値)は9,487人で、前年同月比2.0%減となった。前年同月に比べて190人減少しており、全体として企業の新規採用活動がやや落ち着いている。一方、新規求職者数(原数値)は4,222人で前年同月比0.2%増。求職活動そのものは堅調に推移している。なお、季節調整値では新規求人数が9,034人で前月比7.5%増、新規求職者数が4,233人で前月比6.2%減と、月ごとの動きでは求人が回復傾向にあることが示されている。つまり、全体のトレンドとしては求職者の数が減り、企業側の求人意欲がやや戻りつつあることがうかがえる。
産業別に見ると、18産業中6産業で新規求人が増加している。特に顕著な増加が見られたのは「公務・その他」(前年同月比1009.7%増)、「製造業」(同11.7%増)、「教育・学習支援業」(同11.0%増)、「複合サービス事業」(同103.6%増)などである。一方で、「医療・福祉」(同10.0%減)、「サービス業(他に分類されないもの)」(同10.4%減)、「宿泊業・飲食サービス業」(同25.3%減)などが減少している。これは全国的な傾向とも一致しており、医療・介護業界では人手不足が深刻化している一方で、求人そのものが減少しているという矛盾した現象が見られる。現場の負担増や待遇改善への対応が追いつかないことが背景にある。
また、宿泊・飲食業における求人減少は、観光需要の波や物価上昇によるコスト増が企業の採用抑制に影響している可能性がある。特に中小規模の飲食店や宿泊施設では、人件費の高騰と売上の不安定さが採用を難しくしており、長期雇用よりも短期・パートタイム中心の雇用形態が増えている。これに対して、製造業や教育関連では安定した需要が見られ、新しい技術や教育需要に対応した人材確保の動きが進んでいる。
地域別に見ると、宮崎市の有効求人倍率は1.25倍、延岡市1.21倍、日向市1.12倍、都城市1.12倍、小林市1.32倍、日南市1.11倍、高鍋町1.09倍と、地域間での差がやや広がっている。特に県西部の小林地域では1.32倍と高水準を維持しており、製造や建設業を中心とした雇用が活発であることが分かる。一方で、高鍋や日南地域では求職者が求人を上回る傾向も見られ、地域産業の偏りが人手不足を助長している。
このような状況下で、中小企業の採用担当者が注目すべきは「人材獲得の質」と「採用プロセスのスピード」である。宮崎県のように人口減少が進む地方圏では、求人倍率が高いということは求職者一人あたりの求人が多い、つまり求職者にとっては選択肢が多い状況であることを意味する。したがって、採用活動においては「どのように選ばれるか」が重要になる。求人票の内容をより具体的かつ魅力的にすること、オンライン上で企業情報を分かりやすく発信することが不可欠だ。
また、求職者の価値観が変化していることにも留意すべきである。特に若年層は給与や雇用形態だけでなく、職場環境や企業の理念、ワークライフバランスといった要素を重視する傾向が強い。中小企業が採用競争に勝つためには、「地域で働く意義」や「小さな企業ならではの温かみ」を訴求することが効果的だ。特に宮崎県では地域社会とのつながりを重視する傾向が強く、地域への貢献や持続可能な働き方を打ち出すことで、求職者の共感を得やすい。
さらに、ハローワークインターネットサービスの機能拡充によって、オンライン上で求職登録や応募が行われるケースが増えている。採用担当者はこの変化を踏まえ、デジタル対応を強化する必要がある。たとえば、オンライン面接の導入や、動画による会社紹介、SNSを通じた求人発信など、求職者との接点を増やす取り組みが効果的である。
一方で、企業が人材を採用するだけでなく、定着させるための取り組みも不可欠である。求人倍率が高い状態が続くと、転職が容易になり、離職率が上昇する傾向がある。中小企業にとっては、採用コストを抑えるためにも社員の定着を重視する必要がある。給与面での改善が難しい場合でも、柔軟な勤務制度やスキルアップ支援など、働きやすい環境づくりに投資することで、従業員の満足度を高めることができる。
宮崎県の労働市場は、全体としては安定しているが、業種間や地域間の格差が拡大している。中小企業の採用担当者は、求人倍率という数値だけでなく、背後にある地域経済の構造や求職者の行動変化を読み取ることが重要だ。今後は、雇用の「量」ではなく「質」に注目し、地域に根ざした人材戦略を構築していくことが、持続可能な採用活動の鍵となる。
この記事の要点
- 令和7年9月の宮崎県の有効求人倍率は1.21倍で前月比0.01ポイント上昇
- 正社員有効求人倍率は1.06倍で前年同月比0.06ポイント低下
- 有効求人数は前年同月比6.2%減で26か月連続減少
- 製造業や教育分野で求人増、医療・福祉や宿泊業で減少
- 地域による求人倍率格差が拡大、小林市1.32倍が最高水準
- 採用競争が激化する中で中小企業は「選ばれる採用戦略」が求められる
⇒ 詳しくは宮崎労働局のWEBサイトへ


