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2025年11月28日

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令和7年9月 和歌山県の有効求人倍率1.07倍 雇用持ち直しに弱さ

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一般職業紹介状況(令和7年9月分)(和歌山労働局)

この記事の概要

令和7年9月に和歌山労働局が発表した雇用統計によると、和歌山県の有効求人倍率(季節調整値)は1.07倍で、前月から横ばいとなった。求職者1人に対して1.07件の求人がある状態が続いており、全国平均の1.20倍や近畿平均の1.13倍を下回る結果となった。新規求人倍率は1.94倍と、前月比で0.13ポイント上昇し、求人の持ち直し傾向が見られる一方で、雇用の動きには地域的・業種的な偏りが生じている。本稿では、この労働市場の実態を基に、和歌山県の雇用動向を詳しく分析し、中小企業の採用担当者がどのように戦略を構築すべきかを、専門的かつ実践的な視点から解説する。


令和7年9月の和歌山県の有効求人倍率(季節調整値)は1.07倍で、前月から変化はなかった。求人が求職を上回る状態は維持されているものの、改善の勢いは弱まっており、雇用情勢は「持ち直しの動きに弱さが見られる」と分析されている。有効求人数は15,723人で前月比0.5%減、新規求人は5,630人で前月比1.0%減と、求人そのものは2か月連続の減少となった。一方、有効求職者は14,704人で前月比0.6%減、新規求職者は2,906人で前月比7.6%減と、求職側の動きも鈍化している。

原数値で見ると、有効求人は15,820人(前年同月比3.3%減)で4か月連続の減少、有効求職者は14,875人(同2.1%増)で2か月連続の増加となっており、求職超過の傾向が強まっている。新規求人は5,766人で前年同月比1.4%増と、4か月ぶりに増加へ転じた。新規求人倍率(季節調整値)は1.94倍と前月比0.13ポイント上昇しており、求人の回復傾向が見られる。

業種別に見ると、建設業が前年比13.4%増の432人、運輸業・郵便業が同36.6%増の481人、教育・学習支援業が同50.8%増の178人と顕著な伸びを示している。一方、宿泊業・飲食サービス業は前年同月比33.0%減の376人、製造業は同5.3%減の649人、学術研究・専門技術サービス業は同37.6%減の93人と落ち込みが続いている。特に観光関連産業の落ち込みは、インバウンド需要の一巡や人件費高騰、営業時間短縮の影響が大きいと見られる。

新規求人の内訳をみると、パートタイムを除く常用求人が3,072人で前年同月比2.2%増、パートタイム求人が2,694人で同0.4%増と、正規・非正規ともに微増となった。正社員の有効求人倍率(原数値)は0.88倍で、前年同月比0.01ポイント上昇。正社員の有効求人は7,046人(同1.4%減)、有効求職者は8,019人(同2.9%減)で、求人減少幅より求職者減少幅が大きかったため倍率はやや上昇した。これは安定雇用を志向する動きが引き続き強いことを示している。

和歌山県内の雇用動向を地域的に見ると、県北部の和歌山市・海南市周辺では医療・福祉や製造業を中心とした求人が多く、比較的安定している。対照的に中紀・南紀地域では建設業や運輸業の求人が目立ち、特に新宮市や田辺市では公共工事や物流需要の高まりが人手不足を招いている。地域間で求人構造に差があることが、県全体の求人倍率を押し下げている要因の一つである。

産業別新規求人の構成比を見ると、最も割合が高いのは医療・福祉分野で全体の29.2%を占めた。次いで卸売・小売業と製造業がともに11.3%、サービス業が10.0%、建設業が7.5%と続いている。宿泊業・飲食サービス業は6.5%にとどまり、前年より比率を下げた。この構成比からも、和歌山県の雇用市場は「福祉・医療依存型」に移行しつつあることが明確に読み取れる。

こうした現状を踏まえると、中小企業の採用担当者にとって重要なのは「自社の求人がどの市場で競合しているのか」を的確に把握することである。たとえば、医療・福祉分野では求人倍率が高く、人材の獲得競争が激しいため、給与条件だけでなく「働きやすさ」や「職場環境の魅力」を訴求する必要がある。一方で、建設業や運輸業などでは、労働環境の厳しさや若年層離れが続いているため、資格取得支援や勤務制度の柔軟化といった中長期的な採用施策が求められる。

製造業や小売業においては、求人倍率が比較的低く、採用しやすい環境にあるように見えるが、実際には技能人材や経験者が不足している。こうした分野では、未経験者を採用し、入社後の研修・育成プログラムを整備することで、将来の戦力を確保することが効果的である。採用担当者は「即戦力採用」から「育成型採用」へと発想を転換し、教育コストを投資と捉えることが求められる。

また、和歌山県は人口減少が全国的にも早いペースで進行しており、地域全体の労働力供給が縮小している。そのため、採用活動では若年層の獲得だけでなく、シニア層・女性・外国人労働者など多様な層を対象とすることが重要である。特に60歳以上の再就職希望者は増加傾向にあり、経験豊富な人材をうまく活用できれば、労働力不足の解消につながる。

有効求人倍率1.07倍という数字を、単に「求人が多い」と捉えるのではなく、「人材の動きが鈍く、企業間での採用競争が継続している状態」と読み解く必要がある。特に中小企業では、採用までのスピードが競争力を左右する。面接から内定までの期間を短縮し、候補者とのコミュニケーションを密に取ることが採用成功の鍵となる。ハローワークインターネットサービスや民間求人媒体を併用し、応募者に「見つけてもらう力」を高めることも重要である。

一方で、採用後の定着も同じくらい重要である。和歌山県の労働市場は地域密着型企業が多く、働きがい・地域貢献といった非金銭的価値が求職者の動機形成に大きく関わっている。中小企業は、給与や待遇だけでなく「地域で働く意義」や「家族的な職場文化」を前面に出すことで、採用力を高めることができる。

総じて、令和7年9月の和歌山県の雇用市場は、雇用安定の兆しを保ちながらも、業種間・地域間での格差が拡大している。求人倍率1.07倍という数値の裏側には、「企業の採用努力次第で結果が大きく変わる環境」が存在する。中小企業の採用担当者は、有効求人倍率という統計を単なる数値としてではなく、「市場のシグナル」として捉え、自社に最適化された採用戦略を構築していくことが求められる。

この記事の要点

  • 令和7年9月の和歌山県有効求人倍率は1.07倍で横ばい
  • 新規求人倍率は1.94倍で前月比0.13ポイント上昇
  • 建設・運輸・教育分野で求人増加、製造・宿泊で減少
  • 医療・福祉が全体の29.2%を占め雇用の柱に
  • 正社員有効求人倍率は0.88倍で安定志向が継続
  • 中小企業は採用スピードと定着支援が採用成功の鍵

⇒ 詳しくは和歌山労働局のWEBサイトへ

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