労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • インバウンド70%増も雇用は鈍化、2025年10月の近畿経済動向

2025年12月5日

労務・人事ニュース

インバウンド70%増も雇用は鈍化、2025年10月の近畿経済動向

Sponsored by 求人ボックス

求人情報が見つかりませんでした。

広告

景気ウォッチャー調査(令和7年10月調査)― 近畿(現状)―(内閣府)

この記事の概要

令和7年10月の近畿地方における景気ウォッチャー調査では、大阪・関西万博の閉幕後も経済活動の一定の底堅さが確認された一方で、物価上昇や最低賃金引上げの影響により、雇用環境と消費動向に変化がみられた。観光・百貨店業界ではインバウンドを中心とする高額消費が好調に推移したが、スーパーや外食業では節約志向が続いている。新規求人数は7か月連続で減少しており、有効求人倍率の改善は見られない。求職者数は横ばいながら、採用活動の長期化が課題となっている。


令和7年10月の近畿経済は、万博閉幕後の反動減を懸念する声が多かったものの、結果的にはインバウンド需要の底堅さが支えとなり、地域経済の基調は安定している。百貨店では免税売上が好調で、国慶節期間中は高額品の販売が伸び、閉幕後も化粧品や宝飾品などの売上が前年を上回った。特にインバウンド客が前年同月比で70.6%増加し、売上も697%増と飛躍的な伸びを見せたことが特徴的である。国内客の消費も気温の低下により冬物衣料が好調に推移し、全体として来客数は前年を上回る水準を維持している。

一方、スーパーやコンビニエンスストアでは、物価高の影響が顕著となっている。来客数が前年並みで推移する中、客単価は上昇したが、販売量は伸び悩んでおり、売上の増加が限定的である。大阪・関西万博閉幕後は外国人観光客の夜間需要が減少し、特に21時以降の売上が5%減少した店舗もある。消費者は値上げに敏感になり、特売品や低価格帯商品の購入が中心となっており、企業の利益率を圧迫している。

観光・宿泊業では万博閉幕後も団体客の利用が続いており、観光型ホテルの販売量は前年を上回っている。都市型ホテルも欧州からの訪日客が増加傾向にあり、宿泊単価・稼働率ともに改善がみられた。特に万博閉幕間際には駆け込み需要が発生し、コロナ禍以降で最高収益を記録するホテルも出ている。観光需要の回復は外食業にも波及しており、レストランの売上は前年比105%前後と堅調に推移したが、個人客や中年層の利用は減少しており、客単価の低下が続いている。

製造業では、電気機械器具製造業の受注が好転しており、自動車関連でも回復の兆しが見える。しかし輸送機械器具製造業では価格上昇が影響し、消費者が新製品購入を控え、修理で済ませる傾向が強まっている。建設業では受注は増えているが、人手不足が深刻化し、技能労務者や監理技術者の確保が難しい状況が続いている。住宅販売では都心部の高額物件は堅調であるものの、郊外では販売が鈍化しており、建築費の上昇と購買意欲の低下が重なっている。

雇用情勢については、職業安定所の報告によると、新規求人数は前年同月比で7か月連続の減少となり、10月も前年を下回った。最低賃金の引上げにより、求人票の提出を控える企業が増加している。求人の減少は人手不足が解消されたわけではなく、企業の採用余力が低下していることが要因である。特に中小企業では賃上げによるコスト増加が経営を圧迫しており、採用を一時停止する動きも広がっている。

一方、民間の職業紹介機関では、2026年卒・2027年卒の新卒採用活動が継続しており、優良求人が年内も残る状況が続いている。企業側は採用活動を延長しており、採用意欲自体は依然高い。人材派遣業界でも求人は増加しているが、条件に合う求職者が少なく、マッチングが難航している。大阪・関西万博関連で働いていたスタッフの派遣市場への流入も一部みられるが、語学力を求めないオフィスワーク中心の求人とは噛み合っていない。

大学では学生の内定獲得が前年より早く進んでいるが、採用人数を増やす企業は限定的である。求人広告の出稿数は前年を上回る一方、採用決定率は伸び悩んでおり、企業側の採用基準が厳格化している様子がうかがえる。総じて、近畿地方の労働市場は求人減少と採用難が並行して進む「静かな人手不足」の段階にある。

このように、令和7年10月の近畿経済は、インバウンド需要や観光関連が堅調に推移する一方で、消費者の節約志向と採用活動の停滞が顕著であった。企業は賃上げ圧力に対応しながら、人材確保と経営の両立を迫られており、地域経済の持続的成長には雇用環境の安定化が不可欠といえる。

この記事の要点

  • 近畿の新規求人数は7か月連続で減少
  • 有効求人倍率は低水準で改善傾向なし
  • インバウンド客は前年比70.6%増、百貨店売上は697%増
  • 観光・宿泊業は好調でホテル稼働率も上昇
  • 建設業は受注増加も人手不足が深刻化
  • 最低賃金引上げで中小企業の採用意欲が低下

⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ

広告
パコラ通販ライフ
パコラ通販ライフ
PR記事作成サービス受付フォーム