2025年12月28日
労務・人事ニュース
2025年度 米国黒字66.5%とカナダ80.5%が示す北米日系企業
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ジェトロ 2025年度 海外進出日系企業実態調査(北米編) ─不確実性を超え営業利益を拡大、米国市場重視が続く─(JETRO)
この記事の概要
2025年9月に実施された北米の日系企業調査では、米国とカナダに進出する企業の営業利益見通しや調達方針、事業展開の方向性が示され、黒字見込みは米国で66.5%、カナダで80.5%と高い水準を維持した。一方で、関税措置や景気不透明感から米国企業の利益改善は鈍化し、調達先の米国内移行が進むなど環境変化への対応が顕著となった。
2025年9月に北米で活動する日系企業を対象として実施された調査では、米国とカナダに進出する企業の実態が詳細に示され、多様な経営課題と市場機会が浮き彫りになった。調査はオンライン形式で行われ、2,058社を対象に配布されたうち735社から回答が得られ、有効回答率は35.7%となった。長年続く継続調査であり、米国では44回目、カナダでは36回目の実施となる。
営業利益の見通しでは、米国で66.5%の企業が黒字を見込み、前年から0.3ポイントの微増に留まった。カナダでは80.5%が黒字を見込み、資源価格の高騰を背景に2000年以来の高水準に達した。米国企業が伸び悩む一方で、カナダ企業は市場環境に後押しされて大きく改善している点が対照的な結果となった。
米国では関税政策の影響が企業活動に重くのしかかり、利益見通しの悪化を指摘する声が多く寄せられた。トランプ政権の関税措置により調達コストが上昇したことに加え、景気の先行きに対する不透明感が強まり、市場全体の需要減少も影響を与えている。さらに、人手不足による人件費の上昇も負担となり、複数の要因が重なって営業利益の改善が鈍化したとみられる。
調達先の変化では、米国内での調達を増やす傾向がより鮮明となった。米国内調達へ切り替える企業は昨年の2倍以上となる88件に達し、中国や日本から米国への切り替えが相次いだ。さらに中国から日本やASEAN地域に調達先を移す動きもみられ、国際的な調達網を再構築する企業が増加していることが示された。
生産体制についても同様の変化が広がり、生産拠点を米国へ移す動きが2024年の11件から34件へと大幅に増加した。特に日本から米国への移管件数が18件となり、調達変更の調査を開始した2019年度以降で最多となった。この背景には関税負担の軽減や現地市場への迅速対応など、事業継続の観点からの判断があると考えられる。
関税が営業利益に与える影響としては、対日関税が73.9%、相互関税が57.2%と多くの企業が課題に挙げている。具体的には調達コストや輸入コストの増大、現地市場での価格競争力低下などが影響し、企業の収益構造に深刻な影響を及ぼしている。対応策としては価格転嫁が最も多く挙がったが、価格交渉が難航しているとの回答も多く、市場環境の厳しさが浮き彫りになった。
事業展開の見通しでは、米国で今後1〜2年以内に事業を拡大すると回答した企業が48.3%となり、前年の48.6%とほぼ同水準を維持した。不確実性が増す中でも一定の拡大意欲が保たれており、特に半導体やデータセンターといった成長産業への期待が企業の判断を後押ししている。これらの産業では需要が継続して拡大しており、取り組みを強化することが競争力向上に直結している点も影響している。
一方でカナダでは事業を現状維持と回答した企業が拡大と回答した企業を上回った。背景にはトランプ政権の通商政策により市場環境の先行きが不透明となったことが挙げられ、事業拡大への判断を慎重にする企業が多くみられた。市場の変動要因が多い中で、事業運営におけるリスク回避を優先する姿勢が強まったと言える。
今回の調査は北米市場における日系企業の現状を示す重要な指針であり、営業利益の動向、調達網の移行、産業分野の成長性などが複合的に絡み合っていることを示している。企業にとっては市場動向を注視しながら効率的な事業運営を模索する場面が続き、採用や人材配置にも影響が生まれている。人材確保やスキル要求の変化に対応する企業の姿勢が問われる局面が続くと考えられる。
この記事の要点
- 米国の黒字見込みは66.5%で微増
- カナダは80.5%と2000年以来の高水準
- 関税政策により米国で利益見通しが鈍化
- 調達先を米国内へ切り替える動きが88件に増加
- 生産移管も米国向けが34件に増加
- 対日関税73.9%など関税負担が大きな課題
- 価格転嫁は多いが交渉難航の傾向
- 米国企業の48.3%が今後1〜2年の事業拡大を見込む
- 半導体やデータセンターの市場期待が強まる
- カナダは市場不透明性により現状維持が中心
⇒ 詳しくは独立行政法人日本貿易振興機構のWEBサイトへ


