2025年12月26日
労務・人事ニュース
滋賀県の雇用動向(2025年10月)求人倍率1.04倍で読み解く施策
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一般職業紹介状況(令和7年10月分)について(滋賀労働局)
この記事の概要
滋賀県の令和7年10月の有効求人倍率は1.04倍となり、前月から0.01ポイント低下した。新規求人は増加した一方で有効求人数は減少しており、雇用環境には持ち直しの動きがあるものの、物価高などの影響により慎重な判断が求められる状況が続いている。本記事ではデータを詳細に整理し、中小企業が求人倍率からどのように採用戦略を立てるべきかを解説する。
滋賀労働局が発表した令和7年10月の雇用情勢によれば、有効求人倍率(季節調整値)は1.04倍となり、前月から0.01ポイント低下した。資料1ページの折れ線グラフを見ると、求人倍率は過去1年で1.01倍から1.06倍の範囲で推移しており、大きな変動はないものの、慎重な動きの中で再びわずかな低下となったことが確認できる。県内の雇用情勢は「緩やかに持ち直しているものの、物価高などが雇用に影響を及ぼす可能性があり注意が必要」との記述もあり、県としても先行きに対する警戒感を示している 。
有効求人数(季節調整値)は22,025人で前月比0.6%減となり、3か月連続で減少した。一方、有効求職者数は21,084人で前月比0.4%減と、求職者の減少幅は求人より小さい。そのため求人倍率が低下し、企業の採用意欲が弱まりつつある姿がデータに表れている。求人数が連続して減少しているという点は、中小企業にとって「採用競争が緩和している」とも捉えられるが、同時に求職者数も減っているため、単純に採用しやすくなるわけではないという複雑な状況を反映している。
一方、新規求人は前月比2.0%増の8,036人となり、2か月連続で増加している。資料1ページの業種別データでは、運輸業・郵便業が前年同月比9.7%増、学術研究・専門・技術サービス業が105.5%増、生活関連サービス業・娯楽業が24.4%増など、伸びの大きい業種が複数存在している。特に学術研究・専門技術サービス業の大幅増加は、専門性の高い業務への需要が県内でも高まっていることを示している。
反対に、建設業は4.4%減、製造業は12.1%減、卸売・小売業は26.1%減、宿泊業・飲食サービス業は15.8%減など、多くの主要産業が前年を下回っている。製造業の減少幅が大きいことは、県内の製造業企業が慎重に採用を進めているか、あるいは人件費上昇や資材価格の高騰などで採用を抑制する傾向にあることを示していると考えられる。
情報通信業は前年同月比77.1%減と非常に大きく減少しており、7か月連続の減少となった。デジタル分野の求人が鈍化していることは、全国的なIT関連職の需給とは逆の動きとも言えるが、滋賀県の企業規模や業種構成を考えると、外部からの受注減や景況感の悪化が影響している可能性がある。医療・福祉は2.7%減となっているが、求人倍率自体は高い水準が続いており、人材不足の根本的な解消には至っていないことも読み取れる。
新規求人倍率は1.76倍で前月比0.03ポイント低下し、こちらも2か月ぶりの低下となった。新規求人は増加したが新規求職者数も増加しているため、一時的に倍率が低下した形となる。新規求職者数は4,558人で前月比3.3%増と2か月ぶりに増加し、求職活動に入る人がやや戻ってきたことが分かる。ただし資料の注記にもある通り、オンライン求職登録者も含まれるため、求職者の増加が必ずしも労働参加の増加と直結するとは限らない点には注意が必要である。
正社員有効求人倍率は0.82倍(原数値)と前年同月比で0.04ポイント上昇し、12か月連続での上昇となった。正社員の求人数が増加傾向にある一方、求職者数の伸びが追いつかない構造が続いており、正社員採用は依然として難易度が高い状況にある。グラフを見ると正社員倍率は長期的に緩やかな右肩上がりで推移しており、県内企業が正社員確保に力を入れている姿勢が読み取れる。
こうしたデータを踏まえると、中小企業の採用担当者が有効求人倍率をどのように活用すべきかが見えてくる。まず、有効求人倍率1.04倍という数字自体は高すぎず低すぎずの水準だが、求人数と求職者数が同時に減っている状況は、採用活動がより精度を求められるフェーズに入っていることを意味する。求職者全体の母数が減りつつあるとき、企業は「いかに応募者を逃さないか」が重要となる。
求人票の改善は最も効果が高い対策のひとつである。仕事内容を簡潔にまとめるだけではなく、応募者が知りたい情報を丁寧に記載することが求められる。例えば働く環境、教育制度、キャリアパス、残業時間の実態、事業の将来性など、具体的な情報を含めることで応募率は向上する。滋賀県のように製造・サービス・福祉など幅広い産業が共存する地域では、求職者が企業を比較する際の判断材料が多岐にわたるため、「読まれる求人票」を意識することが欠かせない。
また、新規求人倍率が1.76倍と高い水準にあることから、新規採用市場では競争が特に激しいことが分かる。新規求職者が増えているとはいえ、増加幅は限定的であり、企業が募集を開始した時点で他社との競争に直面する。応募から面接、内定までのスピードを早め、応募者にとってストレスのない選考を実施することは、採用成功率を大きく左右する。
さらに、自社の採用ターゲットを広げることも重要である。製造業やサービス業のように新規求人が落ち込んでいる業種では、未経験者採用やシニア層の活用を進めることが有効である。教育体制を整備し、入社後に育成する方針を明確にすることで、従来の採用基準では届かなかった層にもアプローチできる。
地域ごとの特性を踏まえた採用戦略も必要である。滋賀県は京都・大阪とのアクセスが良いため、他府県との採用競争にもさらされやすい。通勤圏が広いという県の特徴を活かし、リモートワークや柔軟な勤務条件を提示すれば、県外の求職者を引きつける可能性が高まる。特に都市部と比較すると物価や住宅費が抑えられるメリットがあるため、地域の生活環境そのものを訴求することも採用戦略のひとつになる。
中小企業は採用担当者の人数も限られているため、労働局の統計資料を活用し、求人倍率・求職者数・産業別求人の変化を定期的に把握することで、採用活動の方向性を判断しやすくなる。滋賀県のデータは毎月公表されており、四半期ごとの変化を追うことで、採用計画を改善するヒントが得られる。
雇用市場が変化する中で採用活動を成功させるためには、データを読み解き、現状を正確に把握し、自社の採用戦略に落とし込む力が求められる。有効求人倍率1.04倍という数字の裏側には、求人数減と新規求人増、業種別の明暗、正社員倍率の上昇といった複数の要素が絡み合っており、これらを理解することで、より実効性の高い採用活動が可能となる。
この記事の要点
- 有効求人倍率1.04倍は2か月ぶりの低下
- 有効求人数は3か月連続減少、新規求人は増加
- 産業別の求人動向に大きなばらつきがある
- 正社員有効求人倍率は12か月連続の上昇
- 新規求職者は増加したが求職母数は限定的
- 中小企業は求人票の質と選考スピードを強化すべき
- 未経験者やシニア層の活用が採用の幅を広げる
⇒ 詳しくは滋賀労働局のWEBサイトへ


