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2026年3月10日

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2010~2022年データで検証した不妊治療と週35~40時間労働が女性メンタルに与える影響

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不妊治療と仕事の両立が女性のメンタルヘルスに与える影響 ―「国民生活基礎調査」を用いた分析―(JILPT)

2026年2月20日、不妊治療と仕事の両立が女性のメンタルヘルスに与える影響について、「国民生活基礎調査」を用いた分析結果が公表された。本研究は、これまで妊娠後や子育て期に重点が置かれてきた少子化対策に対し、妊娠に至る前段階の支援の必要性に着目し、不妊治療と就業の両立がもたらす心理的負担を実証的に明らかにすることを目的としている。

分析には、2010年から2022年までの大規模調査年に実施された「国民生活基礎調査」の個票データが用いられた。対象は25歳から44歳までの有配偶女性に限定され、世帯票と健康票を結合した上で、仕事によるストレスの有無、K6スコア、K6が13点以上となる重度の心理的苦痛の3指標が検証された。推定にはProbitモデルや最小二乗法が用いられ、雇用形態や労働時間との交差項を通じて影響の違いが分析された。

仕事によるストレスについての分析では、不妊治療そのものが平均的にストレスと結びつくというよりも、正規雇用者において不妊治療と仕事が重なる場合にストレスが高まりやすいことが示された。雇用者全体および子どものいない雇用者のいずれでも、不妊治療と正規雇用の交差項は有意に正であり、正規雇用者は非正規雇用者よりも仕事ストレスを抱える確率が高い傾向が確認された。

労働時間別の分析でも同様の傾向が見られた。不妊治療単独では有意な関連は確認されなかったが、週35時間以上の労働時間区分との交差項は有意に正となった。特に週35~40時間の標準的な労働時間帯で限界効果が大きく、週41~50時間、週51時間以上でも一定の上昇が確認された。子どものいない雇用者では、週35時間以上の各区分で一貫してストレスが高いことが示されている。

一方、重度の心理的苦痛については、不妊治療中の女性が非治療者に比べてK6が13点以上となる確率が高い傾向が確認された。全サンプルでは不妊治療の限界効果が0.0169や0.0312など有意に正となる推定が示されている。雇用者サンプルでも同様に0.0257や0.0364などの有意な上昇が確認され、治療と就業の両立が重度の心理的苦痛に結びつく可能性が示唆された。

労働時間との関係では、週51時間以上の長時間労働で重度の心理的苦痛のリスクが高まる傾向が見られた。特に子どものいない女性では、不妊治療と長時間労働が重なる場合にリスクが上昇する推定も確認された。一方で、雇用者に限ると、週35~40時間の標準的な労働時間で不妊治療を受ける場合、重度の心理的苦痛のリスクは相対的に低い可能性も示されている。

これらの結果から、不妊治療と仕事の両立に伴う心理的負担は、標準的な週35~40時間帯における日常的な仕事ストレスの増幅と、週51時間以上の長時間労働における重度の心理的苦痛の上昇という、異なる性質のリスクから構成されることが示された。単に治療の有無だけでなく、雇用形態や労働時間との組み合わせが重要である。

政策的には、長時間労働の是正に加え、時間単位休暇や柔軟な始業・終業、フレックスタイム制の活用などにより、フルタイム就業者が通院や治療に対応しやすい環境を整えることが求められる。また、労働時間に依存しない評価や処遇の運用を進めることで、一時的な時間調整が不利益につながらない仕組みを構築する必要がある。

全国規模のデータを用いて、2010年から2022年までの動向を踏まえた本研究は、不妊治療と就業の両立が女性のメンタルヘルスに及ぼす影響を可視化した点に意義がある。少子化対策を総合的に進める上でも、妊娠前段階にある就業女性への支援設計を具体化するための重要な基礎資料となる。

⇒ 詳しくは独立行政法人労働政策研究・研修機構のWEBサイトへ

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