2024年4月21日
労務・人事ニュース
時代の変遷を映す職業適性評価 GATB検査を用いた年代別能力変動の徹底分析
-   臨床検査技師/筑後市/福岡県 
                            
                            
最終更新: 2025年11月4日 02:34
 -   有料老人ホームでの看護師のお仕事/高時給/即日勤務可 
                            
                            
最終更新: 2025年11月4日 07:02
 -   診療放射線技師/戸畑区/福岡県 
                            
                            
最終更新: 2025年11月4日 02:34
 -   訪問看護ステーションでの在宅における健康管理のお仕事/即日勤務可/シフト 
                            
                            
最終更新: 2025年11月4日 07:02
 
職業適性検査結果からみた職業能力の推移と評価(JILPT)
この記事の概要
厚生労働省が活用している一般職業適性検査(GATB)の手引改訂に向けて、2012年度から2022年度までの11年間にわたる18万件以上のデータが分析されました。調査の結果、中高生では空間判断力と運動共応の低下が続いていることが確認され、大学生や若年層は比較的高得点を示す一方で、50代以降では能力の低下が顕著であることが明らかになりました。
厚生労働省が実施する一般職業適性検査(GATB)は、進路指導や求職活動に幅広く活用されてきた信頼性の高い検査です。しかし、前回の改訂から約10年が経過し、社会環境や学習環境の変化を踏まえて妥当性の再確認が必要とされました。今回の研究では、公益財団法人愛知県労働協会の協力により、過去11年間に蓄積された18万7,712件の団体実施データと4,888件の個人実施データをもとに分析が行われました。対象は中学生、高校生、大学生、専門学校生、短大生、そして一般成人であり、世代を超えて職業能力の推移を詳細に確認することを目的としています。
分析の結果、中学生では概ね横ばい傾向が見られましたが、運動共応能力についてはやや下降傾向が確認されました。特に中学2年生のデータが安定しており、書記的知覚が最も高く、形態知覚がそれに次ぐ一方で、空間判断力と運動共応が低いという特徴が続いています。高校生ではさらに顕著な傾向が見られ、特に空間判断力と運動共応の低下が著しく、高校1年生では2012年度と比較して2022年度において10ポイント程度の下落が確認されました。これらの能力低下は、普通科や商業科、工業科など学科の違いに関係なく共通しており、広範な傾向として表れています。
一方で専門学校生は明確な低下傾向を示さず安定していましたが、短大生(女性)ではもともと低かった運動共応と空間判断力がさらに下がる傾向がみられました。大学生は全領域において他の学校種よりも有意に高い得点を示し、特に知的能力や言語能力、数理能力において優れた結果が確認されました。学校種別に比較すると、大学生は知的能力で平均98.85点、言語能力で106.06点、数理能力で101.09点を示し、いずれも短大生や高校生よりも明確に高い傾向がみられました。
さらに成人を対象に年齢別の能力変化を調査したところ、20代から30代では比較的高い得点が維持されていましたが、50代以上では能力全般に顕著な低下がみられました。ただし世代を超えて共通して確認されたのは、書記的知覚が相対的に高く、空間判断力と運動共応が低いという能力の偏りでした。この特徴は過去の調査結果とも一致しており、日本人における能力傾向の変化が示唆されています。
この研究の意義は、進路指導やキャリア支援で活用されるGATBの有効性を改めて確認した点にあります。GATBの得点は学歴との関連が強く、高学歴層で高得点となり、加齢とともに能力が低下するという従来の知見を裏付ける結果となりました。また、中高生で長期的に空間判断力と運動共応が低下し続けていることは、教育現場における指導や社会全体での育成の在り方を再考する契機ともなり得ます。特に1983年改訂時の基準よりも低い水準で推移していることは、長期的な社会的影響を考える上で重要な指摘といえます。
この記事の要点
- GATBの分析対象は2012年度から2022年度までの11年間で18万件超のデータ
 - 中学生は横ばい傾向だが運動共応に低下傾向、高校生は空間判断力と運動共応が大幅に低下
 - 高校1年生では2012年度から2022年度で10ポイント程度の下落が確認
 - 大学生は全領域で他の学校種より高得点を示し、特に知的・言語・数理能力が顕著
 - 成人では20~30代が高得点、50代以上で顕著な低下が確認された
 - 全体として書記的知覚が高く、空間判断力と運動共応が低い傾向が続いている
 
 
 
                                        
                                        
