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2025年9月18日

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令和6年度 いじめ・嫌がらせが20.4%を占める神奈川労働局の労働相談データに見る職場環境の課題

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令和6年度 個別労働紛争解決制度の施行状況等(神奈川労働局)


この記事の概要

神奈川労働局が発表した「令和6年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、労働者と事業主との間に発生する個別のトラブルに対する相談件数や紛争解決の取り組みに大きな変化が見られました。いじめ・嫌がらせに関する相談が13年連続で最多である一方で、育児・介護休業に関する相談が大幅に増加するなど、労働現場の課題が多様化していることが明らかとなりました。


神奈川労働局が公表した最新の資料によれば、令和6年度において総合労働相談件数は63,604件と前年度から15.9%の減少となりました。しかしその内訳を詳しく見ると、民事上の個別労働紛争の相談件数は16,072件と10.6%増加しており、雇用均等関係法令に関する相談は11,042件と37.9%の大幅な増加となっています。このような結果から、表面的な相談総数の減少とは裏腹に、内容の深刻化と法的側面を含む相談の増加傾向が浮き彫りとなっています。

特に注目されるのは、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談が4,162件で、全体の20.4%を占め、13年連続で最多となった点です。件数自体は前年度比で22.0%の減少が見られたものの、依然として最も多い相談内容であり、職場における人間関係の深刻な問題が継続していることを示しています。さらに、労働契約の解消に関連する「自己都合退職」は2,308件で8.2%増、「退職勧奨」は1,574件で1.7%増、「解雇」は1,677件で5.4%減となっています。つまり、自発的な退職や企業からの退職勧奨が増加傾向にある一方、明確な解雇処分はやや抑制されている様子が伺えます。

また、労働局長による助言・指導の申出件数は440件と、前年度比では0.9%の減少にとどまりましたが、その中でも「労働条件引下げ」や「雇用管理改善等」、「自己都合退職」に関する申出が多く、労働条件の不利益変更への不満や職場環境の改善を求める声が多いことが明らかになっています。特に「労働条件引下げ」の件数は前年比44.7%増と大きく増加しており、企業の経営状況や働き方改革などの影響が、実際の労働条件に影響を与えていることがうかがえます。

さらに、紛争調整委員会による「あっせん」申請件数は306件で5.6%の減少となりましたが、実際に処理された件数は315件に達し、そのうち合意が成立した件数は81件と全体の25.7%に留まりました。あっせん参加率は48.6%と低下傾向にあり、双方の合意形成が難しい状況が続いていることを示しています。例えば、有期雇用労働者が車の運転を不要と説明されたにもかかわらず、後日その運転が必要であるとして解雇された事例では、当初求めていた30万円の補償に対して、あっせん委員が仲介し、最終的に20万円で合意が成立しました。このように、柔軟な調整によって一定の成果を挙げているものの、全体としては解決率の向上が求められる状況です。

雇用均等関係法令の分野においては、特に育児・介護休業法に関する相談が大幅に増加し、6,231件(前年比31.9%増)と最も多く、全体の56.4%を占めました。内容としては、「育児休業の取得」に関する相談が最多の2,292件である一方、「制度利用」や「ハラスメント」に関する相談も目立ち、家庭と仕事の両立支援策の浸透と、それに伴う職場でのトラブルが表面化していることが分かります。

また、パワーハラスメントに関する相談件数も急増し、労働施策総合推進法に基づく相談件数は3,079件と前年からほぼ倍増しました。中でも「パワーハラスメント防止措置」に関する相談が95.6%を占め、企業におけるハラスメント対策の重要性が一層高まっていることを裏付けています。実際の事例として、部長による継続的なパワハラが認定されながらも会社側からの具体的対応が行われず、申立人が労働局に援助を求めた事例では、労働局が企業に対して対応の不備を指摘し、被害者の意向を尊重した措置をとるよう助言した結果、解決に至りました。こうした事例は、企業がハラスメント対応において迅速性と透明性を持つことの重要性を示しています。

是正指導件数は1,422件と前年度比16.9%増加しており、特にパートタイム・有期雇用労働法に関連する指導が全体の62.0%(881件)を占めました。このことは、非正規労働者への待遇や管理体制の改善が依然として大きな課題であることを示しており、企業側における法令遵守の取組強化が求められます。たとえば、労働条件の文書交付や均衡待遇の確保、正社員転換の機会提供、就業規則の整備などが改善指導の対象となっており、働き方改革が進む中で、より公平な雇用環境の構築が求められています。

このように、令和6年度の神奈川労働局による報告からは、職場における人間関係のトラブル、労働条件の変更、育児・介護支援制度の活用に伴う摩擦、さらにはハラスメント問題といった多岐にわたる課題が浮き彫りとなっています。企業の採用・労務管理担当者は、これらのデータと実際の事例を通じて、法的リスクの把握と未然防止の取り組みを進める必要があります。また、相談件数や紛争の解決率の変動は、労働環境の改善が単なる制度導入だけでなく、日々の職場運営と対話の積み重ねによって左右されることを改めて認識させられます。従業員との信頼関係を築き、柔軟かつ適正な対応ができる体制整備が、今後の企業経営において欠かせない要素であると言えるでしょう。

この記事の要点

  • 総合労働相談件数は63,604件で前年比15.9%減
  • 民事上の個別労働紛争相談は16,072件で10.6%増
  • 「いじめ・嫌がらせ」が13年連続で最多の相談項目
  • 育児・介護休業法に関する相談は6,231件で最多
  • パワハラに関する相談は3,079件で急増し対策の必要性が顕著
  • 是正指導件数は1,422件で16.9%増、非正規雇用への対応が焦点

⇒ 詳しくは神奈川労働局のWEBサイトへ

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