労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • 令和6年度 月100時間超の時間外労働が168事業場で発覚した神奈川労働局の監督指導結果とは

2025年9月18日

労務・人事ニュース

令和6年度 月100時間超の時間外労働が168事業場で発覚した神奈川労働局の監督指導結果とは

Sponsored by 求人ボックス

長時間労働が疑われる事業場に対する令和6年度の監督指導結果を公表します(神奈川労働局)


この記事の概要

本記事では、神奈川労働局が公表した令和6年度の長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果について詳しく解説します。違法な時間外労働の実態や過重労働による健康障害防止措置の不備など、労働環境の課題と是正の取組を事例と共に紹介し、企業の採用担当者や人事労務管理に携わる方々にとって重要な示唆を提供します。


神奈川労働局が令和6年度に実施した監督指導の結果は、日本の労働環境、とりわけ長時間労働や過重労働の現状を浮き彫りにする重要な資料である。監督対象となったのは、過去の労働災害請求や時間外・休日労働が月80時間を超える可能性が高いと判断された1,099の事業場であり、そのうち実に923事業場、すなわち84%で労働基準関係法令の違反が認められた。この違反率は、単なる法的瑕疵ではなく、構造的な問題を孕むものとして受け止める必要がある。

特に注目すべきは、違法な時間外労働の実態である。526事業場(全体の47.9%)において法定外の時間外労働が確認されており、その中でも272事業場(51.7%)では実際に月80時間を超える時間外・休日労働が行われていた。さらに、168事業場では月100時間を超え、34事業場では150時間を、そして3事業場では200時間を超える長時間労働が確認されている。これは単なる労働時間の問題にとどまらず、労働者の生命と健康に直結する深刻な労働環境の問題である。

加えて、賃金不払残業が発覚した事業場は99件にのぼり、過重労働による健康障害防止措置が未実施であった事業場も266件(24.2%)存在した。これらは、適正な勤怠管理と労働時間の記録、さらには衛生管理体制の不備が招く典型例であり、企業としての社会的責任が問われる事案である。

神奈川労働局は、労働基準監督署による立入調査の事例も複数紹介している。その中の一つである電気工事業を営む事業場では、熟練労働者の退職が相次いだ結果、施工管理業務が一部の労働者に集中し、36協定の上限(月70時間)を超える月122時間の時間外労働が発生していた。この事業場では、是正勧告に基づき勤怠管理システムの導入や業務量の平準化、移動時間の削減、タスクの共有化といった改革が進められた結果、時間外労働は月33時間程度にまで削減された。これは、明確な数値的成果として他の企業にとっても参考になる取組事例である。

また、ソフトウェア業における事例では、プロジェクトの集中により一部作業員に最大190時間もの違法な時間外労働が発生していた。また、法定の有給休暇の取得管理や衛生管理者・産業医の選任報告等の義務も果たしていないことが判明している。この事業場においては、人員の増員や作業の共有化、協力会社への委託といった対策を講じるとともに、毎週末に管理者が時間外労働の確認を行い、業務の平準化を図ることで、最終的には時間外労働を月20時間程度にまで減少させることができた。

さらに、製造業の事例では、納期の圧力や仕様変更への対応が強いられた結果、最長で月160時間もの違法な時間外労働が10名に発生し、うち9名が月100時間を超える労働を行っていた。ここでは、30分未満の労働時間の切り捨てが常態化しており、賃金の未払いという別の法令違反も併発していた。是正勧告後は、人員の新規採用や派遣労働者の増員、配置転換による業務量の調整が行われ、月60時間以内に収まるよう改善が進められた。

このように、違法な長時間労働や健康障害防止措置の不備に対する指導と企業の対応状況をみると、法令遵守の姿勢が組織的な対応によって成果につながることが明らかである。また、荷主と運送業者が連携して物流効率化を図った飲料メーカーの事例では、リードタイムの延長、OCR検品システムの導入、事前荷揃えプロセスの構築などの取組によって、年間8,000台のトラック削減や配送トラックの拘束時間30%削減、積込時間40%削減という具体的な成果が得られており、働き方改革の成功事例として高く評価されるものである。

令和6年度からは建設業にも時間外労働の上限規制が全面適用されており、災害対応などの一部例外を除けば、月45時間・年360時間の限度を守ることが義務付けられている。また、自動車運転の業務や医業に従事する医師においても、業種特性に配慮しつつも具体的な上限時間が設定されており、すべての業種で労働時間管理が重要視されていることは明らかである。

労働時間の適正把握については、ガイドラインに基づき、タイムカードやICカード、PCログ、自己申告など複数の方法が用いられている。1,099事業場のうち、自己申告制により労働時間を把握していたのは227事業場であり、最も多かったのはタイムカード(384事業場)であった。正確な勤怠管理は法令順守の基本であり、企業には制度の整備と運用の両面での対応が求められる。

また、ストレスチェック制度も重要な健康管理手段として機能しており、労働者50人以上の事業場では義務化されている。令和7年に公布された改正法では、50人未満の事業場にも同制度が義務化される予定であり、メンタルヘルス対策の普及が進むことが期待されている。

以上のように、神奈川労働局の監督指導結果は、法令違反の現状を把握するだけでなく、それに基づいた是正措置の実効性や成果を示す貴重な資料である。企業の採用担当者や労務管理責任者は、このような事例から得られる教訓を生かし、持続可能な労働環境の整備を進めていくことが求められる。労働時間の適正化と健康管理体制の強化は、企業の信頼性を高め、採用力の向上にも直結するからである。

この記事の要点

  • 監督対象1,099事業場中、47.9%で違法な時間外労働を確認
  • 80時間超の時間外労働が272事業場、100時間超が168事業場
  • 賃金不払残業が99事業場、健康障害防止措置の未実施が266事業場
  • 建設業など一部業種も含めて上限規制が全面適用開始
  • 自己申告制で労働時間を把握していたのは227事業場
  • 具体的な改善により、月20時間から60時間への労働時間削減事例が多数
  • ストレスチェック制度が50人未満の事業場にも義務化される予定

⇒ 詳しくは神奈川労働局のWEBサイトへ

パコラ通販ライフ
パコラ通販ライフ
PR記事作成サービス受付フォーム