2025年9月22日
労務・人事ニュース
平均所得359.7万円へ上昇、所得再分配が示す企業の報酬設計のヒント
- 「夜勤なし」/准看護師・正看護師/整形外科/リハビリテーション科/外科/クリニック
最終更新: 2025年9月21日 22:37
- 「夜勤なし」/正看護師/特別養護老人ホーム/介護施設/ブランクのある方も歓迎
最終更新: 2025年9月21日 22:37
- 診療放射線技師/クリニック/八幡西区/福岡県/黒崎駅
最終更新: 2025年9月21日 02:03
- 「土日祝休み」/准看護師/グループホーム/介護施設/夜勤なし
最終更新: 2025年9月21日 22:37
令和7年版厚生労働白書 第1部 第1章 社会保障と労働施策の役割とこれから(厚労省)
この記事の概要
令和7年版厚生労働白書では、日本社会における社会保障と労働施策の役割を体系的に示しています。少子高齢化が加速する中で、社会保障制度の持続可能性と、その財源確保、そして労働環境の変化に対応する必要性が浮き彫りになっています。年金、医療、介護といった社会保険制度の概要や財政状況に加え、労働施策の歴史的背景と現代的課題についても詳細に説明されており、企業の人事担当者にとっても今後の人材戦略に欠かせない知見が詰まっています。
日本の社会保障制度は、国民の生活をあらゆる側面から支える公的な仕組みとして、長い歴史の中で整備されてきました。令和7年版の厚生労働白書は、この制度が果たしている機能と今後の課題について、非常に丁寧に解説しています。まず、社会保障制度の基本的な枠組みとして、年金、医療、介護、雇用、労災といった社会保険が柱となり、これらが生活の安定と安心を保障する重要な手段であることが強調されています。
2024年度の社会保障給付費は138兆円に達し、国内総生産(GDP)に対する比率は22%にのぼっています。年金がそのうち約62兆円、医療費が約43兆円、福祉その他が約33兆円となっており、いずれも国民の生活と密接に関係する支出です。これらの財源は、保険料が約60%、公費が約40%という構成でまかなわれており、そのうち国庫負担は37.7兆円と一般歳出の55.7%を占めています。つまり、社会全体で支え合う仕組みが、今の日本社会を成り立たせている基盤と言えるでしょう。
こうした社会保障制度の根底には、「自助・共助・公助」の三本柱があります。自助とは自分の力で生活を支えること、共助は社会全体でリスクを分かち合うこと、そして公助はすでに困っている人々を公的に支援する仕組みです。これらを適切に組み合わせることで、誰もが生涯を通じて安心して暮らせる社会が目指されています。
特に注目すべきは、社会保障が果たす3つの重要な機能です。第一に、病気や失業といった生活上のリスクに対応し、生活の安定と安心をもたらす「生活安定・向上機能」。第二に、所得の偏りを是正する「所得再分配機能」。そして第三に、景気の変動を緩和し、経済全体を支える「経済安定機能」です。令和3年の所得再分配調査によると、制度による再分配の結果、平均所得が312.4万円から359.7万円に上昇し、いわゆる中間層の割合が増加しました。これは、社会保障制度が国民全体の消費活動を支える土台となっている証左でもあります。
また、介護保険制度や医療保険制度がなかった場合の社会的影響についても白書では言及されています。仮に制度が存在しなければ、介護が必要な家族を抱える人は離職を余儀なくされることが多く、人生設計そのものが大きく狂う恐れがあります。医療保険がなければ、一生涯で約2,900万円とも言われる医療費を全額自己負担で賄わなければならず、経済的なリスクは計り知れません。こうしたリスクを個人が単独で背負うのではなく、社会全体で分担する仕組みがあることが、安心社会の実現に直結しているのです。
労働施策についても、白書ではその歴史的な経緯から丁寧に紐解かれています。日本の近代産業化が進んだ明治時代には、工場労働者、特に女性労働者の過酷な労働環境が大きな社会問題となりました。長時間労働、低賃金、外出の制限や手紙の検閲など、今では考えられないような状況が横行していたのです。これを受けて、工場法や職業紹介法などが制定され、さらに戦後には日本国憲法に基づき、労働基準法や労働組合法、雇用保険法などが整備されていきました。
特に、雇用の安定を目的とした施策は、戦後の経済復興と並行して発展してきました。最低賃金法の制定、男女雇用機会均等法の導入、さらには失業保険の拡充など、労働者を保護するための制度が強化されています。現代では、テレワークの普及や副業・兼業の容認など、働き方の多様化に対応する施策も進められています。
現在の社会保障や労働施策の維持には、現役世代の働き手による保険料や税の支払いが欠かせません。したがって、企業にとっては、働き手の健康維持や長期的な雇用の安定、さらにはダイバーシティを尊重した職場環境の整備が、社会保障の安定にも直結する重要な取り組みとなります。採用担当者にとっては、若者を惹きつける魅力的な雇用環境を構築することが、企業の競争力向上と同時に、社会全体への貢献にもつながるでしょう。
このように、令和7年版の厚生労働白書は、社会保障と労働施策の両面から、今後の日本社会が進むべき道筋を明確に示しています。少子高齢化という避けられない現実に対し、制度の持続可能性を確保するための改革と同時に、すべての人が安心して暮らせる社会づくりの必要性が強調されており、まさに現代日本における課題と希望を映し出す文書となっています。
この記事の要点
- 社会保障給付費は2024年度に138兆円、GDP比で22%に達している
- 公的負担は37.7兆円で一般歳出の55.7%を占める
- 所得再分配によって中間層の厚みが増し、平均所得は312.4万円から359.7万円に増加
- 介護や医療保険制度の存在が生活と仕事の両立を支えている
- 労働施策は歴史的背景に基づき法整備が進み、現在は多様な働き方に対応
- 企業の雇用安定と労働環境整備は社会保障制度の持続に寄与する
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ