2025年9月22日
労務・人事ニュース
若者向け社会保障教育で令和6年度に1,792回の授業実施、延べ11万3,800人が参加した最新の取り組み
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最終更新: 2025年9月21日 22:37
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令和7年版厚生労働白書 第1部 第3章 若者に社会保障や労働施策を知ってもらうための取組状況と方向性(厚労省)
この記事の概要
本記事では、若者に対する社会保障教育および労働法教育の現状と取り組みについて詳述します。厚生労働省が中心となり作成した教材や指導マニュアル、映像資料を活用し、高校や大学などの教育現場で実践されている具体的な事例を紹介するとともに、民間団体や地域社会との連携による支援活動も解説します。また、若者が自ら制度を理解し活用できるようICTを活用した学習環境の整備や、多言語対応の普及啓発資料の配布など多角的なアプローチが進められていることを示しています。さらに、今後の課題として教材の継続的な改善や幅広い世代への周知拡大の必要性にも触れています。
若者に社会保障や労働施策を正しく理解してもらうための教育は、これまで関心が薄かったという課題意識から始まりました。厚生労働省は平成24年度から高校教師を中心とした検討会を設置し、限られた授業時間内で重点的に教えるべき項目を整理しました。その際、生徒の当事者意識を引き出す工夫や教師が指導しやすい教材作成に注力し、試行的な検証を経て「平成26年テキスト」と呼ばれる教材を完成させました。この教材は社会保障制度の歴史的背景や理念、助け合いや連帯の重要性に焦点を当て、単なる制度説明に留まらず、社会保障の課題にも挑戦する構成となっています。公的年金や医療保険、介護保険を中心に据えつつ、社会福祉や公的扶助、公衆衛生も含む全体像をわかりやすく解説しています。
また、映像教材やワークシート、副教材も開発され、中学校・高等学校向けには文部科学省の特別選定を受けたものもあります。これらの教材は厚生労働省のホームページで自由にダウンロード・編集可能な形で公開されており、教員が自身の授業プランに合わせて柔軟に活用できるようになっています。さらに、「主体的・対話的で深い学び」を実現するための指導者用マニュアルも整備され、公的年金保険や医療保険に関するモデル授業案が複数用意されています。これにより、生徒がクイズやロールプレイ、グループワークを通じて楽しく深く学べる環境が整えられています。
一方、労働法教育においても同様に充実した取り組みが進んでいます。就職を控えた学生や若者向けに「知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~」というハンドブックが作成され、毎年4月に最新の制度改正を反映して更新されています。外国人労働者にも配慮し、英語、中国語、ベトナム語、タガログ語への翻訳版も提供されています。高校生や大学生向けには漫画形式のQ&A冊子もあり、働く前の注意点や労働契約、トラブル時の対応などをわかりやすく伝えています。2024年度にはこの漫画の動画版も制作され、スマートフォンやICT端末を活用したアクセスの利便性が向上しました。
さらに、eラーニング教材も整備されており、38項目にわたる入門編と応用編で、マンガやチェックテストを通じて労働法の基礎知識を自主的に学べる仕組みが提供されています。これらの教材は学校の職業教育や企業の新入社員研修でも活用されており、労働法に不慣れな教員でも扱いやすいモデル授業案も用意されています。加えて、都道府県労働局やハローワークが講師派遣を行い、全国で年間1,792回以上のセミナーを開催し、延べ11万人以上の学生や若者が参加しています。こうした現場の声を反映しながら、教材の改善や普及に努めています。
教育現場での具体的な事例としては、東京都立世田谷泉高等学校での社会保障教育が挙げられます。生徒はストーリー形式の教材を使い、実際に起こりうる困難な状況に対して利用可能な制度を調べるグループワークを行いました。スマートフォンでQRコードを読み取り、孤独・孤立対策のウェブサイトを活用するなど、情報収集能力を養う実践的な学習が展開されています。アンケート結果からは、生徒の多くが社会保障を自分ごととして捉え、負担に納得感を持つ傾向が見られ、教材の効果が期待されています。
労働条件セミナーの例としては、山口県立南陽工業高等学校での取り組みがあります。3年生を対象に、就職直前のタイミングで労働法の基礎知識をクイズ形式で学ぶ機会を設け、講師の丁寧な解説により生徒の理解度と満足度が高まりました。生徒からは「初めて知ることが多く、将来に役立つ内容だった」という声が寄せられ、働く上での責任感や権利意識の醸成につながっています。こうしたセミナーは、学校の職業指導担当教諭の企画力と熱意によって成功しており、若者の就職支援における重要な柱となっています。
民間の取組みとしては、全国社会保険労務士会連合会や東京都社会保険労務士会が積極的に出前授業を実施しています。2008年から続くこの活動は2023年度に17,500人の受講者を記録し、都立高校を中心に地域の話題を交えた授業が好評です。社会保険労務士は学校だけでなく企業の新入社員研修や市町村の成年後見人養成講座など多様な場面で専門知識を提供し、若者の労働環境の理解促進に貢献しています。彼らは繰り返し教育の重要性を強調し、段階的に情報量を増やしながら知識の定着を図っています。
個別政策分野の教育も充実しており、例えば年金教育ではQuizKnockとのコラボレーションにより中高生向けの教材や解説動画が作成され、厚生労働省の特設サイトで公開されています。将来の年金額をシミュレーションしながら制度の基礎を学べるワークシートはICT教育と連動し、教育現場での活用が進んでいます。薬害教育においてもデジタル教材や視聴覚教材、指導の手引き、実践事例集が整備され、教員のアンケートや検討会の議論を踏まえて随時改訂が行われています。これにより、薬害問題を自分事として考え、国や企業、市民それぞれの役割を理解する教育が推進されています。
今後の課題としては、教材や指導資料の迅速なアップデート、効果的な教育手法の共有と横展開、そして高等学校や大学以外の卒業後すぐに社会に出る若者層への周知拡大が挙げられます。ICT端末の普及やSNS、漫画、短い動画など多様なメディアを活用した情報発信も求められており、興味のない層にも届く工夫が必要です。厚生労働省はこれらのニーズに応えつつ、教育現場や地域社会、民間団体と連携しながら、若者が自らの生活や働く環境を守るための知識とスキルを身につけられるよう不断の努力を続けています。
この記事の要点
- 社会保障教育は理念や歴史を重視し、実践的な教材と指導マニュアルが整備されている
- 労働法教育は多言語対応や漫画・動画教材を活用し、若者の理解促進に努めている
- ICTを活用したeラーニングやオンラインセミナーで学習環境が充実している
- 教育現場ではグループワークやクイズ形式の授業が効果的に実施されている
- 民間団体も出前授業や地域講座を通じて若者支援に貢献している
- 年金教育や薬害教育など個別政策分野の教材も充実し、随時改訂が行われている
- 今後は教材の継続的改善と幅広い世代への周知拡大が課題である
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ