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2025年9月22日

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2040年に約272万人必要と推計される介護職員確保に向けた処遇改善とICT活用

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令和7年版厚生労働白書 第2部 第6章 国民が安心できる持続可能な医療・介護の実現(厚労省)


この記事の概要

本記事では、2025年を迎える日本における医療・介護提供体制の現状と課題、そして今後の持続可能な社会保障制度構築に向けた具体的施策について詳述します。高齢化の急速な進展や医療従事者の確保問題、地域包括ケアシステムの深化、医療安全対策、働き方改革など、多角的な視点から国が推進する政策を解説し、企業の採用担当者にも役立つ人材確保の動向や職場環境改善の取り組みも紹介します。


2025年、日本は団塊の世代が75歳以上となり、高齢者人口が急増する重要な節目を迎えています。65歳以上の人口、とくに75歳以上の高齢者が大幅に増加した一方で、生産年齢人口は減少傾向にあり、この人口構造の変化は医療・介護分野に深刻な影響を及ぼしています。こうした背景のもと、厚生労働省は地域の実情に応じた医療・介護の総合的な確保計画を都道府県単位で策定し、地域医療介護総合確保基金を活用して質の高い医療提供体制の維持・向上を図っています。

我が国の医療提供体制は国民皆保険制度とフリーアクセスの原則の下で整備されてきましたが、少子高齢化による疾病構造の多様化や医療技術の進歩、国民の医療意識の変化に対応するため、将来を見据えた体制強化が求められています。特に小児救急医療や周産期医療に関しては、第8次医療計画に基づき医師の勤務環境改善や医療機関の集約化を進めるとともに、災害時の医療支援体制の充実も図られています。2017年度以降は業務継続計画(BCP)策定促進の研修を実施し、延べ4,926名の医療従事者が受講しました。また、災害薬事コーディネーターの養成も新たに開始され、都道府県が任命する取組みが進んでいます。

さらに、新興感染症の発生・まん延に備えた医療提供体制の構築も第8次医療計画に盛り込まれ、へき地診療所の巡回診療や遠隔医療の活用など、地域格差の是正に向けた施策が推進されています。外来医療機能の明確化や連携強化も法改正により制度化され、都道府県が医療機関の外来機能報告を基に協議を行い、紹介受診重点医療機関の公表を進めています。これにより、かかりつけ医機能の明確化と有効活用が期待されており、患者と医療者双方にとって利便性の高い医療提供体制の実現を目指しています。

医療従事者の確保は喫緊の課題です。特に医師の偏在対策として、都道府県ごとに医師数の多寡を客観的に評価し、医師確保計画を策定しています。医学部入学定員には地域枠を設け、一定期間特定地域での勤務を条件とすることで地域医療への貢献を促しています。2024年度からは第8次医師確保計画が始まり、医師偏在指標の精緻化や経済的インセンティブの導入など、全世代の医師を対象とした総合的な偏在是正策が講じられています。看護師や薬剤師の確保に関しても同様に、地域偏在や業態偏在の解消に向けた指標策定やガイドラインの発出、復職支援や職場環境改善のための研修・相談体制の充実が進められています。

医師の働き方改革も重要なテーマであり、2024年4月から勤務医の時間外労働の上限規制が適用され、医療機関は労働時間短縮計画を策定し計画的に推進しています。長時間労働の是正は医師自身の健康保持だけでなく、患者に対する安全で質の高い医療提供のためにも不可欠です。国立病院機構では全国ネットワークを活用し、難病や精神疾患、災害医療など専門性の高い医療を提供するとともに、研究推進組織の設置により高度専門医療の質向上を図っています。

医療安全の確保に関しては、都道府県等に設置された医療安全支援センターが中立的な立場で医療事故調査を行い、その分析結果を基に再発防止策の普及啓発を推進しています。公益財団法人日本医療機能評価機構が登録分析機関として医療事故情報の収集・分析を担い、3か月ごとに報告書を公表し、医療機関にリスク低減情報を提供しています。特定機能病院のガバナンス改革も進められており、医療安全に関する重大事案の発生を踏まえ、承認要件に評価・改善措置の公表を追加しました。

産科医療補償制度や特別給付事業も整備され、安心して産科医療を受けられる環境づくりが進められています。国際的には世界患者安全サミットが開催され、医療安全のグローバルな推進が図られています。医療に関する情報提供の充実も重視され、都道府県が医療機関情報を集約し、虚偽広告の禁止や監視体制強化に努めています。医療の質向上に向けては根拠に基づく医療(EBM)の浸透や患者満足度の評価、公表事業が推進され、医療の透明性と信頼性の向上に寄与しています。

介護保険制度においては、2040年に約272万人の介護職員が必要と推計され、人材確保が最重要課題となっています。処遇改善や未経験者の参入促進、ICT活用による業務負担軽減、魅力発信など多面的な施策が展開されており、外国人介護人材の受入れも拡大しています。ハローワークの「人材確保対策コーナー」では医療・福祉分野の職業相談や求人支援が行われ、介護労働安定センターは雇用管理改善のためのコンサルティングや助成金周知を通じて職場環境の向上を支援しています。

地域包括ケアシステムの深化は、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送るための重要な柱です。市町村が中心となり、体操や趣味活動を含む「通いの場」の充実を図り、参加率は2023年度で6.7%に達しています。介護予防と地域づくりを両輪とした施策が推進され、好事例の共有や広報活動も積極的に行われています。介護施設では、医療的ケアと生活支援を兼ね備えた「介護医療院」が創設され、2024年4月時点で926施設、53,183床が稼働しています。虐待防止策も強化され、委員会設置や研修義務違反の場合は基本報酬の減算措置が導入されました。

介護現場の生産性向上も重要視されており、都道府県主導で31県に介護生産性向上総合相談センターが設置され、ICTや介護テクノロジーの普及促進が図られています。文書負担軽減のため電子申請・届出システムの利用が義務化され、地方自治体は2025年度末までに準備完了を目指しています。こうした取り組みは介護職員の働きやすさ向上に直結し、2023年度からは優れた職場環境づくりを表彰する制度もスタートしました。

診療報酬・薬価改定では、2024年度改定でプラス0.88%の改定率が設定され、人材確保や働き方改革、医療DX推進、地域包括ケアの深化を念頭に置いた内容となっています。オンライン資格確認や電子カルテ情報共有サービスの導入に伴う診療報酬評価の新設、歯科衛生士・歯科技工士のタスクシフト評価引上げ、革新的新薬の適切評価や医薬品安定供給確保のための薬価改定も実施されました。これらは質の高い医療提供と持続可能な制度運営を両立させる狙いがあります。

このように、日本の医療・介護分野は超高齢社会の到来に対応すべく、多方面からの政策展開が進んでいます。医療従事者の確保と働き方改革、地域包括ケアの推進、医療安全の強化、介護現場の生産性向上と人材育成、さらにはデジタル技術の活用など、複雑かつ多岐にわたる課題に対し、国と地方自治体、関連団体が連携して取り組んでいます。企業の採用担当者にとっても、医療・介護分野の人材ニーズや職場環境改善の動向を理解することは、今後の人材戦略において非常に重要なポイントとなるでしょう。

この記事の要点

  • 2025年に75歳以上の高齢者が急増し、医療・介護需要が大幅に増加する
  • 都道府県単位で医療・介護の総合確保計画を策定し、地域医療介護総合確保基金を活用
  • 医師・看護師・薬剤師の偏在是正と確保に向けた計画と指標が整備されている
  • 医師の働き方改革により時間外労働の上限規制が導入され、労働環境改善が進む
  • 医療安全支援センターが医療事故調査を行い、再発防止策の普及啓発を推進
  • 介護職員は2040年に約272万人必要と推計され、処遇改善やICT活用で確保を図る
  • 地域包括ケアシステムの深化により「通いの場」や介護医療院の整備が進展
  • 診療報酬改定で医療DX推進や人材確保を評価し、薬価改定で革新的新薬の適正評価を実施
  • 介護現場の生産性向上と文書負担軽減に向けたICT導入が加速し、職場環境改善も推進
  • 外国人介護人材の受入れ拡大や職業相談窓口の充実により人材確保の多様化を図る

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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