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2025年9月23日

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2024年に開催されたASEAN+3保健大臣会合でのデジタルヘルス推進と日本のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ支援

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令和7年版厚生労働白書 第2部 第9章 国際社会への貢献(厚労省)


この記事の概要

本記事は、厚生労働省が国際社会において果たしている役割と貢献について詳述しています。保健医療、労働、社会保障・福祉の各分野での多国間協力や国際機関との連携、開発途上国への技術支援、人材育成、政策交流、経済連携協定(EPA)対応など、多岐にわたる活動を丁寧に解説し、日本の経験と知見を活かした国際的な課題解決への取り組みを紹介します。特にパンデミック対策やユニバーサル・ヘルス・カバレッジ推進、労働市場の変化対応、ASEAN諸国との協力強化など、最新の動向も含めて網羅的にまとめています。


近年、厚生労働行政は国内政策と国際社会の動きが密接に連動するようになり、新型コロナウイルス感染症対応の教訓を踏まえ、公衆衛生危機への予防や備え、対応能力の強化に注力しています。高齢化の進行や薬剤耐性(AMR)、非感染症疾患の増加に対しては多国間連携が不可欠であり、デジタル化やグリーン化による産業構造の変化に伴う労働市場の課題も国際的議論の対象となっています。

2022年には政府のグローバルヘルス戦略が策定され、より強靭で公平かつ持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取組みが進められています。さらに2024年8月には、国内外の戦略を連動させるため「厚生労働省国際保健ビジョン」が策定されました。

日本は世界保健機関(WHO)や国際労働機関(ILO)をはじめとする国際機関に積極的に参画し、国際社会における課題設定や合意形成に努めています。G7及びG20の枠組みでは、保健大臣会合や労働雇用大臣会合を通じて、パンデミック予防・備え・対応、健康的な高齢化、ワンヘルスアプローチ、AIの活用、気候変動と健康など幅広いテーマが議論されています。

2024年のG7保健大臣会合ではイタリアが議長国を務め、「G7保健大臣コミュニケ」や「AIに関するG7ポリシーブリーフ」が採択されました。G20保健大臣会合ではブラジルで開催され、「パンデミック対応」「健康の公平性」「デジタルヘルス」「気候変動と健康」などが主要議題となり、成果として複数の宣言が発出されました。また財務大臣・保健大臣合同会合も実施され、財務と保健の連携強化が確認されています。

WHOにおいては、日本は総会や執行理事会で積極的に関与し、2024年5月の第77回WHO総会では国際保健規則(IHR)の改正案がコンセンサスで採択されました。主な改正点は「パンデミック緊急事態」の新定義や「IHR実施のための委員会」設置の規定です。改正IHRは拒絶表明国を除く加盟国に12か月後に効力が発生します。

WHOはパンデミック対応の新たな法的文書(WHOパンデミック協定:仮称)を策定し、2025年5月の第78回WHO総会で協定本体が採択されました。病原体アクセスやワクチン配分の仕組みについては今後交渉が予定されています。WHOはまた、気候変動に強靭で低炭素な保健医療システム構築を目指すATACHの事務局を務め、2024年5月に厚生労働省が正式参加しました。これにより国内外での気候変動と健康問題への対応を強化しています。

経済協力開発機構(OECD)は38か国からなる国際機関で、保健医療分野では政策分析や統計データ収集を担い、厚生労働省は医療委員会に参加し日本の事例を共有しています。2024年の医療委員会では看護職負担軽減、医師偏在対策、性差分析、気候変動対策が議論され、同年1月の保健大臣会合では日本の健康危機対応やAMR対策が紹介されました。

東南アジア諸国連合(ASEAN)とは保健、労働、社会福祉分野で連携を深めており、ASEAN+3の担当大臣会合や高級事務レベル会合が定期的に開催されています。2024年8月のASEAN+3保健大臣会合ではデジタルイノベーションを通じた健康安全保障強化が議論され、日本の知見が共有されました。日中韓三国保健大臣会合も2024年12月に東京で開催され、公衆衛生安全保障や健康な高齢化、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ推進に関する共同声明が採択されました。

その他にも、G7とメキシコ、欧州委員会の保健担当閣僚等による世界健康安全保障イニシアティブ(GHSI)が継続的に開催され、生物・化学・放射線・核(CBRN)脅威への備えが議論されています。2025年2月には第7回Tokyo AMR One-Health Conferenceが開催され、アジア太平洋地域のAMR対策の優先領域に関する進捗共有が行われました。

APEC保健・経済ハイレベル会合(2024年8月ペルー開催)ではジェンダーと保健、気候変動と健康、プライマリ・ヘルス・ケアの取組みが議論され、日本は母子手帳制度を紹介し予防接種情報の普及促進を発言しました。国連総会ハイレベルウィークでもユニバーサル・ヘルス・カバレッジ関連イベントを共催し、Triple I for Global Healthなどの国際保健イニシアティブを主導しています。

日本の製薬産業の研究開発力を活かし、官民連携で顧みられない熱帯病やエボラ出血熱などの治療薬・ワクチン開発を支援する公益社団法人GHITやCEPI、Gaviワクチンアライアンス、GARDP、CARB-Xなどへ資金拠出し、適切な費用支出管理を行いながら連携を図っています。世界エイズ・結核・マラリア対策基金への拠出も継続し、途上国の三大感染症対策や保健システム強化に寄与しています。ストップ結核パートナーシップへの支援では革新的診断機器や小児多剤耐性結核治療の推進を支援しています。

労働分野では、G7労働雇用大臣会合(2024年9月イタリア開催)でAIの人間中心開発、高齢社会の強靭な労働市場、柔軟なスキル・生涯学習、包摂的労働市場の推進が議論され、厚生労働大臣が日本の介護サービス充実や外国人介護人材獲得の取組みを紹介しました。

G20労働雇用大臣会合(2024年7月ブラジル開催)では質の高い雇用創出、気候変動・デジタル変革に伴う公正な移行、ジェンダー平等、テクノロジー活用が議題となり、厚生労働副大臣が日本の状況を共有しました。ILOは政労使三者構成の国際機関で、日本は常任理事国として条約批准や総会での議論に積極的に参加しています。2024年6月の第112回ILO総会では少子高齢化に伴う労働力確保や子育て政策強化を紹介し、生物学的危険からの労働者保護やディーセント・ワーク推進が議論されました。

OECDの雇用・労働・社会問題委員会では政策分析やデータ提供を行い、2024年には日本版移民政策レビューを公表し、高度人材ポイント制や技能実習制度改善の提言が示されました。高齢者雇用政策に関する合同イベントも開催され、2025年2月の社会保障大臣会合では少子化・高齢化対応の社会政策が議論されました。ASEANとの労働分野連携も進展し、2024年10月のASEAN+3労働大臣会合ではレジリエンス強化とイノベーション促進がテーマとなり、技能移転や移民労働者の社会保障支援が報告されました。

社会保障・福祉分野では、ASEAN+3社会福祉大臣会合や高級実務レベル会合が開催され、共通課題や技術協力について意見交換が行われています。2003年から毎年開催されるASEAN・日本社会保障ハイレベル会合では人材育成や情報共有を目的に、2024年11月の第22回会合では「UHCと健康な社会づくりの好循環」をテーマに政策提言がまとめられました。

開発途上国への国際協力では、医療保健分野でWHOを通じた専門家派遣や技術協力、UNAIDSを通じたエイズ対策支援が行われています。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ推進のため、低・中所得国向けの研修や知見共有を目的とした「UHCナレッジハブ」の設置準備も進んでいます。

労働分野ではILOの開発協力事業を通じてアジア太平洋地域のディーセント・ワーク実現支援や草の根レベルの社会セーフティネット構築支援を実施しています。人材開発分野では技能評価システムを活用し、日系企業と連携して技能移転やシステム整備支援を行い、外務省やJICAとも連携して施設設置や専門家派遣、研修受入れを推進しています。社会保障・福祉分野では専門家派遣や研修受入れを通じて制度整備支援を行い、ILOを通じた社会保険制度整備支援も継続しています。

各国政府との政策交流も活発で、ドイツ、北欧諸国、フランス、中国、韓国と社会保障政策の政府間交流を実施し、2024年には認知症や未婚化・少子化対策、地域包括ケアをテーマにシンポジウムやセミナーを開催しました。労働分野ではEU、ドイツ、アメリカと労使や専門家を交えた政策交流を重視し、2024年にはベルギーで準備会合・専門家交流を行い、2025年7月に東京で労働安全衛生をテーマにシンポジウム開催が合意されました。アメリカでは人材育成をテーマに労働政策対話も開催されています。

経済連携協定(EPA)等の締結により、世界各地で経済連携が拡大しており、日本はシンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、EU、アメリカ、英国との協定やCPTPP、RCEP、IPEF関連協定を発効させています。

厚生労働省所管分野では食の安全・安心、公的医療保険制度、労働関係制度の堅持が基本方針です。インドネシア、フィリピン、ベトナムとのEPAでは看護師候補者や介護福祉士候補者の受け入れを一定条件下で認め、日本の国家資格取得後の就労を可能にしています。現在交渉中のEPA・FTAには日・バングラデシュEPA、日GCC・EPA、日UAE・EPAがあり、衛生植物検疫措置、貿易技術障害、サービス貿易、自然人の移動、知的財産、労働など多様な分野が交渉対象です。

以上のように、厚生労働省は国際社会における多様な課題に対し、国際機関や多国間フォーラム、隣接諸国との連携を強化しつつ、国内外の政策を連動させ、持続可能で公平な保健医療・労働・社会保障体制の構築に貢献しています。これらの活動は日本の豊富な経験と高度な技術力を背景に、世界の健康危機管理や労働環境改善、社会福祉の向上に寄与し、SDGs達成にも大きく貢献しています。

この記事の要点

  • 厚生労働省は国際機関や多国間会合に積極的に参画し、パンデミック対応やユニバーサル・ヘルス・カバレッジ推進に貢献している
  • WHOの国際保健規則改正やパンデミック協定策定に日本は重要な役割を果たしている
  • G7・G20、ASEAN+3、日中韓三国会合など多様な国際フォーラムで保健・労働・社会保障分野の課題を議論し協力を深化させている
  • 開発途上国への技術協力や人材育成を通じて、医療保健、労働、社会保障制度の整備支援を行っている
  • 経済連携協定(EPA)では看護師・介護福祉士候補者の受け入れなど労働分野の連携も推進している
  • ILOやOECDとの連携により労働政策や社会保障政策の国際比較・改善を図っている
  • 日本の製薬産業と連携し、感染症対策や薬剤耐性菌対策の国際的研究開発に資金拠出を行っている
  • 国際的な気候変動と健康問題への対応も強化し、ATACH事務局として主導的役割を担っている
  • 各国政府との政策交流を通じて日本の制度の特性を検証し、相互理解と政策改善に繋げている
  • 多角的貿易体制を補完するEPA・FTA交渉において、厚生労働省は食の安全や労働制度の維持に注力している

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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