2025年9月26日
労務・人事ニュース
2025年8月、中国地域で有効求人倍率に陰り、人手不足業種とのギャップが拡大
景気ウォッチャー調査(令和7年8月調査)― 中国(現状)―(内閣府)
この記事の概要
令和7年8月に実施され、令和7年9月8日に公表された中国地域の景気ウォッチャー調査では、猛暑や物価高の影響を強く受けつつも、一部業種で安定的な需要や売上増加の傾向が見られました。特に観光やインバウンド関連、製造業の一部で堅調な動きがある一方、小売や住宅販売など消費者支出に依存する分野では苦戦が続いています。
令和7年8月の中国地域における景気の現状は、地域ごとの気候条件や業種特性により、好調な業種と停滞感の強い業種とがはっきり分かれる結果となった。全体として猛暑が続いた影響が消費行動に与えた影響は非常に大きく、物価上昇との複合要因によって、多くの小売業では来客数や販売点数の伸び悩みが見られた。
まず、コンビニや小売業においては、インバウンドを含む観光客の増加による集客効果がみられた一方、猛暑による昼間の外出控えが来客数の伸びを抑える要因となった。しかしながら、商品の単価上昇が進んでおり、売上そのものは改善傾向にある店舗も複数確認された。特に飲料や食品の単価上昇が売上を押し上げたケースが多く、来客数は横ばいながらも売上増に転じるという構図が見られる。
家電量販店では、前年同月比105%の売上を記録しており、特需や安定した需要に支えられた底堅い状況となっている。一方、乗用車販売においては在庫不足や生産遅れの影響が顕著で、販売量は前年比68%にとどまっており、業界として厳しい状況が続いている。また、リースや点検といった周辺サービスの需要も伸び悩んでおり、業界全体の停滞感が伺える。
ホテル業では、観光型・都市型ともに夏季の行楽シーズンに支えられて前年を上回る売上を記録したところが多く、特に都市型ホテルでは宿泊予約数が前年比5%増と堅調な推移を見せた。ただし、レストラン利用においては2%程度の減少が確認されており、消費者の節約志向がホテル内サービスに影響を与えている可能性がある。
外食業全般でも、来客数は前年並みで推移しているが、注文内容において節約傾向が見られ、生ビールの注文が7割程度に落ち込むなど、明らかに消費内容が変化している。特にファミリー層ではランチタイムの早い時間帯に集中する傾向が見られ、暑さへの対応が重要な経営課題となっている。
百貨店やスーパーなどの大型小売業では、商品の単価上昇により売上が維持されている一方で、販売点数や買上点数は前年を下回っている事例が多く、消費者の財布の紐が引き締まっている実情が浮き彫りになった。特に百貨店においては、高額品の動きに変化はあるが、衣料品の売上が前年比87%と大きく落ち込んでおり、ファッション業界全体に重い空気が漂っている。
一方、製造業においては明るい兆しも確認されており、輸送用機械器具製造業では「繁忙」と評価されるほどの稼働状況が続いている。食料品製造業においても、お盆期間が終了しても受注が落ちず、高水準を維持しているという報告があった。さらに、非鉄金属製造業では、液晶パネル関連企業の生産拡大が追い風となり、増設の検討も進んでいることから、関連産業への波及効果が期待される。
また、建設業では物価上昇や働き方改革への理解が進み、取引先との交渉がスムーズに進行している様子が報告されている。通信分野でもクラウドサービスやセキュリティ関連製品への関心が高まっており、一定の引き合いが続いていることから、情報通信業界では安定した業績を維持している企業も存在する。
雇用面においては、駅前の再開発が進んだことにより、モビリティハブとしての役割を果たすエリアで利用者数が前年比14%増と大きく伸びた。その影響もあり、職業紹介機関では採用者数が3か月前と比べて170%増加しており、第2新卒を中心に採用が活発化している。また、有効求人数は前年と変わらないものの、有効求職者数が中高年層を中心に増加傾向にあることから、有効求人倍率の低下が見られており、今後の雇用需給バランスに注目が集まっている。
とはいえ、楽観視できない点も多く存在している。特に、小規模事業所の廃業が増加しており、設備投資や人材採用に慎重な姿勢を見せる企業も少なくない。また、米国の関税政策の影響を受ける業種もあり、輸出関連や半導体・自動車関連の企業では新規求人の抑制が見られた。
総じて、中国地域では一部業種における好調さが全体を下支えする一方で、猛暑や物価高、輸出環境の不安定さといった外部要因が多くの業種に影響を与えており、今後の展開には慎重な見通しが求められる。企業の採用戦略においては、業界ごとの動向を的確に見極め、中長期的な人材確保のビジョンを描くことが重要となるだろう。
この記事の要点
- 観光・宿泊業ではインバウンド需要の回復により前年を上回る売上を記録
- 製造業では輸送用機械器具製造業など一部で高稼働が継続
- 乗用車販売は前年比68%と大幅減少、業界全体が厳しい状況
- 百貨店の婦人服部門の売上は前年比87%と苦戦
- 採用者数は前年比170%増、第2新卒を中心に採用が活発化
- 小規模事業所の廃業や求人減少により、有効求人倍率は減少傾向
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