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2025年9月27日

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令和7年8月の南関東求人申し込み件数が最低賃金引き上げの影響で減少傾向に転じる

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景気ウォッチャー調査(令和7年8月調査)― 南関東(先行き)―(内閣府)


この記事の概要

令和7年8月に実施された南関東地域の景気ウォッチャー調査によると、観光業や一部のサービス業ではインバウンドの回復やイベント需要の増加により前向きな動きが見られました。一方で、物価上昇や最低賃金の引き上げ、建設業界の人手不足など、多くの業種で不安が広がっており、採用や雇用の現場にも大きな影響を及ぼしています。企業の対応力が問われる局面を迎えています。


令和7年8月に実施された南関東地域の景気ウォッチャー調査では、地域経済に関するさまざまな声が集まり、現在の状況と今後の見通しが浮き彫りになりました。まず観光業や宿泊業を中心に、インバウンド需要の回復傾向が明確になりつつあります。コロナ禍からの脱却とともに、訪日外国人の数が着実に回復しており、特に都市部のホテルでは稼働率が向上し、売上回復に寄与しています。観光地周辺の土産物店や交通機関でも、外国人観光客の増加を背景に活気を取り戻している様子が見られ、これまで苦境に立たされていた関連業種にとっては希望の光が差し込んでいる状況です。加えて、国内旅行も秋の行楽シーズンに向けて堅調な予約状況を示しており、宿泊や飲食業では先行きに対して明るい見通しを持つ事業者が増加しています。

しかしその一方で、物価の高騰と最低賃金の引き上げが家計と企業経営の双方に重くのしかかっており、多くの業種ではその対応に追われています。小売業では、食品や日用品の価格上昇が続いており、消費者の買い控え傾向がより一層強まっています。特にコンビニやスーパーでは、以前と比較して買上点数が減少し、来店頻度もやや落ち込んでいるとの報告があります。これにより店舗売上は伸び悩み、特売や値引きキャンペーンなどの施策を展開しても、十分な集客には結びついていない現状があります。

製造業においても、状況は業種によって大きく異なります。半導体関連や輸出中心の業態では、米国の関税政策の影響により取引先からの発注量が減少傾向にあり、受注環境の先行きに対して不安が残っています。特に9月以降の受注動向については横ばいまたは減少が見込まれており、企業は生産体制の見直しやコスト削減策の検討を迫られています。一方、医療や介護関連の製品を扱う製造業では需要が安定しており、新たな取引先の獲得に成功した事例も報告されるなど、比較的堅調な業績を維持している分野もあります。

建設業界では、受注自体は一定の水準を保っているものの、人手不足が深刻化しており、特に現場作業員の確保が困難な状況が続いています。また、資材価格の高止まりも影響し、工期の遅れやコスト増が経営に与える打撃は小さくありません。こうした中、発注側企業との価格交渉も難航するケースが増えており、結果的に利益率の低下を招いているとの指摘が相次いでいます。さらに、住宅関連では消費者の購買意欲が弱まっており、新築住宅やマンションの販売が伸び悩んでいることも景況感を悪化させる要因となっています。

こうした経済環境の中で注目されるのが、労働市場の動向です。令和7年7月時点の職業安定所のデータでは、南関東地域の有効求人倍率は横ばいまたはわずかな上昇が見られたものの、企業からの求人申し込み件数については、最低賃金の引き上げを背景にやや減少傾向にあることが報告されています。特に中小企業では人件費の上昇が経営を圧迫しており、これまでと同じ水準での求人維持が困難になっている実態があります。求人広告や人材紹介サービスを利用する企業も、コスト対効果を慎重に見極めており、採用活動においてはより選別的な傾向が強まっているといえます。

派遣業界でも、企業の増産意欲が抑制されていることから、新たな派遣求人の依頼が伸び悩んでいる状況です。特に製造業系の派遣求人では、来期の生産計画に対する慎重な姿勢が採用需要の低下につながっており、派遣スタッフの稼働率にも影響が及んでいます。さらに、求人理由の多くが「欠員補充」に集中していることからも、景気拡大を背景とした積極的な採用ではなく、現状維持の範囲にとどまっている企業が多いことがうかがえます。

こうした背景から、企業の採用担当者に求められるのは、単に人手を補うという視点ではなく、いかにして限られた人材を戦力化できるかという視点に立った採用戦略の再構築です。待遇の改善だけではなく、柔軟な働き方の導入や職場環境の整備、キャリア形成支援の強化といった複合的な取り組みが、今後の採用競争において重要なカギを握ると考えられます。また、求職者側も生活コストの上昇を背景に、安定した雇用や福利厚生の充実度を重視する傾向が強まっており、企業にとっては人材確保に向けた新たな視点の導入が不可欠な局面に来ています。

このように、南関東地域の経済は一部で回復基調が見られるものの、全体としては物価高、人手不足、採用難という複合的な課題に直面しており、特に採用や人材確保に関しては業種を問わず慎重な姿勢が強まっています。企業には、現状を踏まえたうえで中長期的な人材戦略を立案し、安定的な雇用環境を提供する取り組みが強く求められています。

この記事の要点

  • 観光業ではインバウンド回復や秋の行楽需要により宿泊業などで売上増が見込まれている
  • 物価高騰と最低賃金の引き上げが企業と家計の双方に影響し小売業で消費低迷が顕著
  • 製造業では輸出関連で不透明感が残る一方で医療関連では堅調な動きが見られる
  • 建設業では人手不足と資材高騰が続き、利益率の低下が深刻化している
  • 住宅市場では購買意欲の低下が新築販売に影響を与えている
  • 求人申し込みは最低賃金引き上げの影響で減少傾向にあり採用は選別型へ移行中
  • 派遣業界では増産需要が鈍く求人依頼が伸び悩み稼働率低下の兆しがある
  • 採用活動では人材の定着と戦力化を見据えた戦略の見直しが求められている

令和7年度 日本全国の都道府県地域別最低賃金はこちら

⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ

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