2025年9月28日
労務・人事ニュース
インボイス制度導入で73.4%の企業が事務負担増を実感、対応の実態調査を公表(2025年6月23日~7月31日調査)
- 「夜勤なし」/正看護師/精神科/精神科病院/病院/ブランクのある方も歓迎
最終更新: 2025年9月27日 22:36
- 「夜勤なし」/正看護師/リハビリテーション科/内科/病院/残業ありません
最終更新: 2025年9月27日 22:36
- 22時半~4時半トラック運転手/コンビニ/免許取得支援 342
最終更新: 2025年9月27日 05:35
- 「高給与」/正看護師/訪問看護/車で通えます
最終更新: 2025年9月27日 22:36
中小企業におけるインボイス制度等に関する実態調査結果 2025年9月9日(日本・東京商工会議所)
この記事の概要
日本商工会議所が2025年9月9日に公表した「中小企業におけるインボイス制度等に関する実態調査」では、全国2,710社の中小企業を対象に、インボイス制度の対応状況や経理業務の実態、デジタルツールの活用などに関する詳細なデータが明らかになりました。特に、インボイス制度の導入による価格交渉、事務負担、制度への理解度に関する結果は、中小企業経営における課題を浮き彫りにしています。
2023年10月から開始されたインボイス制度は、中小企業にとって大きな変革をもたらしました。日本商工会議所が全国の会員企業2,710社を対象に実施した最新の調査によると、インボイス制度導入後の実務対応には大きなばらつきがある一方で、事業者の多くがコスト増加や事務負担の増大を実感していることが明らかになりました。特に、免税事業者から課税事業者へ転換した中小企業のうち、約69%が特例措置である「2割特例」を利用しており、そのうち9割以上がスムーズに申告できたと回答しています。
インボイス制度の登録状況に目を向けると、制度導入前に免税事業者だったBtoB中心の事業者では、実に78.6%がインボイス発行事業者として登録を行っており、対してBtoC中心の事業者では24.6%にとどまりました。これには、取引先からの要請の有無や、事務負担・税負担への懸念が背景にあることが示唆されています。インボイス登録を行っていない免税事業者の多くは、取引先からの要請がなかったことを主な理由に挙げており、特にBtoC事業者の約73%は今後も登録の予定がないと回答しました。
一方で、インボイス登録を契機に価格交渉を行った事業者のうち、実に76.9%が値上げに成功しているというデータも注目されます。値上げ幅は「消費税相当程度」が最多でしたが、「消費税相当を超える値上げ」を実現したケースも存在しました。しかし、価格交渉を行わなかった理由としては、交渉提案がなかったことや、取引の見直しリスクを懸念する声が多く挙がっており、今後の取引慣行の見直しや価格交渉支援の必要性が浮き彫りになっています。
本則課税事業者のうち、免税事業者との取引を継続している企業は43.7%にのぼり、その中でも57.6%は年間仕入額が100万円以上と答えています。免税事業者との取引を見直すか否かについては、42.3%が価格や仕入先の見直しを検討しており、一方で「代替となる取引先がいない」「品質や信頼関係を重視している」などの理由で取引継続を選択する企業も少なくありません。また、政府の導入した仕入税額控除の経過措置(2026年まで8割控除)は、企業にとって取引継続の判断材料となっている実態も見受けられます。
少額特例に関しては、27.2%の事業者が適用していると回答しており、帳簿保存のみで仕入税額控除が可能となることから、一定の事務負担軽減効果が認められています。ただし、「物価高騰で1万円未満の取引が減ってきた」「特例の終了で業務が煩雑になる」といった懸念もあり、制度の見直しを求める声もあがっています。
さらに、インボイス制度対応に伴うコスト増加を感じている事業者は45.8%、事務負担の増加を感じている事業者は73.4%にのぼり、多くの中小企業が既存システムの改修や人件費の増加といった負担を強いられていることが明らかになりました。事務負担の具体的な中身としては、仕入先の登録状況の確認、インボイス番号の確認、税額の検証などが挙げられており、特に仕入先との対応に時間と労力がかかっている現実が浮き彫りとなっています。
調査に寄せられた自由記述には、制度の複雑さに対する戸惑いや、免税事業者との関係悪化を懸念する声も見られました。中には「インボイスの記載不備で検索に手間がかかる」「制度内容を全従業員に理解してもらうのは困難」といった現場の苦労も報告されています。一方で、商工会議所による支援が申告業務の円滑化に寄与しているという前向きな声も一定数あり、商工会議所の役割の重要性も改めて認識されました。
調査後半では、バックオフィス業務の実態についても分析が行われており、売上高1,000万円以下の事業者の約8割が、経理事務を1人で担当しているという実情が明らかになっています。また、固定資産台帳の作成や帳簿の作成頻度、試算表の作成状況についても、企業規模が小さいほど実施率が低く、経理業務の専門性や体制整備が進んでいないことが浮き彫りとなりました。
経理業務システムの導入状況を見ても、売上1,000万円以下の企業の約50%が「会計・帳簿作成システム」を導入している一方で、「受発注管理システム」や「電子契約システム」の導入率は極めて低く、全体の49.8%は「いずれのシステムも導入していない」と回答しています。これにより、業務効率化やペーパーレス化が十分に進んでいない現状も明らかとなりました。
インボイス対応におけるツールの活用状況についても、規模が小さい事業者ほど対応が進んでおらず、売上1,000万円以下の企業では86.9%が「ツールを活用していない」と回答。ペーパーレス化に関しても、同規模の企業では56.7%が「全くペーパーレス化していない」との結果が出ており、デジタル化の遅れが事務負担増加の一因となっていることは否めません。
この調査結果は、制度対応が企業規模によって大きく左右される実態を明らかにするとともに、現場における課題の深刻さを物語っています。制度の趣旨として「適正な課税」を掲げつつも、現場では対応に追われる中小企業の姿があり、その声に寄り添った支援策の必要性がより一層高まっています。今後も商工会議所を中心とした相談体制や制度運用の柔軟性が求められるといえるでしょう。
この記事の要点
- 全国2,710社の中小企業を対象にインボイス制度の実態調査を実施
- BtoB中心の免税事業者の78.6%がインボイス発行事業者として登録
- インボイス登録後、76.9%が価格交渉により値上げを実現
- 登録事業者の68.6%が「2割特例」を活用し、92%がスムーズに申告
- 本則課税事業者の43.7%が免税事業者との取引を継続
- 少額特例を活用する事業者は27.2%で、事務負担軽減効果も
- インボイス対応によるコスト増加を45.8%、事務負担増加を73.4%が実感
- 売上1,000万円以下の事業者の約8割が1人で経理を担当
- デジタルツール未導入企業は小規模企業ほど多く、業務効率化に課題
⇒ 詳しくは日本商工会議所のWEBサイトへ