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2025年10月3日

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令和7年夏季賞与 民間企業342社の夏季一時金、平均946,469円で過去最高を記録

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令和7年 民間主要企業夏季一時金妥結状況を公表します 平均妥結額946,469円で、過去最高の額(厚労省)


この記事の概要

厚生労働省が令和7年の民間主要企業における夏季一時金の妥結状況を発表し、342社の平均妥結額は946,469円で、過去最高を記録しました。前年比で5.31%の増加となっており、多くの業種で支給額が上昇しています。特に自動車や電気機器、化学、金融業で大きな伸びが見られました。


厚生労働省は令和7年9月12日、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上で労働組合のある民間企業342社を対象に実施した、夏季一時金の妥結状況を公表しました。この調査によると、加重平均による妥結額は946,469円となり、前年の898,754円から47,715円増加、前年比5.31%の上昇となりました。

同時に、労働組合側の平均要求額も前年の906,042円から6.34%増加し、997,430円に達しました。物価高や人手不足、実質賃金の回復を目指す流れが、要求水準を押し上げたものと見られます。

産業別に見ると、自動車業界が最も高い1,109,305円を記録し、前年から6.79%増加しました。輸出増やEV関連の投資が進み、業績の回復基調が反映されています。電気機器産業は1,050,446円で、前年から9.97%の大幅増。化学産業も1,045,485円で、6.88%増加しています。これらの業種では、製品需要の増加や価格転嫁の進展などが寄与しているとみられます。

電気・ガス産業では887,456円を記録し、前年から7.41%の増加となりました。インフラ業界らしく、安定した支給水準が継続されています。一方、機械産業は920,861円で、前年から1.47%の増加にとどまりましたが、堅調な水準を維持しています。

卸売・小売業は663,591円となり、前年の579,931円から14.43%の大幅増。流通業における人手不足への対応や利益改善が要因と考えられます。

そして、今回の大きな特徴の一つが金融業の回復です。今年の妥結額は762,211円で、前年の687,024円から10.94%の増加となり、賞与水準が大きく改善されたことが明らかになりました。前回の誤った減少傾向の記述とは異なり、今年は大幅な増額が行われていることが事実です。

一方、精密機器産業では738,200円と、前年の768,713円から3.97%減少し、研究開発投資やグローバル市場での競争激化が影響していると見られます。

今回の調査における平均年齢は40.1歳で、前年と大きな変動はありません。すべての数値は組合員数に応じた加重平均で算出されており、より実態に即した指標といえます。

このように、夏季一時金の妥結状況は、労働市場や業績、企業戦略を映し出す鏡となっており、今後の冬季賞与や春闘への影響も予想されます。特に採用担当者にとっては、他社との待遇比較や人材確保戦略の参考となる貴重なデータとなるでしょう。

参考:第1表 令和7年民間主要企業夏季一時金妥結状況

この記事の要点

  • 夏季一時金の平均妥結額は946,469円で過去最高
  • 前年比で47,715円(5.31%)の増加
  • 平均要求額は997,430円で6.34%の上昇
  • 自動車業界は1,109,305円で6.79%の増加
  • 電気機器は1,050,446円で9.97%の増加
  • 化学業界は1,045,485円で6.88%の増加
  • 機械産業は920,861円で1.47%増加
  • 卸売・小売業は663,591円で14.43%の増加
  • 金融業は762,211円で前年比10.94%の増加
  • 電気・ガスは887,456円で7.41%の増加
  • 精密機器は738,200円で3.97%減少

前年より47,715円増の946,469円、夏季一時金が大幅アップで人材確保に影響

この調査は、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合を有する企業342社を対象としたもので、実際に妥結額が明らかになった企業のデータをもとに加重平均で算出されています。その結果、全体の平均妥結額は946,469円となり、前年の898,754円を47,715円上回るかたちで5.31%の増加となりました。

注目すべき点は、前年と同じ企業間で比較した場合の伸び率が6.34%に達していることです。これは、単なる企業の増減による平均値の変動ではなく、既存企業が支給水準を底上げしている実態を示しており、企業全体として労働者への待遇改善に前向きな姿勢が強まっていることを物語っています。

同時に公表された平均要求額は997,430円となっており、前年よりも59,508円、率にして6.34%の増加となりました。このことからも、インフレ傾向や物価上昇を背景に、労働者側が実質賃金の回復を強く求める傾向がより顕著になっていることがうかがえます。

この夏季一時金の増額傾向は、ここ数年の妥結額の推移と比較しても顕著です。令和元年には892,003円、令和2年は919,838円でしたが、令和3年には808,836円と一時的に大きく落ち込みました。その後、令和4年には869,956円、令和5年には869,113円と徐々に回復を見せ、令和6年には937,922円となり、今回の946,469円で過去最高額を記録したことになります。とくに令和3年からの2年間で一時金の平均はおよそ14万円近く上昇しており、急速な景気回復や業績改善が背景にあると考えられます。

また、この調査は、単に金額の比較だけでなく、企業の構造変化や業界全体の経済的動向を映し出す意味でも重要です。たとえば、令和3年に見られた大幅な落ち込みは、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞と一致しており、その後の回復傾向は各業界が事業の立て直しとともに従業員への報酬水準を改善している実情を示しています。

今回の結果は、企業の採用担当者にとっても極めて重要な指標となります。優秀な人材を獲得するうえで、報酬制度の競争力は欠かせない要素であり、他社の支給状況を把握することは自社の人事戦略を見直すための基礎資料となります。特に、今後の春季労使交渉や冬季賞与の設定にあたっては、この夏の一時金の動向が一定の影響を与える可能性があります。

全体として、物価高と人材確保を背景に、企業がより積極的な報酬改善に乗り出している姿勢が明らかとなった今回の集計結果は、日本経済にとってもポジティブな兆候といえるでしょう。業種や企業規模による差はあるものの、労使間の協議が実質的な賃金改善に結びついていることは、労働市場の健全化にもつながる重要な動きです。

参考:第2表 夏季一時金妥結状況の推移

令和7年の賞与決定方式、342社中219社が年間決定を採用し割合は64.0%に

令和7年9月に厚生労働省が発表した集計によって、賞与に関する企業の意思決定のあり方に変化が生じていることが浮き彫りとなりました。とくに注目すべきは、夏と冬の賞与をまとめて決定する「年間決定方式」を採用する企業の割合が大きく減少した点です。今年の調査対象となったのは、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上で労働組合を有する342社であり、そのうち年間決定方式を採用して妥結に至った企業は219社でした。この数値は全体の64.0%を占めますが、前年における同方式の採用率は81.0%であったため、わずか1年で17ポイントもの大幅な減少となっています。

この年間決定方式とは、春闘などの労使交渉の場で、その年の夏季一時金と冬季一時金の両方を一括して合意する形式であり、企業と労働者双方にとって予見可能性の高い方式として長年採用されてきました。しかし、今回の結果から見えてくるのは、企業側が賞与の決定を年単位から分割方式へと移行しつつある傾向です。特に、業績連動型の報酬制度を取り入れる企業が増えている現状を反映しているものと考えられます。

また、年間決定を行った219社のうち、実際に夏冬型(夏季と冬季を春に同時決定)として合意を行った企業は214社で、年間決定企業全体のうち97.7%に達しました。一方で、冬夏型(秋に冬と翌年夏の一時金を同時決定)としての合意はわずか5社で、全体の2.3%にとどまりました。この結果からも、年間での報酬決定に慎重な姿勢を見せる企業が増加していることが分かります。

加えて、妥結時期についての調査結果によれば、令和7年の夏季一時金は例年通り春から初夏にかけての交渉が中心となっており、3月末までに妥結に至った企業が203社、4月末までにはさらに61社が加わり、264社が妥結済みとなりました。5月末までにはさらに34社、6月以降には17社が妥結に至っており、最終的に妥結企業数は307社となりました。

このように賞与の決定時期や決定方式に変化が生じている背景には、経済環境の不透明さや業績変動リスクへの対応があると考えられます。企業によっては、通年の利益見通しが立ちにくく、年初時点での賞与の一括決定に慎重になる傾向が強まっています。特に、世界的な経済不安やサプライチェーンの混乱などが業績に与える影響が大きい業種では、このような傾向がより顕著です。

こうした変化は、企業の人事戦略や労働条件にも波及する可能性があります。採用活動においては、賞与の安定性や支給タイミングが求職者にとって重要な判断材料となるため、年間決定を避ける企業が増えることで、候補者の関心を集めるための情報提供の工夫がより求められることになります。また、労働組合側にとっても、年2回の交渉が必要になることから、交渉力の配分や交渉戦略の再検討が不可欠になるでしょう。

結果として、従来型の年間決定方式が大きく見直されつつある現在の流れは、企業の報酬制度全体に対する考え方がより柔軟かつ変動型へとシフトしていることの表れといえます。この動向を踏まえた労使間の合意形成の在り方や、報酬制度設計の再構築が、今後ますます重要なテーマとして浮上してくることが予想されます。

参考:第3表 妥結時期別企業数 第4表 一時金の年間決定実施状況の推移

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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