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2025年10月15日

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34年間で1200回の生物調査、全国129ダムで明らかになった自然の変化とは

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ダム湖が生き物の“新しいすみか”に ~河川水辺の国勢調査34年間の成果を分析~(国交省)


この記事の概要

国土交通省は、平成2年度から実施している「河川水辺の国勢調査」のうち、ダム湖に関する34年間の調査結果を初めて詳細に分析し、その成果を公表しました。調査により、ダム湖が新たな生き物の生息地として機能している一方、外来生物の拡大や水質への影響も明らかになりました。


国土交通省が長年にわたり進めてきた「河川水辺の国勢調査」は、1990年(平成2年度)から開始され、河川やダムにおける生物多様性の実態を把握するために継続的に実施されてきました。今回、令和5年度の最新結果と過去34年間のデータを統合・分析した結果、ダム湖が生き物たちにとって新たなすみかとなっていることが明確に示されました。

これまでに国や水資源機構が管理する129のダムを対象として、約1200回にわたる調査が行われ、生物の生息状況が詳細に記録されてきました。最新の調査では、両生類では約8割、植物や鳥類、爬虫類、哺乳類、陸上昆虫類では約4割の種が確認され、ダム湖周辺が多様な生物の生息地として機能している実態が浮かび上がっています。

また、猛禽類であるミサゴやハヤブサの活動も目立っており、ダム湖の水面が狩り場として利用されているほか、営巣するケースも増えています。特にミサゴは魚を主食とすることから、ダム湖の魚類資源を活用し、近年では繁殖の場としての利用が拡大。調査対象の13ダムのうち12ダムで確認されました。一方で、ハヤブサも58%のダムで確認され、その生息範囲が広がっていることが報告されています。

水鳥についても注目すべき傾向が見られました。琵琶湖のわずか0.5%に相当する湛水面積のダム湖に、琵琶湖に越冬する水鳥の約7割に匹敵する数の個体が確認され、カモ類やカイツブリ類のような水鳥がダム湖を重要な生息地として利用していることが明らかになりました。平成28年度以降の調査では、約48,000羽もの水鳥がダム湖で確認されており、ダムの整備が水鳥の生息に貢献しているといえます。

また、魚類ではアユやサクラマスといった回遊魚がダム湖を利用している様子も確認されました。これは、ダム湖が天然湖のような役割を果たし、回遊魚にとって重要な生息場所となっていることを示しています。特に、灰塚ダムでは放流されたアユがダム湖で成長し、自然に流入河川を遡上する様子が確認されており、自然な再生産が進んでいる例として注目されています。

しかし、調査によって懸念すべき課題も浮かび上がりました。特定外来生物である「コクチバス」が確認されたダムの数と個体数が年々増加しており、生態系への影響が拡大しています。この魚は他の魚類や底生動物を捕食するため、在来種の生息に悪影響を及ぼすことが問題視されています。コクチバス以外にも、全国のダムで多くの国外外来魚が確認されており、今後の対策が求められます。

さらに、水質や景観に影響を及ぼす植物プランクトンについても調査が行われています。アオコの原因となる種やカビ臭を生み出す種は、西日本を中心に多数確認されており、全国的には出現傾向は横ばいまたはやや減少とされていますが、依然として注意が必要です。

また、ダム下流の水環境にも影響が見られており、水生昆虫の種数がダム上流に比べて少ない傾向があります。これは、ダムによって水流や川底環境が変化している可能性を示しており、支川の合流点を経ることで種数が回復する事例も確認されました。

加えて、生息場の喪失に対する代償措置として整備された「ビオトープ」も機能していることが確認されました。全国25ダムで整備されたこれらの湿地や池では、水生昆虫をはじめとする多様な生き物が観察され、生物多様性の確保に一定の成果を上げています。

調査は現在も継続されており、今後も経年的な分析を通じて、ダムおよび河川のよりよい環境管理が期待されています。自然の変化を科学的に把握し、持続可能な環境保全に活かすことは、今後の社会にとって重要な課題です。河川環境を取り巻く多様な生物の実態を正確に捉えることは、自然との共生を目指す上で不可欠な取り組みといえるでしょう。

この記事の要点

  • 河川水辺の国勢調査は1990年から34年間継続実施されている
  • 調査対象は129ダムで、約1200回の生物調査が行われた
  • ミサゴやハヤブサなどの猛禽類がダムを狩り場・営巣地として利用している
  • 琵琶湖の7割に相当する水鳥がダム湖に確認された
  • アユやサクラマスなど回遊魚がダム湖を利用している事例も確認された
  • 外来種コクチバスの分布と個体数が増加傾向にある
  • ビオトープ整備により、生物多様性保全の代償措置が機能している

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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