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2025年10月29日

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令和7年8月の東京都有効求人倍率1.67倍、求人鈍化と採用競争の新局面

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一般職業紹介状況(令和7年8月分)(東京労働局)


この記事の概要

令和7年8月、東京労働局が公表した雇用情勢によると、東京都の有効求人倍率(季節調整値)は1.67倍となり、前月より0.01ポイント低下しました。求人が求職を上回る状況が続いていますが、求人・求職の両面で変化が見られ、特に物価上昇が雇用意欲や転職行動に影響を与えています。新規求人数は108,825人で前年同月比3.4%減となり、就職件数は5.2%減少しました。企業は採用競争が続く中、戦略的かつ柔軟な採用活動が求められています。


令和7年8月の東京都の有効求人倍率(季節調整値)は1.67倍となり、前月から0.01ポイント低下しました。これは依然として全国平均の1.20倍を大きく上回る水準であり、首都圏における求人の多さを示しています。求人が求職を上回る「売り手市場」が続く中でも、求人意欲の勢いにはやや陰りが見え始めています。有効求人数(原数値)は348,016人で前年同月比3.3%減、有効求職者数は209,723人で1.8%増と、求人の減少と求職の増加が同時に進行しています。これにより、労働市場全体が緩やかにバランスを取り戻しつつあるといえます。

東京労働局は、「雇用情勢は求人が求職を上回って推移しているが、物価上昇などが雇用に与える影響に留意する必要がある」としています。これは、企業が人件費やコスト上昇に対応しながら採用活動を続けている一方で、求職者も生活費の上昇を背景により高い待遇を求めて転職市場に参入していることを意味しています。結果として、求人と求職の意識のズレが大きくなり、採用の難易度が上昇しているのが現状です。

新規求人倍率(季節調整値)は3.30倍で、前月より0.19ポイント低下しました。新規求人数は108,825人で前年同月比3.4%減、新規求職者数は31,696人で前年同月比4.8%増となっています。新規求人が2か月ぶりに前年を下回った一方で、新規求職が6か月連続で増加しており、企業の求人活動が鈍化する一方で求職者の動きが活発化していることが分かります。

産業別に見ると、建設業(16.5%増)や運輸業・郵便業(10.4%増)が増加した一方、製造業(15.4%減)、サービス業(9.1%減)、生活関連サービス業・娯楽業(5.9%減)など、五つの主要産業で減少しました。特に製造業の落ち込みは大きく、資材価格の上昇や設備投資の抑制が影響しているとみられます。また、宿泊業・飲食サービス業は12,473人と微減にとどまったものの、コスト上昇の影響から中小事業者の採用抑制傾向が続いています。

一方、情報通信業は8,457人で前年比2.2%増と堅調に推移しており、デジタル関連職種の需要が依然として高い水準にあります。特にAI・クラウド関連、情報セキュリティ分野での人材需要は拡大を続けていますが、企業間競争が激化しており、採用担当者にとっては待遇改善だけでなく、企業の魅力を明確に伝えるブランディングが必要となっています。

正社員有効求人倍率は1.14倍で、前年同月より0.03ポイント低下しました。正社員の有効求人数は157,682人で前年同月比1.0%減、正社員の新規求人数は50,054人で3.1%減でした。これに対して正社員の就職件数は1,759件で前年同月比11.2%減と大きく落ち込みました。正社員採用の意欲が維持されている一方で、マッチングがうまく進んでいないことが明らかです。

就職件数全体では5,549件で前年同月比5.2%減、求人充足数は7,768件で5.6%減となりました。一般職の就職件数は2,526件(前年同月比10.6%減)、パートは3,023件(前年同月比0.1%減)でした。企業が非正規人材の活用を継続する一方で、フルタイム人材の確保に苦戦している状況が読み取れます。

職業別では、保安職業従事者(14.10倍)、建設・土木作業従事者(9.11倍)、建築・土木・測量技術者(6.64倍)などが高倍率となり、慢性的な人手不足が続いています。逆に、有効求人倍率の低い職業では、一般事務従事者(0.16倍)、事務用機器操作員(0.37倍)などのデスクワーク職種が中心であり、ホワイトカラー職では求職者過多の傾向が顕著です。つまり、東京都の労働市場は「現場職不足・事務職過剰」という二極化が進行しています。

採用担当者にとって、この1.67倍という数字は単なる統計値ではなく、採用活動の「方向性」を見直すべき警鐘といえます。求人倍率が高いからといって採用が容易とは限らず、むしろ求職者のニーズに合致した情報発信や柔軟な働き方の提示が求められています。特に都市部では、働く人の価値観が多様化しており、「給与の高さ」よりも「働きやすさ」「成長実感」「社会貢献性」を重視する傾向が強まっています。

企業は採用活動において、まず求人票の内容を再構築することが重要です。従来の形式的な募集要項ではなく、「どんな職場で」「どのように成長できるのか」を具体的に示すことが応募動機を高めます。また、求職者が重視するワークライフバランスやキャリア支援制度について明確に発信することで、企業の信頼性を高めることができます。

さらに、デジタル採用戦略の強化も不可欠です。オンライン説明会や動画求人、SNSを活用した採用広報など、応募者が企業文化を肌で感じ取れる仕組みを導入することで、単なる求人情報以上の「共感」を生み出すことが可能です。

物価上昇と人手不足が続く現在、企業に求められるのは「採る採用」から「選ばれる採用」への転換です。働く人々の価値観が変化する中で、企業の採用担当者は数字の裏にある社会動向を読み解き、自社の魅力を再定義することが最も重要な課題といえます。

この記事の要点

  • 令和7年8月の東京都有効求人倍率は1.67倍で前月比0.01ポイント低下
  • 有効求人数は348,016人で前年同月比3.3%減、有効求職者数は1.8%増
  • 新規求人倍率は3.30倍で求人鈍化傾向
  • 製造業・サービス業で求人減少、建設業・運輸業で増加
  • 正社員有効求人倍率は1.14倍でマッチング難が続く
  • 採用戦略は「量」よりも「質」、柔軟な働き方と情報発信が鍵

⇒ 詳しくは東京労働局のWEBサイトへ

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