2025年10月30日
労務・人事ニュース
電気・ガス業が49万9,538円で最高、給与上昇率4.6%を記録(毎月勤労統計調査 令和7年8月分結果速報)
毎月勤労統計調査 令和7年8月分結果速報 月間現金給与額(厚労省)
この記事の概要
厚生労働省が公表した令和7年8月の毎月勤労統計調査によると、事業所規模5人以上の全産業における1人当たりの月間現金給与総額は30万517円となり、前年同月比で1.5%の増加を記録した。定期的な給与の上昇が続く一方で、賞与など特別給与は減少しており、実質賃金の伸び悩みが依然として課題となっている。
令和7年8月の毎月勤労統計調査速報によると、全産業平均の月間現金給与総額は30万517円となり、前年同月比で1.5%の増加を示した。賃金の上昇は44か月連続で続いており、企業の継続的な賃上げが反映されている。特に「きまって支給する給与」は28万7,878円で前年より2.0%増加しており、定期昇給や基本給の見直しが進んでいることがうかがえる。また、所定内給与も26万8,202円で2.1%増となり、労働時間に応じた給与支給が堅調に推移している。
産業別にみると、最も給与水準が高かったのは電気・ガス業で49万9,538円と前年より4.6%増加した。次いで情報通信業が44万3,951円(前年同月比5.5%増)となり、ITや通信関連分野での人材需要の高まりが影響しているとみられる。金融・保険業も43万226円(4.9%増)と高水準を維持しており、ホワイトカラー系職種を中心に給与上昇が顕著となった。一方で、卸売・小売業は26万5,442円で0.8%減少、運輸・郵便業も32万4,693円で3.2%の減少となり、物価上昇や人件費増加の影響が業績に重くのしかかっている。
建設業の給与は41万3,840円(0.5%増)とわずかながら上昇を維持したが、製造業は35万1,185円で3.3%増と堅調な伸びを見せた。特に製造分野では自動車・電機・精密機器など輸出関連産業での生産回復が続いており、時間外労働の増加も給与増加に寄与したとみられる。
一方、「特別に支払われた給与」は1万2,639円で前年から10.5%減少した。企業によっては賞与や一時金の支給を抑える動きが見られ、これが全体の給与増加を抑制している。特別給与の減少は特に卸売・小売業(前年比45.8%減)や運輸・郵便業(13.6%減)で顕著だった。情報通信業では前年に比べ112.4%の増加を示しており、好調な業績を反映した賞与の支給が影響している。
また、所定外給与(時間外労働手当)は1万9,676円で前年同月比1.3%増加し、一定の労働需要の強さが見て取れる。製造業や建設業では時間外給与の伸びがそれぞれ3.7%、0.1%とわずかだがプラスとなり、業務量の増加を示唆している。一方で卸売・小売業では2.5%増、運輸業ではマイナス3.3%とばらつきが見られた。
総じて、月間現金給与額は名目ベースで堅調な上昇を維持しているが、特別給与の減少と物価高の影響により、実質的な賃金改善の実感には乏しい状況である。特に中小企業や消費関連産業では、賃上げ余力に限界がある一方で、人手不足への対応が急務となっている。企業の採用担当者にとっては、給与水準を見直し、競合との差別化を図ることが人材確保のカギとなりそうだ。
この記事の要点
- 全産業の月間現金給与総額は30万517円で前年より1.5%増
- きまって支給する給与は28万7,878円で2.0%増
- 特別給与は10.5%減少し、一時金支給が抑制傾向
- 電気・ガス業が49万9,538円で最高水準、情報通信業も堅調
- 卸売・小売業と運輸業は減少傾向を示す
- 名目賃金は上昇継続も実質賃金の改善は限定的
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ


