2025年10月30日
労務・人事ニュース
パート比率31.1%、非正規雇用が全体の3割超に定着(毎月勤労統計調査 令和7年8月分結果速報)
毎月勤労統計調査 令和7年8月分結果速報 常用雇用及び労働異動率(厚労省)
この記事の概要
厚生労働省が公表した令和7年8月の毎月勤労統計調査によると、事業所規模5人以上の全産業における常用労働者数は5176.9万人で、前年同月比1.4%増となった。パートタイム労働者の比率は31.1%で引き続き高水準を維持しており、雇用の安定化と非正規雇用の拡大が同時に進行している。入職率は1.53%、離職率は1.63%で、労働市場は緩やかな人の入れ替わりが続いている。
令和7年8月分の毎月勤労統計調査結果速報によると、全国の常用雇用者数は5176.9万人に達し、前年同月比で1.4%増加した。雇用環境は堅調に推移しており、景気回復や求人需要の高まりを背景に、企業の人材確保の動きが続いている。一方で、労働力人口の減少や人手不足の影響により、業種間での採用状況にはばらつきが見られた。
産業別にみると、製造業の常用労働者数は767.9万人で前年より0.1%増加し、堅調な雇用を維持している。建設業は260万人で2.3%増と比較的高い伸びを示し、インフラ投資や都市再開発などの需要増が雇用拡大を支えている。卸売・小売業は940.8万人で0.8%増、金融・保険業は134.2万人で0.8%増と緩やかな上昇を維持した。一方、運輸業・郵便業は295.4万人で0.1%減少しており、燃料高やドライバー不足の影響が雇用に影を落としている。
注目されるのはパートタイム労働者の比率で、全産業平均で31.12%と前年より高水準を維持している。特に卸売・小売業では44.19%、運輸業・郵便業では20.36%と非正規雇用の割合が高く、柔軟な働き方を求める人材が増加している傾向がうかがえる。反対に、電気・ガス業では3.7%、建設業では5.7%と低い水準を維持しており、これらの業種では正社員中心の雇用形態が依然として主流である。
入職率は全産業平均で1.53%と前年より0.03ポイント上昇し、労働移動がやや活発化している。一方で離職率は1.63%で前年から0.09ポイント低下しており、雇用の安定化が進んでいるとみられる。入職率が離職率をやや下回る状況は続いているものの、労働市場全体では人の入れ替わりが緩やかに推移している。
業種別では、建設業の入職率が1.07%、離職率が1.13%でほぼ均衡しており、現場作業員などの採用と離職が一定の範囲で続いている。製造業の入職率は0.84%、離職率は0.91%とともに低水準で、安定した雇用を維持している。卸売・小売業では入職率1.55%、離職率1.60%でやや離職が多く、非正規雇用の入れ替わりが反映されている。情報通信業では入職率0.97%、離職率1.44%と離職超過で、人材の流動性が高い分野であることが示されている。
また、パートタイム比率が高い産業では、短期契約やシフト勤務が多く、入職と離職の循環が活発に行われている。特に卸売・小売業や運輸業では、人手不足を背景に採用活動が継続的に行われているが、労働条件や待遇面でのミスマッチが原因で早期離職も多い。これに対し、電気・ガス業や金融業などの安定業種では、長期雇用志向が強く離職率が低い傾向にある。
全体として、令和7年8月の雇用動向は緩やかな拡大基調を保ちながらも、労働市場の構造変化を反映している。パートタイム労働者比率の高止まりや、業種間での雇用の偏りが続く中で、企業には柔軟かつ持続可能な雇用戦略が求められている。特に採用担当者にとっては、労働移動が活発な分野での人材定着施策や、非正規社員のキャリアパス構築が重要な課題となっている。
この記事の要点
- 常用労働者数は5176.9万人で前年同月比1.4%増
- パートタイム労働者比率は31.1%で高水準を維持
- 入職率1.53%、離職率1.63%で緩やかな人の入れ替わり
- 製造業767.9万人、建設業260万人、卸売・小売業940.8万人
- 卸売・小売業のパート比率44.19%、非正規雇用の拡大傾向
- 情報通信業は離職率1.44%で人材流動性が高い
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ


