2025年10月30日
労務・人事ニュース
令和7年8月のパート時給1,418円に上昇、前年同月比3.7%増で過去最高更新
毎月勤労統計調査 令和7年8月分結果速報 時系列第7表 時間当たり給与(パートタイム労働者)(厚労省)
この記事の概要
厚生労働省が公表した毎月勤労統計調査の令和7年8月分速報によると、パートタイム労働者の時間当たり給与は前年同月比で上昇を続けていることが明らかになった。事業所規模5人以上を対象とした調査では、令和7年8月の時間当たり給与が1,418円となり、前年同月比3.7%増という堅調な伸びを示している。物価高や人手不足を背景に、賃金の上昇傾向が続いており、企業の人材確保や採用戦略にも影響を与える内容となっている。
厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査(令和7年8月分結果速報)」によると、パートタイム労働者の時間当たり給与が前年を上回る水準で推移している。今回の調査は、事業所規模5人以上を対象として実施されたものであり、労働市場における賃金動向を把握する上で重要な資料となっている。調査結果では、令和7年8月のパートタイム労働者の時間当たり給与は1,418円と報告され、前年同月比3.7%の増加が確認された。これは前年の同月に記録された1,367円からの上昇であり、継続的な賃上げの傾向が見られる。
過去の推移を振り返ると、令和3年の平均時間当たり給与は1,223円で、翌令和4年には1,242円、令和5年には1,279円へと上昇している。令和6年に入ってからも上昇基調は継続し、7月には1,339円、8月には1,362円、12月には1,378円と増加を続けた。その後、令和7年に入ってからも安定的に上昇しており、1月は1,395円、3月には1,378円、6月には1,385円と推移し、今回の8月に1,413円を記録している。こうしたデータから、賃金上昇が一時的な動きではなく、中長期的なトレンドとして定着しつつあることが読み取れる。
賃金上昇の背景には、慢性的な人手不足や最低賃金の引き上げが影響していると考えられる。特にサービス業や小売業などの労働集約型産業では、パートタイム労働者への依存度が高く、人材確保のために賃上げ競争が進んでいる。加えて、物価上昇に対応するための実質所得の維持を目的として、企業側も賃金改善に取り組む動きが広がっている。実際、令和7年の前年同月比増加率3.7%という数値は、直近数年間の平均を上回る伸びであり、賃上げ基調の強さを裏付けている。
このような動向は、企業の採用戦略にも大きな影響を与える。労働市場の逼迫により、求職者がより条件の良い職場を選びやすくなっているため、時給や待遇の改善だけでなく、柔軟な勤務体系や福利厚生の充実が求められるようになっている。特に中小企業にとっては、人件費負担の増加が経営課題となる一方で、優秀な人材の確保には避けて通れない課題でもある。そのため、給与だけでなく、働きやすい環境づくりやキャリア支援など、総合的な人材戦略が今後さらに重要になるだろう。
一方で、賃金上昇が進む中でも、労働生産性とのバランスを保つことが企業経営において大きな鍵を握る。賃上げによってコストが増加する場合、業務効率化やデジタル化による生産性向上が不可欠となる。政府としても、こうした企業の取り組みを支援するための補助金や助成制度を継続的に提供しており、特に中小企業向けの賃上げ支援策が注目されている。
今回の統計結果は、賃金上昇の波が全国的に広がっていることを示すものであり、今後の経済全体にも影響を及ぼす可能性がある。家計の可処分所得が増えることで消費活動が活発化すれば、内需拡大につながる一方、企業側ではコスト増による利益圧迫の懸念も残る。今後は、こうした賃金動向を踏まえた上で、持続可能な成長モデルを構築することが求められる。
この記事の要点
- 令和7年8月のパートタイム労働者の時間当たり給与は1,413円
- 前年同月比で3.7%の増加を記録
- 令和3年以降、継続的な賃金上昇が続く
- 最低賃金引き上げや人手不足が主な背景
- 採用戦略には賃金以外の要素強化も必要
- 中小企業では人件費増加への対応が課題
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ


