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2025年11月2日

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令和7年9月の九州経済、物価高と最低賃金上昇で採用活動に陰り

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景気ウォッチャー調査(令和7年9月調査)― 九州(先行き)―(内閣府)


この記事の概要

令和7年9月の景気ウォッチャー調査によると、九州地方の景気は「横ばいからやや悪化」の傾向を示しており、物価高と最低賃金引上げが企業経営と雇用環境に影響を与えていることが明らかになった。観光業や宿泊業では秋の行楽需要やインバウンドの回復が支えとなっているものの、小売業や飲食業では物価上昇による買い控えが続き、消費の回復に勢いが見られない。有効求人倍率は高水準を維持しているが、人件費の増加により採用を控える企業が増加しており、特に中小企業では求人件数の減少傾向がみられる。


令和7年9月の九州経済は、全国的な物価上昇と賃金動向の変化を背景に、業種ごとに異なる動きを見せている。商店街や小売業では、長引く物価高により生活必需品の価格上昇が続き、消費者の節約志向が強まっている。特に食品や日用品の高騰が家計を圧迫しており、店頭では「必要なものだけを買う」という傾向が顕著になっている。スーパーでは、物価高対策への期待はあるものの、消費マインドが改善する兆しはなく、単価上昇による売上減少の懸念が続く。加えて、最低賃金の上昇が中小企業の経営を圧迫しており、「利益よりも人件費支払いの維持を優先せざるを得ない」との声も聞かれた。

一方で、百貨店では秋冬商戦を控えた消費需要の高まりを期待する声も上がっている。高級ブランドや化粧品の需要は依然として堅調で、特にクルーズ船の寄港増加や国内ツアー客によるインバウンド消費が下支えとなっている。百貨店関係者によると、「プレミアム付商品券の活用やクレジット決済の増加により購買意欲がやや戻りつつある」としており、特に年末年始の需要に向けた準備が進められている。ただし、食品部門では価格高騰による買い控えが目立ち、売上が伸び悩む店舗も多い。

観光・宿泊業は比較的明るい兆しを見せている。秋の旅行シーズンに入り、観光型ホテルでは団体予約が増加し、年末年始にかけて稼働率の上昇が見込まれている。特に国内旅行客とインバウンドの双方で動きが良く、旅行代理店からは「補正予算による観光支援策への期待が高い」との声が上がっている。ゴルフ場やテーマパークでは韓国や中国からの来場者が前年を上回る見込みであり、地域経済への波及効果が期待される。ただし、気温の高止まりや物価上昇が続く中で「レジャー支出は慎重に行われている」との意見もあり、消費が一気に拡大する見通しは立っていない。

製造業では、米国の関税確定や為替の安定を受け、電気機械器具製造業や一般機械器具製造業を中心に「受注の明確化と改善傾向」が見られる。輸送用機械器具関連では生産量が予算計画以上で推移しており、下期の業績回復に期待する声が多い。反面、繊維工業では国内縫製工場の閉鎖が相次いでおり、製造基盤の縮小が懸念されている。また、最低賃金の大幅引上げにより「経営課題が増加し、価格転嫁が追いつかない」との報告もあり、コスト増への対応が急務となっている。

建設・住宅関連業では、省エネ基準の改正やZEH(ゼロエネルギーハウス)の定義見直しにより、住宅単価の上昇が続いている。販売会社の担当者は「補助金や減税措置がなければ購入意欲は戻らない」と指摘し、住宅購入を控える層が増加している。特に若年層では金利上昇と物価上昇のダブル負担により、住宅取得を先送りする動きが広がっている。

雇用関連では、有効求人倍率は高水準を維持しているが、求人件数そのものは微増にとどまり、求職者数も横ばいで推移している。職業安定所によると、「最低賃金の引上げにより募集を控える中小事業所が一部見られるが、全体として人手不足感は依然強い」とされている。人材派遣業界では、求職者の動きは活発化しているものの、求人件数が前年比で1割程度減少しており、「募集抑制や採算悪化が広がっている」との報告もある。さらに、派遣社員の受け入れ先がコスト上昇を理由に契約見直しを進めており、採用活動に慎重な姿勢を取る企業が増加している。

大学や専門学校の就職担当者からは、「物価高と賃金上昇のバランスが取れておらず、実質的な生活水準が改善していないため、景気回復の実感が持てない」との意見が多く寄せられた。結果として、企業側の採用意欲と学生の就職活動意欲の間に温度差が生じており、「業界によって求人倍率の格差が拡大している」との分析も出ている。

総じて、九州地方の景気は観光業を中心に一部で持ち直しの動きがあるものの、物価高と最低賃金引上げによる経営負担が重く、雇用や消費の両面で慎重な姿勢が強まっている。有効求人倍率が高い水準を維持していることは雇用の底堅さを示す一方、採用コストの上昇と求人抑制が今後の経済成長を抑える要因になるとみられる。

この記事の要点

  • 令和7年9月の九州経済は横ばいからやや悪化の傾向
  • 物価高と最低賃金引上げが企業経営を圧迫
  • 観光業・宿泊業で団体予約が増加しインバウンドが下支え
  • 製造業では電機・機械分野で受注が回復
  • 繊維業など一部で工場閉鎖が進み構造問題が顕在化
  • 有効求人倍率は高水準だが求人件数は微増にとどまる
  • 人材派遣業界で1割の求人減少、採用活動に慎重姿勢

⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ

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