補助金・助成金, 労務・人事ニュース

令和7年 山口県 中小企業退職金共済制度

山口県防府市では、中小企業における従業員の福利厚生向上と経営基盤の安定を目的として、「中小企業退職金共済制度（中退共）」への加入を促進するための掛金補助制度を実施しています。この制度は、従業員の退職金を事業主が毎月掛金として拠出し、国の機関である「独立行政法人勤労者退職金共済機構」が運営・管理する外部積立型の共済制度です。中退共は、中小企業でも安定的に退職金制度を確立できるよう設計されており、国の支援と自治体の補助を組み合わせて、企業の負担を軽減する仕組みになっています。

防府市では、この国の中退共制度に加入した中小企業に対し、掛金の一部を補助しています。市の補助制度は、中退共への加入促進を通じて地域経済を支える中小企業の経営を後押しし、同時に従業員の将来の安心を確保することを目的としています。人材の確保や定着が課題となる中小企業にとって、退職金制度の整備は働きやすい職場環境づくりに直結する重要な要素です。

この補助金の対象となるのは、防府市内に事務所を有し、引き続き1年以上同一事業所を営んでいる中小企業者です。さらに、市税などを完納していることが条件となります。事業主が同居の親族のみを雇用している場合や、適格退職年金制度から中退共制度に移行した場合は補助の対象外です。これは、新規に制度へ加入し、従業員の退職金制度を新たに構築する事業者を重点的に支援するためです。

補助内容は、被共済者1人あたり月額500円で、補助期間は事業所が中退共に加入した月から1年間です。たとえば、従業員5人が中退共に加入した場合、毎月合計2500円、1年間で3万円が市から補助されます。この金額は企業にとって大きな負担軽減となるわけではないものの、長期的に退職金制度を維持していくうえでの初期コストを補う実効性のある支援といえます。

中退共制度の魅力は、国が運営する外部積立型の退職金制度であることにあります。事業主が毎月一定の掛金を納めることで、退職時に従業員が直接退職金を受け取る仕組みです。事業主の手間を省きつつ、公的に管理されるため安心感があります。掛金は全額損金または必要経費として扱うことができ、税制上の優遇措置が受けられる点も大きな利点です。また、短時間労働者（パートタイマーやアルバイト）も加入できるため、雇用形態に関わらず従業員全体の福利厚生を充実させることが可能です。

掛金は、月額5000円から3万円までの範囲で設定でき、従業員ごとに金額を選択できます。国による助成制度もあり、初めて加入する場合は掛金の一部を国が助成します（ただし、適格退職年金制度からの移行は対象外）。防府市の補助制度と併用することで、導入時の負担を大きく抑えられる仕組みとなっています。

さらに、中退共には「通算制度」が設けられており、従業員が転職した場合でも、加入期間中の掛金に応じた退職金の積立が引き継がれます。これにより、転職を経ても従業員の退職金が守られる仕組みが整っています。加えて、企業が制度に加入する際には、過去勤務期間を通算できる「過去勤務期間通算制度」もあり、長期雇用者への配慮も可能です。

このように、中退共制度は中小企業が自社で退職金を積み立てることが難しい場合でも、外部機関の管理によって安定的に退職金制度を運用できる仕組みを提供しています。防府市の掛金補助制度は、その中退共の加入を促進するための後押しとして設けられており、企業と従業員の双方にメリットがあります。

企業にとっては、従業員の福利厚生を充実させることで人材の定着率を高め、採用面での競争力を強化することが期待されます。一方で、従業員にとっては、安心して働ける環境づくりが進むことで、長期的なキャリア形成が可能となります。こうした制度の普及は、地域全体の雇用安定にもつながるため、防府市では引き続き加入促進を推進していく方針です。

防府市の取り組みは、単に中小企業の支援にとどまらず、地域経済全体の持続的な発展を目指す施策の一環と位置づけられています。中退共制度への加入を検討している企業は、市の補助を上手に活用することで、低コストで退職金制度を導入することが可能です。今後も、働く人々の安心を支えるこうした共済制度の利用が広がることが期待されます。

⇒ 詳しくは防府市のWEBサイトへ