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長崎県の雇用失業情勢（令和７年９月分）について（長崎労働局）

この記事の概要

令和7年9月、長崎労働局が発表した雇用統計によると、県内の有効求人倍率（季節調整値）は1.08倍となり、前月より0.02ポイント低下した。55か月連続で1倍を超える水準を維持しているものの、雇用市場には落ち着きが見られ、採用活動は慎重さを増している。新規求人倍率は1.64倍で、61か月連続の1.5倍超となったが、前年同月比では8か月連続で減少している。この記事では、この雇用動向を踏まえ、中小企業の採用担当者が今後どのように採用活動を進めるべきかを詳しく解説する。

令和7年9月の長崎県における有効求人倍率は1.08倍となり、前月から0.02ポイント低下した。全国平均の1.20倍を下回る数値であり、全国で見ても36番目の水準となる。求人が求職を上回る状況は続いているが、求人・求職ともに減少傾向が見られる点が特徴的だ。月間有効求人数（季節調整値）は24,424人で前月比1.4％減、月間有効求職者数は22,519人で前月比0.3％減となった。つまり、労働需給のバランスは一見安定しているように見えても、実際には「雇用の停滞期」に差し掛かっているといえる。

さらに、新規求人倍率は1.64倍と61か月連続で1.5倍を超えたが、前月より0.09ポイント低下している。新規求人数は8,053人で前月比8.5％減、前年同月比でも10.0％減少した。特にフルタイム求人が9.2％減、パートタイム求人が11.6％減と、幅広い雇用形態で求人数が減っている。中小企業にとっては、人材確保が一段と難しくなりつつある状況だ。

産業別に見ると、建設業のみが5.1％増と2か月連続のプラスを示したが、他の主要産業は軒並み減少傾向にある。製造業は前年同月比8.4％減で11か月連続の減少、卸売業・小売業は8.8％減で5か月連続のマイナス、宿泊業・飲食サービス業は34.3％減で8か月連続の減少となった。特に宿泊・飲食業では、長崎・佐世保・諫早・大村の各地域で求人減少が続き、観光需要の回復が採用状況にまだ十分反映されていないことがうかがえる。医療・福祉分野でも2か月連続で6.6％の減少を記録しており、介護職を中心とした慢性的な人手不足が続いている。

一方で、正社員の有効求人倍率（原数値）は1.02倍で、前年同月比0.07ポイントの減少となった。全国平均の1.00倍をわずかに上回っているが、実質的には厳しい採用環境である。特にパートタイムを除く常用雇用においては、派遣社員や契約社員を希望する求職者が多く、正社員としてのマッチングが難航している。

地域別では、対馬が1.38倍で最も高く、江迎が0.87倍で最も低い結果となった。地域格差が大きいのが長崎県の特徴であり、島しょ部や都市圏での求人状況に明確な差が見られる。長崎市は1.00倍、佐世保市1.26倍、諫早市1.06倍と地域によってばらつきがあり、特に離島地域では求人に対して求職者が少ない傾向が続いている。

このような状況の中で、中小企業の採用担当者が取るべき戦略は、「短期的な採用活動」と「長期的な雇用維持施策」の両立である。まず、有効求人倍率が1.08倍ということは、求職者1人に対しておよそ1.08件の求人があることを意味し、求職者が仕事を選びやすい市場環境にある。したがって、中小企業は「選ばれる求人」を作る必要がある。単に募集を出すだけでは応募が集まらず、企業側が求人内容の魅力を高める努力が欠かせない。

たとえば、長崎県内の製造業では求人数の減少が続いているが、これは人材が都市部や他県の工場勤務に流れていることが一因だ。そのため、地元中小企業が優秀な人材を採用するには、「地域に根ざした働き方」や「家族との生活の両立」といった価値を前面に打ち出すことが効果的である。単に給与条件を上げるよりも、福利厚生の充実や働きやすい職場環境を整えることで、長期的な定着につながる。

また、宿泊・飲食業など人手不足が深刻な業界では、経験者採用に固執せず、未経験者を積極的に採用し、社内で教育・研修を行う姿勢が重要だ。求人票の中に「未経験者歓迎」「スキル研修あり」と明記することで応募のハードルを下げられる。

さらに注目すべきは、新規求職者数が前年同月比で2.8％減少した点である。これは働く意欲を持つ人の数自体が減っていることを意味し、採用市場が縮小していることを示している。中小企業は、この限られた人材市場の中で自社の魅力をどう伝えるかが問われている。求人票を見たときに「働いてみたい」と思わせる要素をいかに盛り込むかが勝負になる。

地域特性を踏まえた採用戦略も欠かせない。長崎県では観光や医療・福祉など地域密着型の産業が中心であり、地域住民やUターン・Iターン希望者を取り込む施策が有効だ。地元企業としての社会的役割や地域貢献活動を打ち出すことで、応募者の共感を得やすくなる。

また、ハローワークや長崎労働局が提供するデータは、中小企業の採用計画を立てるうえで非常に重要な指標となる。有効求人倍率の推移だけでなく、業種別や地域別の求人動向を定期的に確認し、自社の採用活動が市場と合致しているかを見直す必要がある。たとえば、医療・福祉業では慢性的な人手不足が続いているため、求人倍率が下がっても採用難が解消するわけではない。むしろ競争が激しく、早期採用活動が有効だ。

一方で、製造業や運輸業では景気動向に左右されやすく、一時的な求人減があっても需要が戻る可能性が高い。そのため、中小企業は「先を見越した採用」を意識し、採用活動を止めないことが重要だ。採用を止めると社内の人材構成が歪み、再開時に人材確保が困難になる恐れがある。

有効求人倍率が1.08倍という数字は、決して悪い指標ではない。むしろ、採用市場が冷静さを取り戻している証拠ともいえる。景気過熱期に見られた「採用の乱立」から脱し、企業が本当に必要な人材を慎重に選ぶ局面に入っている。中小企業はこの時期に、自社の採用基準を見直し、求める人材像を明確にすることが求められる。

今後、長崎県の雇用情勢は緩やかに安定すると予想されるが、物価上昇や人件費の高止まりが続く中で、採用活動には工夫が必要だ。求人票の質を上げることに加え、SNSや自社ホームページなどを活用して企業文化を発信することも有効である。人材不足が続く中で、「人が来ない理由」ではなく「人が来る理由」を作ることが、採用成功への第一歩になる。

この記事の要点

• 令和7年9月の長崎県有効求人倍率は1.08倍で前月比0.02ポイント低下
• 新規求人倍率は1.64倍で前年同月比10％減
• 製造業や宿泊業など多くの産業で求人減少、建設業のみ増加
• 正社員有効求人倍率は1.02倍で依然厳しい採用環境
• 対馬が1.38倍、江迎が0.87倍と地域差が顕著
• 中小企業は求人の魅力向上と地域密着戦略が重要
• 採用停止ではなく長期的人材確保を意識することが鍵

⇒ 詳しくは長崎労働局のWEBサイトへ