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2025年11月13日

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実質賃金1.7%減、物価上昇3.1%で賃上げ効果が薄まる―令和7年8月の勤労統計確報

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毎月勤労統計調査 令和7年8月分結果確報(厚労省)


この記事の概要

厚生労働省が発表した令和7年8月分の「毎月勤労統計調査(確報)」によると、全体の現金給与総額は前年同月比で1.3%増の29万9,955円となり、名目賃金の上昇が続いていることが明らかになった。一方で、物価上昇の影響により実質賃金は1.7%減少し、依然として購買力の回復が課題であることが示された。パートタイム労働者の時給は3.6%増と堅調に伸びており、労働市場の構造変化が見えている。


厚生労働省が10月23日に公表した令和7年8月分の「毎月勤労統計調査(確報)」では、賃金や雇用の実態が詳細に示された。調査は全国32,687の事業所を対象に行われ、25,436事業所から回答を得ており、回収率は77.8%と高水準を維持している。今回の結果は、景気回復局面にある日本経済の中で、賃金動向がどのように変化しているのかを示す重要な指標となっている。

まず、名目賃金の動きを見ると、全就業形態を合わせた一人あたりの現金給与総額は29万9,955円で、前年同月比1.3%の増加となった。規模30人以上の事業所に限定すると33万2,555円で1.7%増となり、中規模以上の企業における賃上げが進んでいることがわかる。特に定期的に支払われる給与(きまって支給する給与)は28万6,943円と1.8%増加し、所定内給与も26万7,451円で1.9%増と堅調な伸びを見せている。一方、特別に支払われた給与、いわゆるボーナスや臨時手当は1万3,012円で前年より7.8%減少しており、賞与支給の抑制傾向が見られる。

一般労働者に限定すると、現金給与総額は38万5,548円(1.8%増)、所定内給与は34万356円(2.4%増)と上昇傾向が続く。一方で、パートタイム労働者の現金給与総額は11万1,332円で1.4%増加し、所定内給与も10万6,788円で1.5%増となった。注目すべきは、パートタイム労働者の時間当たり給与が1,411円と前年より3.6%増加した点であり、非正規雇用の待遇改善が進んでいることがうかがえる。

しかし、名目賃金の上昇にもかかわらず、実質賃金は依然としてマイナスを示している。消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で実質化した指数は82.5で、前年同月比1.7%減となった。これは、消費者物価が3.1%上昇したことが要因であり、給与の伸びが物価上昇に追いついていない実態を示している。さらに、消費者物価指数(総合)で実質化した場合の実質賃金指数は84.0で1.4%減少しており、実質的な購買力の低下が続いている。

共通事業所(同一の事業所で前年と比較できるデータ)による分析でも、全体の現金給与総額は1.9%増、所定内給与は2.4%増となったが、パートタイム労働者の伸び率がより高く、それぞれ2.7%増、2.9%増となっている。これは、労働市場においてパートタイム層の賃金水準が相対的に改善していることを示している。

こうした結果から見えるのは、企業による賃上げの動きが広がりつつあるものの、インフレによる生活コストの上昇が依然として家計に影響を与えている現実である。とりわけ、食料品やエネルギー価格の上昇が続いている中で、名目賃金の伸びだけでは実質的な生活の改善には結びついていない。政府や企業は、持続的な賃上げと物価安定の両立を図る政策や取組みを進めることが求められている。

また、労働市場全体では、非正規雇用者の比率が高止まりする中、時間当たり賃金の上昇が進んでいることは、労働需給の逼迫や人手不足を背景に、企業側が待遇改善を迫られている現れでもある。今後、パートタイム労働者や契約社員などの処遇改善がさらに進むことで、全体としての所得環境の底上げが期待される。

一方で、賃金上昇が物価上昇を追い越す形で実質賃金がプラスに転じるためには、企業の生産性向上が不可欠である。業務効率化やデジタル化への投資、人材育成への取り組みなどが、中長期的に賃金水準を押し上げる鍵になるとみられる。

今回の調査結果は、労働者の所得動向を把握するうえで重要な資料であり、採用担当者にとっても、人件費の見通しや報酬制度の見直しを行う際の参考となる。とくにパートタイム人材の時給上昇傾向は、今後の採用戦略や労働力確保に影響を与える可能性が高い。

この記事の要点

  • 現金給与総額は前年同月比1.3%増の29万9,955円
  • 実質賃金は1.7%減で依然マイナス傾向
  • パートタイム労働者の時給は3.6%増の1,411円
  • 共通事業所ベースで全体賃金は1.9%増
  • 物価上昇率は3.1%で賃上げを上回る
  • 企業の賃上げは広がるが購買力の回復は遅れ

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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