労務・人事ニュース

広告

令和7年9月分 最近の雇用失業情勢（福島労働局）

この記事の概要

令和7年9月、福島労働局が発表した雇用情勢によると、有効求人倍率（季節調整値）は1.26倍で前月より0.01ポイント上昇し、58か月連続で1.2倍を上回った。正社員有効求人倍率（原数値）は1.06倍となり、前年同月より0.03ポイント上昇した。新規求人数は12,827人で前年同月比4.2%増加し、2か月ぶりのプラスに転じた。建設業や宿泊・飲食サービス業、卸売・小売業などで求人が増加しており、県内雇用に持ち直しの動きが見られる一方で、医療・福祉分野では減少傾向が続いている。この記事では、福島県の雇用動向を基に、中小企業の採用担当者が今後どのような戦略を立てるべきかを専門的な視点で詳しく解説する。

令和7年9月の福島県における有効求人倍率（季節調整値）は1.26倍と、前月比でわずかに上昇した。これは全国平均の1.20倍を0.06ポイント上回る水準であり、求人が求職を上回る状況が引き続き続いていることを意味する。有効求人数は37,003人、有効求職者数は29,361人で、求職者数の減少が倍率を押し上げる要因となった。雇用情勢の判断として、福島労働局は「引き続き求人が求職を上回って推移しており、一部に持ち直しの動きがみられる」と分析している。

この結果は、福島県の雇用市場が安定した需要を保ちながらも、業種や地域によって温度差があることを示している。特にハローワーク須賀川では有効求人倍率が0.95倍と1倍を下回っており、地域間格差が顕在化している。こうした地域的なばらつきは、企業の採用活動において柔軟な対応を求められる要因である。

産業別の新規求人動向を見ると、前年同月比で建設業は6.7%、製造業は0.2%、運輸業・郵便業は0.4%、卸売業・小売業は14.5%、宿泊・飲食サービス業は39.1%、サービス業は14.1%といずれも増加しており、幅広い分野で人材ニーズが高まっている。一方で、医療・福祉業は7.5%減少しており、慢性的な人手不足の中で採用難が続く現状が見える。

特に宿泊・飲食サービス業は、観光需要の回復を背景に前年同月比で316人の増加と大幅なプラスを記録しており、2か月ぶりに前年を上回った。この分野では、長引く人材不足を背景に非正規雇用から正社員登用へと舵を切る企業も増えている。採用担当者は、こうした「即戦力」となる人材に対して、給与や勤務体系の柔軟さだけでなく、地域に根差した働きがいを訴求することが求められる。

製造業では前年同月比で0.2%増とわずかに上昇したが、分野ごとに明暗が分かれている。電子部品・デバイス製造業が前年同月比19.6%増、電気機械器具製造業が16.8%増、情報通信機械器具製造業が25.6%増となる一方で、食料品製造業は17.9%減、はん用機械器具製造業は21.3%減と、内需型産業での人材需要は弱い。これは福島県内製造業が高度技術職へのシフトを進めていることを示しており、中小企業が採用戦略を立てるうえで「技術力の見せ方」が重要な要素となる。

また、正社員の新規求人数は6,828人で前年同月比6.3%増となり、全新規求人の53.2%を占めた。正社員有効求人倍率も1.06倍に上昇し、15か月連続で1倍を超えている。これは求職者の正社員志向の高まりと、企業側の安定雇用意欲の強まりの両面を反映している。特に中小企業では、人材定着を重視する動きが顕著で、採用後の育成・研修制度の充実が競争力の差を生む要因となっている。

一方で、医療・福祉分野の求人は依然として全体の約19%を占めるものの、前年同月比7.5%減と落ち込みが続く。介護や看護といった職種では離職率の高さが課題となっており、単に求人を出すだけでは人材確保につながらない。採用担当者は、職場環境の改善や働き方の多様化を進めることで、応募者が安心して働ける職場づくりを発信する必要がある。

地域別の雇用動向を見ると、福島県全体では求人が求職を上回っているが、地域ごとの状況には差がある。都市部に近い郡山市や福島市では製造業・サービス業が堅調に推移しているのに対し、南会津などの地方圏では宿泊業・小売業中心の雇用構造が続き、人材不足が顕著である。このような地域間ギャップに対して、中小企業はオンライン採用の活用や、リモートワークを組み込んだ柔軟な雇用制度を導入することで、地理的制約を乗り越えることができる。

また、福島県の求人倍率が全国15位と比較的高い水準にあることから、採用市場は競争が激しく、求人の質が問われる段階にある。中小企業は、給与条件だけでなく、自社の強みや社会的意義を伝える採用広報を重視すべきである。特に若年層の求職者は、地域社会への貢献や働く目的意識を重視する傾向があるため、採用活動において企業理念や地域とのつながりを発信することが効果的だ。

福島労働局のデータからは、全体として雇用が底堅く推移していることがうかがえるが、人口減少の進行や産業構造の変化を踏まえた中長期的な採用戦略が不可欠である。今後は、雇用環境が一段と流動化することを見据え、採用だけでなく人材育成・定着を重視した「人づくり経営」への転換が求められる。

この記事の要点

• 令和7年9月の福島県有効求人倍率は1.26倍で前月比0.01ポイント上昇
• 正社員有効求人倍率は1.06倍で15か月連続の1倍台維持
• 新規求人数は12,827人で前年同月比4.2%増加
• 宿泊・飲食業が39.1%増、サービス業が14.1%増と好調
• 医療・福祉分野は7.5%減と採用難が続く
• 中小企業は非金銭的価値や地域性を活かした採用広報が重要
• 地域格差に応じた柔軟な採用戦略が鍵

⇒ 詳しくは福島労働局のWEBサイトへ

広告