2025年11月28日
労務・人事ニュース
令和7年9月 奈良県の有効求人倍率1.16倍 雇用の持ち直し続く
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最終更新: 2025年11月27日 07:04
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最終更新: 2025年11月26日 21:00
奈良県の一般職業紹介状況(令和7年9月分)について(奈良労働局)
この記事の概要
令和7年9月、奈良労働局が発表した最新の労働市場動向によると、奈良県の有効求人倍率(季節調整値)は1.16倍となり、前月より0.02ポイント上昇した。求職者1人に対して1.16件の求人がある状態で、全国平均の1.20倍や近畿平均の1.13倍とほぼ同水準を維持している。新規求人倍率も2.15倍と前月比0.17ポイント上昇し、雇用の持ち直しが見られる一方で、産業ごとに明暗が分かれている。本稿では、この労働市場データをもとに、奈良県における雇用環境の実態を解説し、中小企業が有効求人倍率をどのように採用戦略に活かすべきかを考察する。
令和7年9月の奈良県の有効求人倍率(季節調整値)は1.16倍となり、前月の1.14倍から0.02ポイント上昇した。求職者1人に対し1.16件の求人があるということは、求人が求職を上回る状況が続いていることを意味し、県内の雇用情勢は引き続き改善傾向を示している。ただし、その回復は緩やかであり、労働局では「持ち直しの動きが見られるが、物価上昇などの影響に注意が必要」としている。
有効求人数(季節調整値)は21,420人で前月より1.5%増加した一方、有効求職者数は18,531人で前月より0.2%減少した。新規求人倍率(季節調整値)は2.15倍と、前月比0.17ポイント上昇。新規求人数は7,666人で前月比1.2%減、新規求職者数は3,567人で前月比8.8%減と、求人がわずかに減少する中でも求職者の動きが鈍化しており、採用市場はやや供給過剰な状態が見られる。
就業地別の有効求人倍率は1.31倍で前月比0.03ポイント上昇。新規求人倍率は2.50倍と、前月比0.39ポイント上昇しており、実際の就業地を基準とした場合には、県外からの求人流入や近隣都市圏との往来による影響が表れている。
業種別に見ると、医療・福祉分野の求人が大幅に増加しており、前年同月比で26.6%増の3,003人となった。この分野は奈良県の求人全体の約4割を占め、地域経済の中核的な雇用創出産業となっている。次いで増加が見られたのは建設業で、前年比22.8%増の410人。インフラ整備や住宅リフォーム需要の高まりが影響しているとみられる。宿泊業・飲食サービス業も469人で前年比7.1%増と堅調であり、観光需要の回復が背景にある。
一方、減少傾向が続いているのは製造業(809人、前年比5.9%減)や卸売・小売業(552人、同20.6%減)、サービス業(652人、同17.8%減)などである。特に製造業では食料品や繊維関連などで減少幅が大きく、県内製造業の生産活動が依然として弱含んでいることを示唆している。
正社員の有効求人倍率(原数値)は0.99倍で、前年同月比0.05ポイント上昇した。正社員新規求人数は3,431人で前年同月比12.0%増と、安定雇用を志向する求人の増加が見られる。正社員求人が全体の47.3%を占めており、非正規中心の雇用構造の中で正社員志向が回復傾向にある。職種別では、管理的職業や事務的職業、運搬・清掃・包装関連職で倍率が1倍を下回る一方、専門技術職や介護関連職では高倍率を維持しており、人材需給の偏りが際立っている。
また、就職件数は1,100件で前年同月比0.3%減。うち正社員就職件数は397件で3.7%増加した。正社員就職の割合は36.1%となり、前年より1.7ポイント上昇している。これは求職者の安定志向が高まっていることを示しており、企業側も長期雇用前提での採用活動を強化しているとみられる。
こうしたデータを踏まえると、奈良県の雇用市場は「全体的な雇用の安定」と「職種ごとの需給格差」が同時に進行している構造にある。特に中小企業にとっては、求人倍率1.16倍という数値を単なる「人手不足」と捉えるのではなく、「求める人材と応募者のミスマッチが続いている状態」と理解することが重要である。
中小企業の採用担当者にとって、有効求人倍率の上昇はチャンスであると同時にリスクでもある。採用活動を成功させるためには、まず求人票の質を高めることが求められる。奈良県内の労働市場では、賃金水準や勤務地だけでなく、「職場の安心感」「柔軟な働き方」「地域社会とのつながり」といった要素が応募者の判断に大きく影響している。特に医療・福祉、建設、飲食などの対人サービス業では、職場の雰囲気やチームワークの良さを可視化する工夫が有効である。
また、採用スピードの最適化も不可欠である。新規求人倍率が2.15倍ということは、求職者が複数企業を比較して選ぶ余地が大きいことを意味する。採用までのプロセスが長い企業は、優秀な人材を他社に奪われる可能性が高まる。ハローワークインターネットサービスなどのオンライン申込機能を活用し、応募から面接、内定までの期間を短縮する取り組みが求められる。
さらに、中小企業にとっては「定着支援」も採用活動と同じくらい重要である。せっかく採用しても離職率が高ければ意味がない。特に若年層や女性の労働者を対象にしたキャリア相談制度やメンター制度の導入は、職場定着に大きく寄与する。奈良県のように地域社会が密接なエリアでは、働く人と企業の信頼関係が採用成功の鍵を握る。
雇用の地域差にも注目すべきである。奈良市や橿原市など都市部では求人が集中している一方、山間地域や南部地域では求人倍率が相対的に低い。企業は採用難を補うために、テレワークや短時間勤務など柔軟な雇用形態を検討することも重要である。
総じて、令和7年9月の奈良県の労働市場は、全国的な雇用安定の流れの中で堅調に推移しているが、業種間格差と地域差が課題として浮き彫りになっている。中小企業の採用担当者は、有効求人倍率の変化を単なる数字としてではなく、自社の採用戦略を見直すための「市場シグナル」として捉えることが必要だ。
この記事の要点
- 令和7年9月の奈良県有効求人倍率は1.16倍で前月比0.02ポイント上昇
- 新規求人倍率は2.15倍で3か月ぶりの上昇
- 医療・福祉分野が前年比26.6%増で雇用の中心
- 製造業・小売業・サービス業では求人減少
- 正社員有効求人倍率は0.99倍で安定志向が続く
- 中小企業は採用スピードと職場定着策の強化が鍵
⇒ 詳しくは奈良労働局のWEBサイトへ


