2025年12月22日
労務・人事ニュース
97%以上が「良い経験」と答えた裁判員制度
もし、あなたが裁判員に選ばれたら?裁判ではどんなことをするか知っていますか?(政府広報オンライン)
この記事の概要
2025年6月までに裁判員制度には延べ13万2,000人を超える国民が参加し、刑事裁判の判断に関わってきた。裁判員制度は18歳以上の国民が選ばれる可能性があり、法廷での審理から評議、判決宣告への出席まで幅広い役割を担う。制度の流れや選ばれる仕組みを知ることで、誰もが安心して裁判に参加できる環境が整えられている。
裁判員制度は国民が刑事裁判に直接参加する仕組みとして2009年に導入され、2025年6月までに13万2,000人を超える人々が裁判員または補充裁判員として重大事件の審理に関わってきた。制度の対象となる犯罪は殺人や強盗致傷、現住建造物放火、危険運転致死など、社会に大きな影響を及ぼす事件に限られており、裁判員6人と裁判官3人が一つの事件を担当する形式が取られている。国民の経験や価値観を裁判に反映し、司法への理解を深めることを目的としており、参加者の意見をもとに公正な判断が行われている。
制度が始まって以降、多くの裁判員経験者は参加する前と後で印象が変わったと語っている。参加前は積極的に裁判員を務めたいと考えていた人は約37%だったのに対し、実際に裁判を経験した後には97%以上がよい経験だったと回答しており、制度が国民にとって身近なものとして受け入れられている状況がうかがえる。法廷での緊張感や責任の重さを感じながらも、裁判への理解が深まり、自身の価値観を見つめ直す機会になったという声が多いことも特徴的である。
裁判員が裁判で担う役割は大きく三つに分けられる。第一に法廷での審理への出席があり、検察官や弁護人の主張を聞き、提出された書類や証拠を確認し、証人や被告人の証言を見聞きしながら事実関係を把握していく。凶器や物証が提示される場合もあり、それらがどのような事実と関連しているかは検察官や弁護人が説明を行うため、裁判員はその説明をもとに要点を理解しながら裁判を進めることができる。法律の専門知識がなくても参加できるよう、裁判官が丁寧に説明する体制が整えられている点が制度の特徴である。
第二に評議への参加があり、審理で得た証拠を基に、被告人が犯罪を行ったかどうか、有罪の場合にはどのような刑が相当かを議論しながら決定する。評議は裁判官と裁判員が同じ権限を持って意見を交わす場であり、すべての事実に対する理解を深めたうえで判断が求められる。全員の意見が一致しない場合には多数決で評決が行われ、裁判員の意見が裁判官と同等に扱われる点は制度の根幹を成す特徴でもある。
第三に判決宣告への出席があり、評決がまとまると裁判長が法廷で判決を宣告し、裁判員としての職務はこの段階で終了する。多くの裁判は7日以内で終わるため、一般市民が生活と両立しながら参加できるように配慮されている。交通費や日当の支給も行われ、参加に伴う負担を最小限にする仕組みが構築されている。
裁判員がどのように選ばれるのかについても理解しておくことが重要である。毎年秋頃になると地方裁判所ごとに翌年の裁判員候補者名簿が作成され、くじによって無作為に選ばれた人の名前が記載される。11月中旬には名簿に掲載された人へ通知が送られ、裁判員に選ばれる可能性があることを事前に把握できるようになっている。通知が届いた段階では具体的な事件への参加は決まっておらず、1年間の辞退希望や裁判員の職務に就けない職業かどうかを確認する調査票が同封されている。
審理の日程が決まった事件ごとに再度くじが行われ、該当する候補者に質問票と呼出状が送付される。この呼出状には裁判の日程が明記されており、質問票を使って辞退を申し出ることも可能である。呼出状が届いてから6〜8週間後に裁判員を選ぶ手続きが行われ、裁判官から辞退希望の有無などの説明を受けながら最終的に6名の裁判員と必要な人数の補充裁判員が選ばれる。選ばれなかった人はその時点で手続きが終了し、選ばれた人は法廷での職務に参加することになる。
裁判員制度は18歳以上で選挙権を持つ国民が原則対象であり、誰もが選ばれる可能性を持っている。一方、70歳以上の人や学生、重い病気を抱える人、子育てや介護で多忙な人などは辞退を申し出ることができ、無理のない範囲で参加できる点が制度の柔軟さにつながっている。裁判所では参加者の負担を減らし安心して務められるよう支援体制を整えており、制度への理解を深めたい人に向けて経験者の声も公開されている。
裁判員制度が社会に根づくためには、国民が制度に対する理解を深め、参加に対する不安を減らすことが重要である。制度の流れや役割を知っておくことで、選ばれた際にも落ち着いて職務に向き合うことができ、より公正で透明性の高い司法への参加が実現する。国民が司法に参加する意義を再確認しながら、制度の重要性を社会全体で共有することが求められている。
この記事の要点
- 裁判員制度には2025年6月までに13万2,000人が参加
- 裁判員6人と裁判官3人が重大事件の審理を担当
- 参加前は37%が意欲的だが参加後は97%以上がよい経験と回答
- 裁判員は法廷審理と評議と判決宣告に関わる
- 候補者名簿は毎年秋に作成され無作為に選ばれる
- 呼出状は審理の6〜8週間前に届く仕組み
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