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2025年12月23日

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価格転嫁率が53.5%に改善、2025年9月調査で見えた中小企業の取引環境

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価格交渉促進月間(2025年9月)フォローアップ調査の結果を公表します(経産省)

この記事の概要

2025年9月に実施された価格交渉促進月間のフォローアップ調査結果が公表され、価格転嫁率は53.5%と前回から約1ポイント改善した。原材料費やエネルギーコストに加え、労務費の転嫁率が初めて50%に到達したことが特徴で、都道府県別の転嫁率ランキングも初めて示された。企業間取引の改善が進む一方で、支払期日の長期化や手数料負担など、課題も残されている。


2025年11月28日、価格交渉促進月間として位置づけられている9月に実施されたフォローアップ調査の結果が公表され、中小企業を取り巻く価格交渉や価格転嫁の現状が明らかとなった。この調査は、企業が直面するコスト上昇に適切に対応できる環境づくりを目的とし、価格交渉の実施状況や取引条件などを把握するために毎年行われているもので、今回は全国30万社の中小企業を対象にアンケート形式で実施された。調査期間は2025年9月24日から11月7日までで、回答企業数は69,988社に及んだ。

調査結果によると、発注側企業からの申し入れにより価格交渉を行った割合は34.6%となり、前回から約3ポイントの増加となった。企業間で価格交渉を行いやすい雰囲気が徐々に醸成されつつあることが読み取れ、適正な価格設定に向けた取り組みが進み始めている。価格交渉に基づいて実施される価格転嫁率は53.5%となり、前回調査から約1ポイントの改善が見られた。

コスト要素別にみると、原材料費の転嫁率は55.0%、エネルギーコストは48.9%となり、双方とも改善がみられた。また、労務費に関しては初めて50.0%に到達し、賃金上昇などの人件費増に対する価格反映が進んでいる現状が示された。価格交渉が行われた企業のうち、7割を超える企業が労務費についても交渉が実施されたと回答しており、人件費の上昇を受けた転嫁の必要性が高まっていることを反映した結果となった。

しかし、価格交渉が実施されたにもかかわらず、コスト増の全額を転嫁できなかった企業も多く存在している。そのうちの約6割は、発注企業から価格転嫁に関して納得できる説明があったと回答しており、説明責任を果たす企業が増えつつあることが伺える一方で、残りの企業では説明不足が課題として残る。

今回の調査では初めて都道府県別の価格転嫁率ランキングも公表され、地域によって10%以上の差が生じていることが明らかとなった。背景には産業構造、地域の企業規模、取引慣行の違いなどがあると見られ、地域ごとの取引環境の改善が今後の重要なテーマとなる。また、サプライチェーンの階層が深くなるほど価格転嫁が困難になる傾向は依然として続いており、1次請けと4次請け以上の企業の差はわずかに縮小したものの、構造的な課題として残されている。

官公需においては価格転嫁率が52.1%と、前回から僅かに低下した。民間取引だけでなく、公的な契約においても適正な価格転嫁を進める必要性が改めて浮き彫りになった。また取引代金の支払いに関しては、支払期日が60日を超過している企業が7.2%、手形の支払サイトが60日を超える企業が6.1%あり、依然として現金化の遅れに悩む企業が少なくない。さらに、支払手数料を受注側が負担しているケースが約3割残っており、取引慣行の見直しが求められる。

調査結果を受けて、今後の予定としては2026年1月中下旬に発注者ごとに価格交渉・価格転嫁・支払条件を評価した発注者リストが公表されるほか、翌2月以降は状況が改善しない発注者に対し注意喚起や指導・助言が行われる予定である。これにより、公平で透明性の高い取引環境の構築が促される。

この記事の要点

  • 価格交渉が行われた割合は34.6%で前回より約3ポイント上昇
  • 価格転嫁率は53.5%で改善、労務費の転嫁率は初めて50%に到達
  • 原材料費55.0%、エネルギーコスト48.9%の転嫁率を記録
  • 都道府県別の価格転嫁率に10%以上の差が生じていることが初めて判明
  • 支払期日が60日超の企業が7.2%、手形サイト60日超が6.1%
  • 支払手数料を受注側が負担している企業が約3割残存

⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ

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