2025年12月26日
労務・人事ニュース
令和7年10月大阪府の求人倍率1.17倍から読む採用市場の状況
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最終更新: 2025年12月25日 08:30
大阪労働市場ニュース(令和7年10月分)(大阪労働局)
この記事の概要
大阪府の令和7年10月の有効求人倍率は1.17倍となり、前月から0.03ポイント低下した。求人数が減少する一方で求職者数は増加し、雇用環境には弱含みの傾向が見られる。業種別では宿泊・飲食サービス業など一部で増加が見られたが、製造業、建設業、医療・福祉など多くの主要産業で新規求人が減少した。本記事では詳細データを整理し、中小企業が求人倍率から採用戦略をどう構築すべきかを解説する。
大阪労働局が公表した令和7年10月の雇用情勢は、企業の採用意欲がやや後退し、求職者数が増加に転じるという構図が鮮明になっている。有効求人倍率(季節調整値)は1.17倍で前月から0.03ポイント低下し、2か月ぶりの低下となった。有効求人数は181,624人で1.9%減、3か月連続の減少となった。一方、有効求職者数は155,392人で0.5%増と2か月ぶりの増加となり、求職者が増える中で求人が減少したため、有効求人倍率も低下したという構造が見える。資料1ページにも「現下の雇用失業情勢は、改善の動きが弱まっている」と明記されており、大阪府の雇用環境の変化を示す象徴的な文言となっている。
また、大阪府の雇用情勢を近畿全体や全国と比較すると、その特徴がより鮮明になる。近畿全体の有効求人倍率は1.10倍、全国は1.18倍で、大阪府の1.17倍は全国平均に近い水準だが、求人数の減少幅が目立つため、地域として採用活動の勢いは鈍りつつある。一方、新規求人倍率(季節調整値)は2.38倍となり、前月より0.10ポイント低下した。新規求人は61,279人で前月比4.8%減と大きく減少しており、2か月ぶりの減少に転じた。新規求職申込件数は25,796件で前月比0.6%減となり、求職の動きもわずかに落ち着きを見せている。
新規求人(原数値)は4か月連続で減少しており、業種別に見ると減少している業界が広範囲に及んでいる。建設業は2か月ぶりの減少、製造業は4か月連続減少、情報通信業は10か月連続減少、卸売・小売業も2か月ぶりの減少となっている。また医療・福祉は3か月連続で新規求人が減少しており、慢性的な人材不足が指摘される分野でさえ求人が減るほどに、企業側の採用計画が慎重になっている状況がうかがえる。運輸業・郵便業、専門技術サービス業も減少しており、幅広い業界で採用意欲が弱まっていることが分かる。
一方で、宿泊業・飲食サービス業は4か月ぶりに増加し、生活関連サービス業・娯楽業も2か月連続で増加した。また教育・学習支援業も増加に転じている。これらの業種は消費回復や観光需要の増加の影響を受けやすく、大阪府が持つ大都市圏としての強みが求人動向のゆるやかな改善に作用していると考えられる。
新規求職申込件数(原数値)は3か月連続で増加し、求職者の動きそのものは活発化している。背景には生活費上昇による就労意欲の増加、賃金水準の見直しを目的とした転職活動、働き方の再検討が広がっていることが挙げられる。求職者の増加は企業にとって応募獲得のチャンスである一方で、求職者が慎重に企業を比較する傾向が強まっているため、採用側の準備と戦略性がこれまで以上に重要になる。
ここまでのデータを踏まえると、大阪府の労働市場は一見すると採用環境の悪化とも改善とも言い切れない、複雑な局面に差し掛かっているといえる。有効求人倍率は依然として高めの水準を保っているため、求人を出せば求職者が確実に集まるわけではない。しかし求職者数が増加に転じている今、中小企業にとっては採用戦略次第で人材確保の可能性を広げられるタイミングでもある。
中小企業の採用担当者が求人倍率をどう活用すべきか考える際、まず大切なのは「倍率の動きの背景」を理解することである。求人倍率が低下したからといって採用が容易になったわけではなく、求人数の減少が背景にあるため、求職者数の増加がもたらすメリットを最大限に活かせる体制が必要となる。また、新規求人倍率が2.38倍と高い水準にあることは、新たに求人を出す企業同士の競争が依然として激しいことを意味しており、求人票の質で差をつけなければ応募を獲得しにくい状況が続いている。
具体的な採用の工夫として、求人票の情報を充実させることが極めて重要である。求職者は給与や勤務時間といった条件面だけでなく、企業文化、成長機会、働きやすさ、福利厚生の実績など多面的に企業を判断する。大阪府のように大都市圏では選択肢が多いため、求人票の情報量が少ない場合、求職者が応募を検討する段階にすら進まない可能性が高い。社内の働き方改革の取り組み、職場環境の改善、キャリア形成の支援制度など、企業の魅力を数字とともに具体的に示すことで応募率が大きく変わる。
選考スピードも採用成功の鍵となる。特に大阪府のように競争が激しい都市部では、応募から面接までのスピードが遅いと求職者が別企業へ移ってしまう可能性が高い。書類選考の迅速化やオンライン面接の導入、応募者とのコミュニケーション速度の向上は、採用担当者がすぐに取り組める改善点である。
さらに、ターゲット層の拡大も求められる。新規求職申込件数が増加しているとはいえ、その内訳を見ると必ずしも即戦力層が増えているわけではない。未経験者やシニア層、子育て中の求職者など、多様な働き手に対応できる柔軟な職場環境を整備することで、応募の幅を広げることができる。特に大阪では、地域特性として多様な人材が集まりやすく、企業側が受け入れ体制を整えることで大きな採用可能性を得ることができる。
企業はまた、採用後の定着を重視するべきである。求職者が企業を選ぶ基準が「長く働ける環境かどうか」にシフトしているため、入社後のフォロー体制やキャリア支援を強化することで離職率を低減し、採用コストを抑えることができる。大阪の労働市場では採用競争が激しいため、一度採用した人材を確実に定着させることは企業の成長に直結する。
大阪府の採用環境は、求人数の減少と求職者数の増加という二つの動きが同時に進むことで特徴づけられる。倍率の低下に油断せず、データの背景を読み解きながら、自社に合った採用戦略を柔軟に設計することが中小企業にとって不可欠である。
この記事の要点
- 大阪府の有効求人倍率は1.17倍で前月から低下
- 求人数は減少し求職者は増加、雇用環境は弱含み
- 新規求人は4か月連続減少、新規求人倍率も低下
- 製造・建設・医療福祉など幅広い業種で求人が減少
- 宿泊・飲食や娯楽、教育は求人増加
- 求人票の質の向上と選考スピードが採用成功の鍵
- 未経験者・シニア層の活用で応募の幅を広げることが有効
⇒ 詳しくは大阪労働局のWEBサイトへ


