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2025年12月27日

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令和7年10月鹿児島県の求人倍率1.01倍が示す採用市場の変化

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鹿児島の雇用失業情勢(令和7年10月分)の概要について(鹿児島労働局)

この記事の概要

令和7年10月の鹿児島県の有効求人倍率は1.01倍となり、前月から0.04ポイント低下しました。有効求人数が減少し、有効求職者数が増加するという動きが続き、求人の勢いには弱さが見られます。新規求人は前年同月比16.2%減の12か月連続減となり、企業の採用計画は慎重姿勢が強まっています。本記事では、この雇用データを基に、中小企業が今後どのように採用戦略を構築すべきかを専門的視点から詳しく解説します。


鹿児島労働局が公表した令和7年10月の雇用失業情勢では、有効求人倍率(季節調整値)は1.01倍となり、前月より0.04ポイント低下しました。倍率が2か月連続で低下したことは、県内の採用環境が慎重化し、求人側が優位であり続けた状態に変化が始まっていることを意味します。有効求人数は34,773人で前月比2.9%減となり、2か月連続の減少となりました。一方、有効求職者数は34,338人で前月比0.6%増となり、こちらも2か月連続の増加です。求人が減り求職者が増えるという構図は、企業にとって採用競争の激しさが増すことを示しています。

鹿児島県の有効求人倍率は全国41位で九州では7番目となり、全国平均の1.18倍を大きく下回っています。これは鹿児島県の人口構造や産業構造の特性が反映された結果ともいえ、若年層の流出や高齢化による労働力の縮小が求人の伸びを抑える背景となっています。また、県内の産業の多くが小売・サービス・医療福祉など人手不足の影響を受けやすい分野に集中しているため、求人は出しても応募が集まらない、採用に時間がかかる、離職が続くという課題を抱えやすい状況が続いています。

新規求人の状況を見ると、その厳しさがさらに明確になります。10月の新規求人倍率は1.74倍となり、前月比で0.06ポイント低下しました。新規求人数は12,779人で前年同月比16.2%減となり、12か月連続で前年割れとなっています。新規求人が1年以上連続で減少しているという事実は、県内企業が採用を控え、慎重な対応にシフトしている証拠といえます。特に物価上昇や資材価格の高騰により、企業が人件費の増加に慎重な判断をしていることが背景にあります。

産業別にみると、新規求人が増加したのはサービス業(他に分類されないもの)のみで、0.9%増と小幅な増加でした。一方で、建設業が11.2%減、製造業が11.9%減、運輸業・郵便業が20.3%減、卸売業・小売業が41.2%減、宿泊業・飲食サービス業が42.8%減、医療・福祉が12.4%減と、主要産業のほとんどで大幅な減少が見られました。特に宿泊・飲食、卸売・小売業での減少幅は非常に大きく、消費行動の変化や経営環境の厳しさを反映しています。

新規求職申込件数は6,630人で前年同月比0.5%減と小幅な下落でしたが、2か月連続の減少となっています。求職者側の動きは比較的安定しているように見えますが、内訳を見ると離職後の求職者は減少し、在職者の求職活動も抑制されている傾向が見られます。景気の不透明感が強まる中で、求職者が転職に慎重になっていることが読み取れるため、中小企業は応募者の確保そのものが難しくなる可能性が高いといえます。

安定所別の有効求人倍率をみると、鹿児島所が1.02倍、加世田所が0.79倍、川内所が0.90倍、出水所が1.01倍、大口所は0.87倍、国分所は1.26倍、鹿屋所は0.83倍、名瀬所は0.95倍となっています。地域による倍率の差は比較的大きく、国分所は1.26倍と県平均を大きく上回り、求人に対して求職者が不足している状況が続いています。一方で加世田や鹿屋といった地域では求人倍率が1倍を下回り、求職者に対して求人が少ない状態です。この地域差は、中小企業が採用戦略を設計するうえで重要な指標となります。

ここまでのデータを踏まえると、中小企業の採用担当者が有効求人倍率から読み取るべきポイントがいくつか明確に浮かび上がってきます。

まず、有効求人倍率の低下は採用が「しやすくなる」ことを意味しません。今回の1.01倍という数値は、求人が求職者をわずかに上回る程度であり、企業の採用努力がそのまま成果を左右する市場です。倍率が高い時と異なり、求職者側にも余裕がない分、職場選びには慎重さが強まる傾向があります。そのため、求人票の内容や企業の魅力発信が、採用成功の大きな鍵を握ります。

次に、新規求人が大きく減少していることは、求職者にとっての選択肢が減り、企業にとっては「応募者が見つけにくくなる」ことを意味します。特に小売・飲食・サービス・医療・福祉といった人手不足が続く分野では、従来以上の求職者獲得施策が求められます。中小企業は、給与や待遇を改善するだけではなく、柔軟な働き方や丁寧な育成体制を整えることで、人材確保につなげる必要があります。

また、業種別の求人減を考えると、求人が集まりづらい業界では採用要件を広げることが効果的です。未経験者を受け入れ、教育と支援を強化することで、新たな人材を育てていく姿勢が求められます。鹿児島県のように労働人口が減少している地域では、経験者だけに絞った採用では十分な応募が集まらないため、中長期的な視点で育成を前提とした採用が必要です。

さらに、地域別の倍率差を具体的に活用することも有効です。例えば国分所のように倍率が1.26倍と高い地域では採用競争が激しいため、企業側の迅速な選考対応や魅力訴求の強化が必須です。一方、加世田や鹿屋のように倍率が低い地域であれば、採用を広域展開する企業にとって応募獲得のチャンスが広がります。自社の勤務地が柔軟に設定できる場合は、地域戦略を見直すことが大きな効果を生みます。

採用活動における重要な要素として、選考スピードの改善も挙げられます。求職者が減り、求人が減っている状況では、一つ一つの応募が非常に貴重なものになり、対応が遅れるだけで別企業に流れてしまう可能性が高まります。一次面接の早期実施、オンライン面接の活用、面接後の迅速なフィードバックなど、求職者にストレスを与えない選考フローの整備は不可欠です。

求人票の記載内容も、採用成功を左右する重要な要素です。鹿児島県の求職者は、安定した働き方と生活との調和を重視する傾向が強く、残業時間の明確化、休暇制度、福利厚生、キャリア形成の支援など、安心して応募できる情報を提示することが効果的です。特に正社員の求人倍率が低下傾向にある中では、安定雇用の魅力を丁寧に伝えることが求められます。

長期的には、離職防止と人材定着の強化が最も重要なテーマとなります。労働力人口が減少を続ける鹿児島県では、採用は「確保して終わり」ではなく、「働き続けたいと思わせる環境づくり」が企業の競争力を左右します。職場環境の改善、キャリアアップ支援、メンター制度の導入など、人材の成長と定着を支える施策が求められます。

この記事の要点

  • 鹿児島県の有効求人倍率は令和7年10月時点で1.01倍
  • 有効求人数は減少し有効求職者数は増加傾向
  • 新規求人は16.2%減で12か月連続の前年割れ
  • 主要産業の多くで新規求人が大幅減少
  • 地域別で求人倍率に大きな差がある
  • 倍率低下は採用のしやすさを意味せず企業努力がより重要
  • 求人票の質向上と選考スピードが採用の鍵
  • 未経験者採用や柔軟な働き方の提示が効果的
  • 人材定着のための環境整備が長期的に不可欠

⇒ 詳しくは鹿児島労働局のWEBサイトへ

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